2022年9月に登場したAMD Ryzen 7000シリーズ・プロセッサーについてお話ししています。
発売年月 | 2022/09 2023/01 2023/02 2023/04 |
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コアアーキテクチャ | Zen 4 |
対応チップセット | AMD 600シリーズ |
プロセスルール | 5nm |
AMD Ryzen 7000シリーズ・プロセッサーは、Zen系アーキテクチャの第6世代となるZen 4(ゼンフォー)を採用した世代で、2022年9月のデスクトップ向けCPUの発売をもって世に出ることとなりました。
この世代はソケットもメモリもPCI Expressのバージョンも刷新されるなど、非常に大きな変化のあった世代ですが、性能面でも大きな強化がありました。特にクロック周波数は、2世代前とはいえ、Ryzen 5000シリーズ(第4世代)と比べて700MHz~1GHzほども上昇するなど凄まじい進化が見られたのです。
ただ、その分TDPも上位モデルが105Wから170Wに、下位モデルも65Wから105Wに大幅に引き上げられていますので、やや無理矢理な印象も否めません。
また、ノート向けプロセッサーは非常に複雑化してしまいました。AMDは元々命名規則が頻繁に変わったり一貫性がなかったりする企業でしたが、その特徴はこの世代でも表れています。
詳細は後程ノートプロセッサー一覧でお話しします。
発売年月 | 2022/09 2023/01 2023/02 2023/04 |
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シリーズ名 | AMD Ryzen 7000 シリーズ ・デスクトップ・プロセッサー |
コアアーキテクチャ | Zen 4 |
GPUコアアーキテクチャ | RDNA 2 |
開発コードネーム | Raphael |
プロセスルール | 5nm |
ソケット (デスクトップ) | Socket AM5 |
対応チップセット | AMD 600シリーズ |
対応メモリ | DDR5-5200 |
PCIe | 5.0 |
前世代の第5世代Ryzen(6000番台)にはデスクトップ向けCPUがありませんでしたので、第4世代Ryzen(5000番台)から1世代飛ばしての登場ということになりました。
この世代は変化の大きい世代だとお話ししましたが、デスクトップ向けCPUにおける最大の変化といえばiGPU(内蔵グラフィックス)が搭載されたことになるでしょう。
AMDのプロセッサはiGPUを含むものをAPU、含まないものをCPUといって区別してきましたが、少し前にデスクトップ向けAPUにiGPUを持たないものが登場したことで、この規則性は崩れていました。
ただ、これは例外的なケースと呼べたのですが、Ryzen 7000シリーズ・デスクトップCPUの最初の4モデル全てにiGPUが搭載されたため、AMDのCPUはiGPUを持たないという規則は、正式に撤廃されたようです。
とはいえ、Ryzen 7000シリーズ・デスクトップCPUに搭載されるiGPUはコア数の少ない小規模なGPUですから、ひょっとするとAPUには高性能iGPUが搭載されるなどの差別化が図られるのかもしれません。
CPU名 | コア/スレッド | クロック (ベース / ブースト) | TDP | iGPU |
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Ryzen 9 7950X3D | 16/32 | 4.2/5.7 | 120W | Radeon Graphics 2 |
Ryzen 9 7950X | 4.5/5.7 | 170W | ||
Ryzen 9 7900X3D | 12/24 | 4.4/5.6 | 120W | |
Ryzen 9 7900X | 4.7/5.6 | 170W | ||
Ryzen 9 7900 | 3.7/5.4 | 65W | ||
Ryzen 7 7800X3D | 8/16 | 4.2/5.0 | 120W | |
Ryzen 7 7700X | 4.5/5.4 | 105W | ||
Ryzen 7 7700 | 3.8/5.3 | 65W | ||
Ryzen 5 7600X | 6/12 | 4.7/5.3 | 105W | |
Ryzen 5 7600 | 3.8/5.1 | 65W |
サフィックス (末尾のアルファベット) | |
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X | 高性能 |
3D | 大容量キャッシュメモリ搭載 |
世代最初のラインアップは、サフィックスにXが付く4モデルで、2022年9月に登場しました。
その後、2023年1月に無印の3モデルが登場となりましたが、これらは同名のX付きモデルの下位クラスという位置付けで、その分性能も少し下がっています。
さらに翌月となる2月には、サフィックスに3Dが付くRyzen 9 7950X3DとRyzen 9 7900X3Dが、4月にはRyzen 7 7800X3D発売されました。これらはまとめてRyzen 7000X3Dシリーズと呼ばれます。
この3D付きCPUの特徴は、大容量のキャッシュメモリを搭載している点にあります(3D V-Cache)。
キャッシュメモリとは、プロセッサ内にある非常に高速なメモリのことで、上位クラスのものほど容量は大きいのですが、メインメモリと比べると非常に小容量です。よって、かつてはキャッシュメモリの容量が大きくても性能にはあまり影響しませんでした。
しかし、近年は数十MBほどまで増量されたため、それなりに機能するようになって来ました。そこで、AMDはRyzen 5000シリーズでキャッシュメモリを増量したRyzen 7 5800X3Dを登場させました。
