[CPU基礎知識] ブランド: CPUに差を付ける

最終更新日 : 2022/10/03

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ブランドとは

CPUにおけるブランドとは、コンセプトが同じ製品のグループといったところです。IntelAMDの主なPC向けCPUブランドは、前者がCore(コア)、後者がRyzen(ライゼン)といいます。

これらのブランドは、以下のようにさらに細かく分けられます。

Intel性能AMD
Core i9 (コアアイナイン)Ryzen 9 (ライゼンナイン)
Core i7 (コアアイセブン)Ryzen 7 (ライゼンセブン)
Core i5 (コアアイファイブ)Ryzen 5 (ライゼンファイブ)
Core i3 (コアアイスリー)Ryzen 3 (ライゼンスリー)
Pentium (ペンティアム)Athlon (アスロン)
Celeron (セレロン)-

アーキテクチャ(設計)が完成すると、コアの数やクロック周波数などスペック(仕様)に差を付けた複数のモデルを製造しますが、性能に最も大きな影響を与えるのはコア数ですので、基本的にはコア数によりブランドが振り分けられます。当然、上位ブランドほどコア数も多くなります。

IntelPentium (ペンティアム)Celeron (セレロン)Coreが登場する以前のIntelの主力ブランドでした。Coreの登場後は、その下位ブランドという形で残っています。

そして、AMDAthlon (アスロン)も同様にかつてのAMDの主力ブランドで、その下にSempron (センプロン)というブランドもありました。つまり、Pentium vs Athlon、Celeron vs Sempronという構図だった訳ですが、現在Sempronは使われていませんし、Athlonここ数世代はラインアップに入っていません

また、Athlonの後、Ryzenへとすぐに切り替わった訳ではありません。Ryzenの前にはFX(エフエックス)Aシリーズなどのブランドが主力となったからです。これらのブランドの時代はAMDにとってはいわゆる暗黒期で、Ryzenの登場により再び光が差した、というのがAMDのCPU史なのです。

それから、両社ともブランド + 数字という命名規則で、かつての主力ブランドを下位ブランドに据えるという構成を取っていますが、これらは全てIntelが先行して行い、AMDがその真似をするという形になっています。

では、IntelAMDのブランドをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

Intelブランド

早速、直近3世代の各ブランドのコア数SMT(同時マルチスレッディング)の有無、TB(ターボブースト)の有無を見て頂きますが、デスクトップ向けノート向けでは異なりますので、分けてお話しします。なお、IntelはSMTのことをHTT(Hyper Threading Technology)と呼んでいますが、基本的には同じものですので、ここではSMTと呼ぶことにします。

IntelデスクトップCPUブランド

第12世代

ブランド名i9i7i5i3PenCel
コア数
(スレッド数)
8+8
(16+8)
8+4
(16+4)
6+4
(12+4)
/6(12)
4(8)2(4)2(2)
SMT×
TB××


第11世代

ブランド名i9i7i5i3PenCel
コア数
(スレッド数)
8(16)8(16)6(12)---
SMT---
TB---


第10世代

ブランド名i9i7i5i3PenCel
コア数
(スレッド数)
10(20)8(16)6(12)4(8)2(4)2(2)
SMT×
TB××


  • 第12世代Coreの"+"はPコア + Eコアを表しています。特に第12世代Core i5は、Core i5-12600K / KFだけがEコアを持ち、その他のCPUは持ちませんので、ご注意下さい。
  • 第11世代Coreには、Core i3Celeronは存在しません。


さて、表を見ると、同じ世代同士ではブランドの格の差 = コア数の差というのが良く分かるかと思います。

Intelアーキテクチャでお話ししましたが、第6世代Skylakeアーキテクチャから長く脱却できず、シングルスレッド性能があまり伸びなかったため、コア数を増やすことでライバルAMDに必死に食らいついていったのがこの時代のIntelでした。

とはいえ、第10世代Core i34コア / 8スレッドであることは、なかなかに感慨深いものがありました。なぜなら、第7世代までは当時の最上位ブランドだったCore i7でさえ4コア / 8スレッドだったからです。強力なライバルの存在こそが、競争による発展をもたらすということです。


