快適なPC環境の構築には、良いCPUが欠かせません。ここではCPUの基本的な知識や概念、スペックの見方や性能比較、そして選び方まで全て徹底的に解説しています。CPUを知りたい人は是非ご一読ください。
CPUについて、多くの人が最も知りたいことは性能に関するデータではないでしょうか。
CPUの性能は、それを測るための専用ソフトであるベンチマークテストによって知ることができます。
テストの作りや内容によって結果は変わってきますから、1つのテストで完璧な結論を出すことはできません。よって、複数のテスト結果から総合的に判断したり、目的に合致したテストを選ぶなど見る側にも多少の工夫は必要になります。
当サイトでは著名なベンチマークテストやサイトが公開しているデータを基にCPUを比較し、ランキング化しています。またこれらのデータからコストパフォーマンスやワットパフォーマンス(電力効率)も算出してまとめていますので、是非ご一読ください。
CPU(シーピーユー)はCentral Processing Unit(中央処理装置)の頭文字を取った言葉で、コンピューターと呼ばれる機器には必ず搭載されるハードウェアです。プロセッサー(Processor)と呼ばれることもあります。
CPUの役割はソフトウェア(プログラム)を実行することです。それゆえコンピューターの頭脳とも形容されますが、ソフトウェア自体がCPUに対する命令を集めたものですので、CPUだけがソフトウェアを理解できるというよりはCPUにだけ伝えられるといった方が正確です。
いずれにせよ、コンピューターが動く時にはほぼ全ての局面でCPUが仲介していますので、CPUはコンピューターの中心的な存在といっても過言ではありません。
一口にCPUの種類とはいっても、切り口によって内容は変わってきます。
CPUは様々な機器に搭載されています。個人向けのPC(パーソナルコンピューター)はもちろん、業務に用いられるサーバーやワークステーション、あるいはスマートフォンやゲーム機、家電にも搭載されていて、複雑な動作を行うことを可能にしています。
ただ、CPUはそれぞれの機器向けに作られますので、例えばPC向けのCPUをスマホに載せ替えるなどということはできません。つまり、機器ごとにCPUの種類が異なるということです。
あるいは、CPUを開発、製造する企業も複数ありますので、これもまた種類の違いといえるでしょう。代表的なメーカーといえばIntelやAMD、Apple、またスマホ系ではArmやQualcommなどが挙げられます。中でもIntelやAMDは複数の機器をターゲットに開発を行っていますので、CPU業界の中心にいるといっても過言ではありません。
さて、当サイトではPC向けの情報が中心ですので、ここからはIntelとAMDのPC向けCPUに絞ってお話ししていきますが、CPUの種類に関係する言葉や概念には以下のようなものがあります。
PC向けCPUの種類というと、まずブランドが挙げられるでしょう。IntelはCore(コア)、AMDはRyzen(ライゼン)というブランドがPC向けCPUの現在の主力となっています。
そして、各CPUはブランド名を含んだ数字とアルファベットからなる固有の名前を付けられています。この名前のことをIntelはプロセッサーナンバー、AMDはモデルナンバーと呼んでいます。
ちなみに、両ブランドの現在の最高スペックCPUの名前はIntelがCore i9-14900KS、AMDがRyzen 9 7950X3Dといいますが、実は名前からおおよそのスペック、性能を類推することが可能です。なぜなら、CPU名に使われる数字やアルファベットは全て意味を持っているからです。
ブランド名 | 世代 | 相対性能 | 製品の性質 |
---|---|---|---|
Core i9 | 14 | 900 | KS |
Ryzen 9 | 7 | 950 | X3D |
ざっくり解説すると、ブランド名に続く数字がクラスを、5桁ないしは4桁の数字の内、上位2桁あるいは1桁が世代を、残りの数字が相対的な性能を、後ろに付くアルファベット(サフィックス)が製品の性質を表します。
基本的には数字が大きいほど高性能といえる訳ですが、世代によって性能が前後することもありますので、注意が必要です。
アーキテクチャ(Architecture)とは設計を意味する言葉です。よって、CPUアーキテクチャといえばCPUの設計を表すことになりますが、中でも重要なのはコアのアーキテクチャです。
コア(Core: 核)とは、CPUにおいて演算を行う装置のことをいいますが、文字通りCPUの中核を担う部分です。現代のCPUはコアを複数備えていますが、これはCPUが複数あるのと似たような意味になります。
