common-sense
PCを理解する上では、「ハードウェア」や「ソフトウェア」などを個別に知ることも重要ですが、「各ハードやソフトがどう協調するか」や「PCの一般的な性質」を知ることも同じくらい重要です。
そこで、ここでは「PC利用」の立場から「PCの全体像」について、お話ししようと思います。
また、PCを中心にお話ししますが、「スマホ」や「家庭用ゲーム機」など一般に「コンピュータ」と呼ばれるものの仲間は全て似たような仕組みで動いていますので、しっかりと理解しておくと、この先も長きに渡って役立つこと間違いなしです!
まずは、PCを起動してから電源を切るまでに一般的に行われることと、それぞれの処理に影響を与えるハードウェアについて、見ていきたいと思います。
以下に、処理の流れを示しますが、これらは理解しやすいように単純化したもので、実際はもっと複雑である点に注意して下さい。
操作 | 重要ハードウェア |
---|---|
1: PCの電源ON → OSの読み込み | ストレージ、メモリ |
2: デスクトップ表示 (システムソフト起動中) | ストレージ、メモリ |
・・・ | ・・・ |
3: ソフトの起動 (アプリケーションソフト) | ストレージ、メモリ |
4: 処理の実行 | CPU、GPUなど |
5: ソフトの終了 | ストレージ、メモリ |
・・・ | ・・・ |
6: PCの電源OFF | ストレージ、メモリ |
それぞれを詳しく見ていきましょう。
PCの電源が押されると、PCに接続されたハードウェアに問題がないかのチェックが行われ、その後OSがメモリに読み込まれます。
ここでは、「ストレージに保存されたOSの読み込み速度」と「メモリへの書き込み速度」が重要になります。
OSが起動すると、「デスクトップ画面」が表示されます。ここでいうデスクトップとは、様々なソフトのアイコンやボタンが配置された、PCのメイン画面のようなもののことで、OSが提供する重要な機能の一つになります。
ただ、デスクトップ画面が表示された後も、しばらくは裏で様々なソフトやサービスが自動で起動しているため、ユーザーが処理の指示を出しても反応が遅い状態が続きます。ですので、起動しきるまでは、大人しく待つのが賢明です。
ここでも、「ストレージに保存された各種ソフトの読み込み速度」と「メモリへの書き込み速度」が重要になります。
PCが落ち着いたら、ソフトを起動します。ソフトのウィンドウが表示されますが、ここでもやはり起動しきるまでに少し時間が掛かります。
そして、これもまた同様に、「ストレージに保存されたソフトの読み込み速度」と「メモリへの書き込み速度」が重要になります。
ソフトが完全に立ち上がったら、いよいよ処理の実行です。PCの目的とは、OSの稼働にある訳ではありません。ソフトを利用して、ハードに処理をさせることが重要な訳ですから、ここが本編といっても良いでしょう。
ここでは、CPUやGPUなど、「処理を実行するハードのパワー」が重要になります。
ソフトの利用が終われば、ソフトを終了させます。その際、新たに作成されたり、内容に変更があったデータやソフトの設定などを、ストレージに保存する処理が行われることもあります。
ここでは、ソフトの起動時とは逆に、「メモリの読み込み速度」と「ストレージへの書き込み速度」が重要になります。
とはいえ、プログラム(ソフト)はそれ自体が再度上書きされる訳ではなく、変更のあった部分だけが書き換えられるのが一般的ですから、通常は起動時ほどの時間は掛かりません。
PCの利用が終われば、PCを正しく「シャットダウン(システムの停止)」して電源を切ります。シャットダウンにより、OSは保存しておくべきデータを「メモリから読み込んで」、「ストレージに書き込み」ます。
ここもまた5と同じく変更のあった部分の保存がメインですが、時間はそれなりに掛かるのが一般的です。
さて、すでにお気づきかと思いますが、影響を及ぼすパーツのほとんどが「ストレージ」と「メモリ」です。
実際はここまで単純ではありません。例えば「CPU」は何をするにしても間に入ってきますから、CPU性能は全体の挙動に影響を与えます。
しかし、起動や終了における処理時間で考えると、CPUの速度は「記憶装置(ストレージやメモリ)」のデータの読み書き速度とは比べものにならないほど速いため、CPUの処理時間は実質無視しても良いくらいなのです。
また、ストレージとメモリの速度差も大きく、高速なストレージでもメモリ速度には及びませんし、低速なストレージに至ってはメモリの「数十~数百分の一」程度の速度しか出ないものもあるほどなのです。
PCの基本的な操作においては、これらCPU、メモリ、ストレージの性能が大きな影響力を持つということを、覚えて帰って下さい。
前項の内容が理解できると、「PCを高速化するには何をすれば良いか」が見えてきます。
OSやソフトの起動や終了には、「ストレージ」や「メモリ」の「読み書き速度」が重要でした。
これは、頻繁にPCの電源を落としたり、アプリの起動と終了を繰り返すような場合には、メモリやストレージの性能を上げると快適さが増すということを意味しています。
また、アプリを起動した後の処理の実行には、「CPU」や「GPU」などの「処理能力」が重要でした。
これは、記憶装置に対する読み書きがあまりなければ、CPUやGPUなどの処理を行うハードの性能を上げると快適さが増すということを意味しています。
つまり、結局は最も良く使われるパーツや負荷の掛かるパーツの性能を上げることが、全体の処理速度を上げるということなのです。非常にシンプルな理屈ですから、分かりやすいと思います。