その効果は特にゲームにおいて抜群で、ブーストクロックがやや低いなどスペック的にはやや劣るRyzen 7 5800X3Dが、ゲーミングPCにおいての鉄板の1つとなるほどだったのです。
そんな3D付きCPUがRyzen 7000シリーズに早くも、そして3モデルも登場したのですが、期待に応える仕上がりとなっています。
世代の概要でノート向けプロセッサーは非常に複雑だとお話ししましたが、その最大の理由は過去のものを含め異なるアーキテクチャが混在し、それぞれが個別のコードネームやシリーズ名を持つことになったからです。
さらに、命名規則が大きく変わったため、初見ではどのプロセッサーがどのアーキテクチャを採用しているかが分かりにくくなっています。以前のようにRyzen 7000シリーズ世代の下位クラスと思っていても、実際は2世代前のものだったということも起こり得ますので、気を付けなければなりません。
そこでまずは、この世代のノートAPUの命名規則について、ハイエンドモデルのRyzen 9 7945HXを例に取ってお話ししますが、使われる用語は必ずしも正式な名称とは限りませんのでご注意下さい。
Ryzen 9 | 7 | 9 | 4 | 5 | HX |
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ブランド名 | 年 | マーケット セグメント | アーキテクチャ | クラス | サフィックス |
ブランド名はAMDのPC向けプロセッサーのブランドの名前で、現在はRyzen(ライゼン)とAthlon(アスロン)の2系統があり、それぞれがさらに細かく分類されます。
Ryzen | Athlon |
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Ryzen 9 Ryzen 7 Ryzen 5 Ryzen 3 |
Athlon Gold Athlon Silver |
年は発売年を表します。
上位1桁目 | 発売年 |
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7 | 2023 |
8 | 2024 |
9 | 2025 |
数字の最上位桁はこれまでは世代を表していましたが、Ryzen 7000シリーズ・ノートAPUでは7ならば2023年というように特定の年を表すようになったようです。
マーケットセグメントとは、分かりやすくいうとブランドごとに使われる数字のことです。
上位2桁目 | ブランド |
---|---|
1 | Athlon Silver |
2 | Athlon Gold |
3, 4 | Ryzen 3 |
5, 6 | Ryzen 5 |
7 | Ryzen 7 |
8 | Ryzen 7 Ryzen 9 |
9 | Ryzen 9 |
クラスが上のものほど大きい数字が使われますが、これは以前と同様ですので、あまり違和感はないでしょう。
アーキテクチャはコアの設計です。
上位3桁目 | アーキテクチャ |
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1 | Zen, Zen+ |
2 | Zen 2 |
3 | Zen 3, Zen 3+ |
4 | Zen 4 |
+が付くアーキテクチャは改良型ですので、比較的小規模な変化に留まる世代です。ただ、通常これも1つの世代として扱いますので、Ryzen 7000シリーズにおける最新アーキテクチャのZen 4は第6世代ということになります。
しかし、新命名規則では+が付くアーキテクチャを1つの世代としてカウントしていませんので、アーキテクチャに付く数字が上位3桁目に使われるという規則になるようです。
クラスは細かい差を付けるための数字です。
上位4桁目 | クラス |
---|---|
0 | 下位クラス |
5 | 上位クラス |
サフィックスはハイパフォーマンスや薄型ノート向けなどのコンセプトの違いを表しますが、ざっくりいうとTDP(消費電力のようなもの)の違いになります。TDPが高いものほど高性能になります。
サフィックス | 性能 |
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HX | 45 - 75W |
HS | 35 - 54W |
U | 15 - 28W |
C | 15 - 28W |
大きな違いは最上位桁の年と上位3桁目のアーキテクチャになるかと思います。特にこの世代はアーキテクチャが混在していますので、モデルナンバーで判別ができなければ非常に厄介になるところでした。
とはいえ、複雑でややこしいことには変わりありませんから、間違いのないように個別にしっかりと確認する必要があるでしょう。
では、ここからは各シリーズを少しだけ詳しく見ていきましょう。
発売年月 | 2023/01 |
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シリーズ名 | AMD Ryzen 7045シリーズ |
コアアーキテクチャ | Zen 4 |
GPUコアアーキテクチャ | RDNA 2 |
開発コードネーム | Dragon Range |
プロセスルール | 5nm + 6nm |
対応メモリ | DDR5 |
PCIe | 5.0 |
Ryzen 7045シリーズは、Ryzen 7000シリーズのデスクトップCPUのノートPC版です。パッケージ(ソケット)の違いやTDPが抑えられている点を除いて、基本的な部分がデスクトップ向けと同じなため、非常に高性能です。
ただ、それゆえにiGPU(内蔵GPU)はおまけレベルの性能ですので、ゲーミング用途などではdGPU(グラフィックボード)は必須となるでしょう。