新しいコアアーキテクチャが完成すると、コアの数やクロック周波数などスペック(仕様)に差を付けた複数のCPUを製造します。これが世代を構成するそれぞれのCPUになる訳ですが、コアが同じである以上、基本的な性能は全て同じです。コア以外の部分に差を付けることでバリエーションを生み出しているということです。
ただし、注意すべき点があります。
基本的には1つのアーキテクチャで1つの世代を形成しますが、1つのアーキテクチャが複数の世代で使われたり、1つの世代に複数のアーキテクチャが混ざったりすることがあるのです。
これらはCPUの名前で判断できるとは限りませんので、しっかりと調べる必要があります。
また、アーキテクチャと良く似たものでコードネーム(Code Name)と呼ばれるものがあります。
開発コードネームとも呼ばれますが、その名の通り、製品の開発時に付けられる名前のことです。第~世代CPU [コードネーム]というように併記される形で見かけることが多いでしょう。
言葉の響きからすると、メーカーの内部でのみ使われる名前のようですが、外部向けの資料やアナウンスにも使われていますので、正式な名称と考えても良さそうです。
ただし、コードネームとアーキテクチャ名は境目が曖昧なことが多く、また厳密な定義もありませんし、IntelとAMDではニュアンスが異なることがありますので注意が必要です。
Intel、AMDのCPUに関する情報はそれぞれ個別のページでお話ししていますので、是非ご一読ください。
CPUのスペック(仕様)表に記載されている項目は、詳しくない人が見ても理解は難しいと思います。
ここではIntelとAMDのメインストリーム(主流)向け、現行世代最高性能CPUのスペックを例に、各項目や用語、概念についてお話しします。
コアもスレッドもCPUの主な役割であるソフトウェアの処理に深くかかわる装置や概念です。
基本的にはこれらの数に比例してマルチスレッド性能(CPUの総合的な能力)は上がっていくのですが、多ければ多いほど良いというものでもありません。ソフトウェアの作りや冷却能力などにより様々な制限がかかるからです。
それから、IntelのCPUは2種類のコアを使い分けることにより電力効率を上げるという仕組みを採用しています。よって、コア数、スレッド数という概念があやふやになり、AMDのCPUとの比較も難しくなってきています。
詳細は以下のページで、どうぞ。
クロック周波数は、処理速度を表すもので、Hz(ヘルツ)という単位で表されます。
数字とHzの間のGはGiga(ギガ)の頭文字で、10億を表す接頭辞です。よって、4.0GHzならば40億Hzを表すことになります。
クロック周波数は、2種類存在します。
1つは定格クロックで、通常動作時のクロック周波数を表します。
そして、もう1つはブーストクロックで、負荷が掛かった時のクロック周波数を表します。この負荷が掛かった時にクロックが上がる機能のことを、IntelはTurbo Boost(ターボブースト)、AMDはPrecision Boost(プレシジョンブースト)と呼んでいますが、全てのCPUがこれらの機能を有するわけではありません。
それから、スペック表には載っていませんが、アイドル状態(負荷が全く掛かっていない状態)では、定格クロックを落として省電力モードに入るという機能もあります。
現在のクロック周波数は、このように細かくコントロールされているのです。
コア数、スレッド数はマルチスレッド性能に大きな影響を与えるとお話ししましたが、クロック周波数はシングルスレッド性能(1コア当たりの性能)に影響を及ぼします。高クロックなものほど性能も高いということですが、マルチスレッド性能が様々な制限を受けやすいのに比べて、シングルスレッド性能は制限を受けにくいという性質を持っています。よって、CPUパワーを追求するのであれば、シングルスレッド性能にもこだわる必要があります。
ただし、同じメーカーの同じ世代のCPUであれば、クロック周波数で大体の性能比較が可能なのですが、メーカーや世代が違うCPU同士ではクロック当たりの性能が異なるため、単純な順位付けはできません。
キャッシュ(Cache)とは貯蔵庫というような意味の英単語です。そして、キャッシュメモリ(Cache Memory)とはCPU内にある超高速なメモリのことです。
CPUの処理速度は非常に高速ですので、メインメモリとのデータのやり取りは、プログラムの処理速度においてボトルネック(制約)になりがちです。
そこで、CPUコアとメインメモリの間に高速なメモリを置いて、上記のボトルネックをいくらか解消しようという仕組みがキャッシュメモリです。CPUの内部に置かれます。