ここで一つ具体例を挙げてみましょう。仮に「ゲーミングPC」を組むとした場合、重要となるパーツは何なのでしょうか。
まず重要なのは、「GPU」です。ゲームプログラムの大部分は「グラフィック処理」が占めていますので、これを行うGPUが最優先だからです。
次に重要なのは、「CPU」です。GPUほどではありませんが、ゲームプログラムはCPUへの負荷も大きいからです。
ゲームにおいては、CPUやGPUの「瞬間的な処理能力」で、実現可能な映像の品質が決まってきますので、これらの性能が高くなければ快適なプレイ環境は作れないのです。
逆に、ゲームは一度起動すると、長時間稼働させ続けることが多いため、「メモリ」や「ストレージ」の読み書き速度は比較的重要度が低いと思われるかもしれません。
実際メモリは「容量不足」にならない程度に積まれていれば充分といったところもあるのですが、ストレージに関してはそうとは限りません。
なぜなら、ゲームは場面が切り替わるときに、次の場面に必要なデータをストレージから読み込むという作りになっていることが多いからです。つまり、ソフトの起動後もストレージ速度の影響を受けやすいのです。
よって、一般論としてですが、ゲーミングPCに求められるパーツの性能は
が重要になるということです。
自分がPCでやりたいことが、どのハードの影響を受けやすいかを、しっかりと理解しておきましょう。
PCには「2つの天敵」が存在します。それは「熱」と「衝撃」です。それぞれに分けて、お話しします。
「プロセッサ(CPUやGPU)」は、稼働時に非常に高温になるパーツです。消費された電力は、その分「熱」となって放出されますので、高性能 = 高消費電力なものほど、発熱量も多くなります。
例えば、高性能なプロセッサをむき出しのまま稼働して負荷を掛けると、すぐに「100度」付近にまで温度が上昇します。放っておくと、プロセッサは壊れるまで温度の上昇を続ける(熱暴走)のですが、現在のプロセッサには保護機能がありますので、定められた温度を超えて「異常」と認識されると、電源を落として損傷を防ぐ仕組みが取られています。
また、電源が落とされるまでいかずとも、一定の温度を超えた場合、ハードのパワーを制限することで熱量を下げるといった処置が取られることもあります。これを「サーマルスロットリング」といいます。
このように、プロセッサは稼働中常に熱を発し続け、場合によっては深刻な事態を引き起こしかねませんので、冷却し続ける必要があるのです。これを行うパーツのことを「CPU(GPU)クーラー」といいます。
電源が落ちないようにするのは当然として、性能が強制的に下げられてしまうサーマルスロットリングも、せっかくの性能を無駄にしてしまいますから、高性能なプロセッサほど高性能なクーラーを用いて、しっかりとした冷却を行いたいところです。
実は、プロセッサ自身は比較的熱に強い作りになっています。しかし、他のパーツの中にはそれほど熱に強くないものもありますので、PC内が長時間高温下に置かれると、安定稼働や耐久性に影響が出てくるのです。
プロセッサを直接的に冷やすクーラーの性能も重要ですが、PC本体が熱を溜め込まないようにすることも重要になります。そのためには「大きめのケースを使うこと」が一般的な解決策になります。大きなケースほど熱がこもりにくかったり、大きな冷却装置を使うことができたりするからです。
また、冬場はあまり気になりませんが、夏場にクーラーのない部屋でPCを稼働した場合、気温に加えて自身が発する熱によりさらなる温度上昇に陥ることもあるため、より気をつける必要があります。
発熱の問題がなければ、CPUやGPUの性能をもっと高くすることも可能なのですが、現実的にはプロセッサと熱は切っても切れない関係にありますので、どうしても熱対策が必要になってしまいます。
不慣れな内はピンとこないかもしれませんが、「熱が大敵である」ということだけは覚えて帰って下さい。
PCは精密機器で、非常に繊細な作りになっています。ノートPCやスマホを落下させて、「ディスプレイ」を割ってしまった経験のある人もいるかと思います。
また、「HDD」は物理的な可動部が多いため、落とすほどの衝撃を加えなくても故障に繋がる場合があります。データの読み書き中は特に弱いため、本体に手や物が当たることさえ避けるのが無難です。
デスクトップPCのように据え置いて使うタイプのPCは、本体に強い衝撃が加わる機会はあまりないかもしれません。
しかし、ノートPCやスマホ、タブレットPCなどは、ポケットやバッグなどに入れて持ち運んだり、時には不安定な場所に置いたりすることもあるかと思います。
ということは、落としたりどこかにぶつけたりするなど、本体に衝撃が加わる機会が多く、それだけ故障のリスクも大きくなってしまいます。
もちろん、その分「モバイル機器(持ち運び可能な機器)」には、衝撃に強いハードや部品が使われてはいるのですが、これは安全を担保してくれるものではありません。
重要なのは、衝撃が加わる機会そのものを減らすことです。いい方を変えるならば、持ち運ぶ必要のないものは、据え置きで使う方が望ましいということです。
PCは非常に高価で、なおかつ頻繁に使うものですから、できる限り故障は避けたいところです。
そのためには、故障の原因になるような要素は、取り除いておくに越したことはありません。
利便性を重視して「小さなケース」を採用すると、排熱の難しさによる「熱問題」と持ち運びのしやすさによる「衝撃問題」が同時に起こってしまうこともあり得ます。
PCが抱える「2つの天敵」に対する意識と対策は、怠らないようにして頂きたいと思います。