第11世代Coreは少し特殊です。Core i9Core i7コア数が同数だからです。

一応、両ブランドにはクロック周波数に関する技術において違いはあるのですが、実性能ではほとんど差がなく、率直にいってCore i9を選ぶ明確なメリットはありませんでした。また、Core i3PentiumCeleronはラインアップに入らず、代わりにComet Lake(第10世代)の新モデルがこれらのブランドの代替として同時に発売されました。


そして、かつてのパワーを取り戻した第12世代Coreですが、Pコア(高性能コア)Eコア(高効率コア)の2種類のコアを持つようになったため、前世代とは単純な比較がしづらくなりました。

Pコアはこれまでと同じCove系アーキテクチャで、これのコア数は基本的に変わっていませんので、Eコアの分が性能向上に大きく影響した訳ですが、EコアはPコアほどのパワーはありませんから、コア数だけでは性能比は分からなくなったということです。また、シングルスレッド性能も大きく向上していますので、最早コア数の比較には意味がないといっても過言ではないでしょう。

ただし、表にある通り、Eコアを持つのはCore i5-12600K / KF以上の上位ブランドだけですので、ご注意下さい。

IntelノートCPUブランド

第12世代

ブランド名i9i7i5i3PenCel
コア数
(スレッド数)
6+8
(12+8)
6+8
(12+8)
/6+4
(12+4)
/4+8
(8+8)
/2+8
(4+8)
4+8
(8+8)
/4+4
(8+4)
/2+8
(4+8)
2+8
(4+8)
/2+4
(4+4)
1+4
(2+4)
1+4
(1+4)
SMT×
TB×


第11世代

ブランド名i9i7i5i3PenCel
コア数
(スレッド数)
8(16)8(16)
/6(12)
/4(8)
6(12)
/4(8)
4(8)
/2(4)
2(4)2(2)
SMT×
TB×


第10世代

ブランド名i9i7i5i3PenCel
コア数
(スレッド数)
8(16)8(16)
/6(12)
/4(8)
4(8)2(4)2(4)2(2)
SMT×
TB××


  • 第12世代Coreの"+"はPコア + Eコアを表しています。特に第12世代Core i5は、Core i5-12600K / KFだけがEコアを持ち、その他のCPUは持ちませんので、ご注意下さい。
  • 第11世代Coreには、Core i3Celeronは存在しません。


大まかな傾向はデスクトップ向けCPUと同じです。代を経るごとにコア数やSMT(同時マルチスレッディング)TB(ターボブースト)などの機能が下位ブランドにも搭載されるようになるなど、少しずつ強化されてきています。

ただ、ノート向けCPUには厄介な点が存在します。それは同じブランドでもコア数、スレッド数が異なるモデルが多く存在することです。高性能CPUほどコア数が多いという原理原則に変わりはないのですが、プロセッサナンバーだけでは判別しきれませんので、個別にしっかりと確認する必要があります。

特に第12世代Eコアの追加という大きな変化があったからか、ラインアップがかなり複雑化してしまいました。Core i7はPコア、Eコアの組み合わせが4種類もあって、最低スペックのPコア2 + Eコア8Core i3の上位モデルと同じ数ですから、性能面でのブランドの逆転があってもおかしくはないのです。

また、デスクトップ向けCore i5-12600K / KF以上にのみEコアが搭載されていますが、ノート向けの方は最低クラスのCeleronに至るまで、全てのCPUにEコアが載っています。ただ、トータルのコア数ではノートPCの方が多いように見えますが、実はPコア数に関してはどのブランドでもデスクトップ向けの方が上です

big.LITTLE(CPU内に高性能コアと高効率コアの2種類のコアを持って適切に処理を振り分ける技術)は電力効率を上げるための技術ですから、バッテリーや熱の問題を抱えやすいノート向けCPUにはうってつけといえます。逆に、そういった問題が相対的に小さいデスクトップ向けCPUは、Pコア優勢でパフォーマンスを追求する方がユーザーのメリットが大きいという考えなのでしょう。

AMDブランド

こちらもまずは、直近4世代の各ブランドのコア数SMT(同時マルチスレッディング)の有無、クロック周波数のブースト機能の有無を見て頂きますが、お話しした通り、AMD内蔵GPU(iGPU)のあるものをAPU、ないものをCPUと呼んで区別していますし、デスクトップ向けノート向けがありますので、それぞれに分けて解説していきたいと思います(ただし、現在のところ、ノート向けCPUは存在しません)。