CPU名 | コア/スレッド | クロック (ベース / ブースト) | TDP | iGPU |
---|---|---|---|---|
Ryzen 9 7945HX | 16/32 | 2.5/5.4 | 55-75W | Radeon 610M(2) |
Ryzen 9 7845HX | 12/24 | 3.0/5.2 | 45-75W | |
Ryzen 7 7745HX | 8/16 | 3.6/5.1 | ||
Ryzen 5 7645HX | 6/12 | 4.0/5.0 |
発売年月 | 2023/01 |
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シリーズ名 | AMD Ryzen 7040シリーズ |
コアアーキテクチャ | Zen 4 |
GPUコアアーキテクチャ | RDNA 3 |
開発コードネーム | Phoenix |
プロセスルール | 4nm |
対応メモリ | DDR5 LPDDR5 |
PCIe | 5.0 |
Ryzen 7040シリーズは、Ryzen 7000シリーズの正統なノート向けプロセッサーといって良いでしょう。デスクトップ向けをノート向けに変えただけのRyzen 7045シリーズとは異なり、最初から充分な数のGPUコアを持つAPUとして開発されているからです。
Ryzen 7040シリーズの特筆すべき点といえば、Ryzen AIと呼ばれるAI向けの専用プロセッサーを持つことが挙げられるでしょう。まだ用途は限られていますが、新しい試みですので発展を期待しましょう。
CPU名 | コア/スレッド | クロック (ベース / ブースト) | TDP | iGPU |
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Ryzen 9 7940HS | 8/16 | 4.0/5.2 | 35-54W | Radeon 780M(12) |
Ryzen 7 7840HS | 3.8/5.1 | |||
Ryzen 5 7640HS | 6/12 | 4.3/5.0 | Radeon 760M(8) |
発売年月 | 2023/01 |
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シリーズ名 | AMD Ryzen 7035シリーズ |
コアアーキテクチャ | Zen 3+ |
GPUコアアーキテクチャ | RDNA 2 |
開発コードネーム | Rembrandt-R |
プロセスルール | 6nm |
対応メモリ | DDR5 LPDDR5 |
PCIe | 4.0 |
Ryzen 7035シリーズは、実はRyzen 6000シリーズのリフレッシュ世代です。開発コードネームのRembrandt-RはRembrandt-Refreshの略であり、RembrandtとはRyzen 6000シリーズ・ノートAPUの開発コードネームなのです。
CPU名 | コア/スレッド | クロック (ベース / ブースト) | TDP | iGPU |
---|---|---|---|---|
Ryzen 7 7735HS | 8/16 | 3.2/4.75 | 35-54W | Radeon 680M(12) |
Ryzen 5 7535HS | 6/12 | 3.3/4.55 | Radeon 660M(6) | |
Ryzen 7 7735U | 8/16 | 2.7/4.75 | 28W | Radeon 680M(12) |
Ryzen 5 7535U | 6/12 | 2.9/4.55 | Radeon 660M(6) | |
Ryzen 3 7335U | 4/8 | 3.0/4.3 | Radeon 660M(4) |
発売年月 | 2023/01 |
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シリーズ名 | AMD Ryzen 7030シリーズ |
コアアーキテクチャ | Zen 3 |
GPUコアアーキテクチャ | Vega |
開発コードネーム | Barcelo-R |
プロセスルール | 7nm |
対応メモリ | DDR4 LPDDR4 |
PCIe | 4.0 |
Ryzen 7035シリーズはRyzen 6000シリーズ・ノートAPUのリフレッシュ世代でしたが、Ryzen 7030シリーズはさらに1つ前の世代となるRyzen 5000シリーズ・ノートAPUのリフレッシュ世代です。
また、開発コードネームのBarcelo-RはBarcelo-Refreshの略ですが、これがさらにさらにややこしくなっています。というのもRyzen 5000シリーズ・ノートAPUの開発コードネームはCezanneなのですが、この世代のリフレッシュ品がBarceloなのです。
つまり、Barcelo-RはRyzen 5000シリーズ・ノートAPUのリフレッシュ品のリフレッシュ品のような位置づけになるということです。
CPU名 | コア/スレッド | クロック (ベース / ブースト) | TDP | iGPU |
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Ryzen 7 7730U | 8/16 | 2.0/4.5 | 15W | Radeon Graphics(8) |
Ryzen 5 7530U | 6/12 | 2.0/4.5 | Radeon Graphics(7) | |
Ryzen 3 7330U | 4/8 | 2.3/4.3 | Radeon Graphics(6) |
以上、Ryzen 7000シリーズ・ノートAPUのラインアップを一通りご覧頂きました。
旧世代アーキテクチャを採用するモデルがあり、しかもモデルナンバーを見ても直感的には判別しづらいですから、注意が必要です。