キャッシュメモリは多段階構造になっており、CPUに近い位置から順にL1キャッシュ / L2キャッシュ / L3キャッシュというように呼ばれます。LはLevel(レベル)の頭文字です。また、1次キャッシュや2次キャッシュと呼ばれることもあります。
基本的にCPUに近いほど高速ですが、その分高価でもあるため、容量はとても小さくなります。良く使われるデータをキャッシュに置いておくことができれば高速化に繋がりますが、必要なデータが頻繁に変わってしまう場合だと、結局はメモリから取ってくることになり、あまり有効ではなくなります。これらはプログラム次第ということになるでしょう。
よって、キャッシュの容量差を体感できることはあまりなかったのですが、最近のCPUはL3キャッシュに数十MB(メガバイト)を積むようになってきましたので、目に見える違いを得られる場面も増えてきました。性能を追求するのであれば、より大きなキャッシュ容量を積む高性能CPUを狙うのも良いかもしれません。
TDP(Thermal Disign Power)は日本語では熱設計電力と訳されますが、もう少し分かりやすい言葉でいうと、設計上どれくらいの発熱量になるかの目安ということになります。
ただ、半導体においては、消費電力と発熱量は比例関係にありますので、TDPは最大消費電力と似たような意味も併せ持ちます。単位W(Watt : ワット)で表されます。
また、消費電力 ≒ 発熱量は、性能とも比例関係にあります。よって、消費電力を上げれば性能も上がるのですが、発熱もまた膨れ上がってしまいます。高温状態が続くと、PC内の他のハードウェアにも悪影響を及ぼしかねませんので、クーラーによって冷却する必要があるのですが、その際にどれくらいの冷却性能が必要かを知るために、TDPという指標があるという訳です。
さて、クロック周波数の項目で、CPUは負荷が掛かるとコアの周波数を上げるとお話ししましたが、実はブースト機能が働く条件の1つにTDPの枠内でというのがあります。
TDPは全てのコアがフルに働いた状態を元に定められているのですが、1つのコアに処理が集中し、残りのコアが遊んでいるような状態では、TDPには余裕がある訳です。
そこで、この余裕分を稼働中の1つのコアに振り分ける = 余剰TDP分に相当するクロックだけ上昇させるというのが、ブースト機能の仕組みなのです。
また、働いているコアが多いほどTDPの余裕も少なくなる訳ですから、2コアに負荷が掛かっている場合は、1コアに負荷が掛かっている場合よりもクロックの上限は低くなります。
CPUの内部に設置されたグラフィック処理用のプロセッサのことです。通称、iGPU(integrated GPU)とも呼ばれます。
現在のiGPUは軽い3Dゲームくらいならば問題なく動くレベルにはありますが、専用のハードウェアであるグラフィックボード(dGPU)には全く及びませんので、ゲーム目的であればdGPUはまだまだ必須です。
詳細は以下のページで、どうぞ。
ソケット(Socket)とは、マザーボード上にあるCPUを取り付ける場所のことです。
ソケットは物理的な形を持つので、ソケットが異なるもの同士では取り付けることができません。
CPUメーカーが異なれば、ソケットもまた全く異なるので互換性はありませんし、同じメーカー同士でも世代を経るに連れ、変わることがあります。
基本的にはソケットが同じ場合のみ、CPUを交換することが可能となります。
プロセスルール(Process Rule)とは、CPUやGPU、メモリなどの半導体を構成する回路の配線の幅を指す言葉です。製造プロセス(Manufacturing Process)とも呼ばれます。
この配線の幅が細ければ細いほど、同じ面積にたくさんの回路を詰め込むことができますし、逆に同じ大きさの回路であれば、全体のサイズを小さくすることができますので、プロセスルールの縮小化は性能アップを意味することになるのです。
現在のCPUのプロセスルールは、5nm(ナノメートル)前後ですが、微細化は徐々に厳しくなってきています。また、微細化自体に限界が近いともいわれていますので、今後の展望はやや不透明といわざるを得ないのが現状です。
また、14nm+や14nm++、あるいは14nm FinFETなど、長さの後に+やFinFETが付く場合もありますが、前者は改良型を後者は方式を表しています。前者はベースとなる14nmからパワーアップしたものという解釈で良いでしょう。
さらに、Intelの最新プロセスルールはIntel 7といい、nmで表記する方法を止めました。ただ、これは7nmではなく10nmで、次世代のIntel 4も7nmですので、数字と長さが一致しない、直感的に分かりにくい表記になっている点に注意が必要です。