AMDデスクトップCPUブランド

第6世代(7,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
16(32)
/12(24)
8(16)6(12)--
SMT--
Boost--


第4世代(5,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
16(32)
/12(24)
8(16)6(12)--
SMT--
Boost--


第3世代(3,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
16(32)
/12(24)
8(16)6(12)
/6(6)
4(8)-
SMT○/×-
Boost-


第2世代(2,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
-8(16)6(12)
/4(8)
4(4)-
SMT-×-
Boost--


AMD Ryzen CPU第5世代はパスされましたので、ラインアップは存在しません。ご注意下さい。


さて、同じ世代同士で見ると、AMDブランドの格の差 = コア数の差というのがはっきりと分かります。

最上位ブランドのRyzen 9は、第3世代となるRyzen 3000シリーズで登場し、ハイエンドCPU並のコア数でライバルIntelを圧倒しました。AMDマルチスレッド性能Intelを突き放したからこそ、Intelもそれに追従せざるを得なくなった訳ですから、その意義は非常に大きかったといえるでしょう。


第4世代となるRyzen 5000シリーズは、販売当初から新モデルが加わる2022年の4月まで4モデルのみという寂しいラインアップでしたが、当時のライバルであった第10世代Intel Coreシングルスレッド性能でも勝利を収めるなど、躍進を遂げる世代となりました。

Intelは、第11世代でもシングルスレッド性能で何とか追いつくのがやっとで、第12世代ではシングルスレッド性能こそ突き放しましたが、マルチスレッド性能ではようやく互角といった有様でしたので、いかに第4世代Ryzenが優れていたかがお分り頂けるかと思います。


そして、最新の第6世代では再びマルチスレッド性能で圧倒し、苦手のシングルスレッド性能でも五分にまで持ち込むことができました。ただ、第12世代Intel Coreから1年ほど経っての発売ですから、当然といえば当然ではあります。

AMDデスクトップAPUブランド

第4世代(5,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
-8(16)6(12)--
SMT---
Boost---


第3世代(4,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
-8(16)6(12)4(8)-
SMT--
Boost--


第2世代(3,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
--4(8)4(4)-
SMT--×-
Boost---


AMDコードネーム第1世代Ryzen APUは第2世代Ryzen CPUの下位クラスという位置付けにしたため、世代の数字がズレたとお話ししましたが、第2世代Ryzen APUミドルクラスRyzen 5までのラインアップで、上位ブランドは入りませんでした。


第3世代Ryzen APUではRyzen 7が追加されましたが、現在の最新世代である第4世代Ryzen APUでもRyzen 9はありませんので、やはりAPUはパワーを追求するコンセプトを持ってはいないようです。

高いCPU性能を必要とする代表的な用途といえばゲームですが、その場合はGPUにより高い性能が求められますので、はっきりいうとiGPU(内蔵GPU)は不要です。逆にノートPCの場合は、そもそもゲームに不向きですからグラフィックボードは不要で、iGPUで充分なことがほとんどです。

そう考えるとデスクトップ向けAPUが非常に中途半端に思えますが、現実的にはゲーム以外の用途では最新のRyzen 5ほどのパワーがあれば大体のことはできますので、用途次第では充分に選ぶ価値のあるプロセッサといえます。

AMDノートAPUブランド

第5世代(6,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
8(16)8(16)6(12)--
SMT--
Boost--


第4世代(5,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
8(16)8(16)6(12)4(8)-
SMT-
Boost-


第3世代(4,000 / 5,000番台)

ブランド名Ryzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3Ath
コア数
(スレッド数)
8(16)8(16)
/8(8)
6(12)
/6(6)
4(8)
/4(4)
-
SMT○/×○/×○/×-
Boost-


スペースや熱の関係でノート向けプロセッサにこそiGPU(内蔵GPU)が必要になるのですが、ご存じの通りRyzen CPUにはiGPUがありませんから、AMDのノート向けCPUにはほぼ全てこのRyzen APUが使われています。よって、デスクトップ向けRyzen APUのようなRyzen CPUの下位ブランドといったニュアンスはノート向けにはありません。

デスクトップ向けRyzen APUにはなかったRyzen 9第3世代からラインアップに加わりましたが、コア数はRyzen 7と同数ですので、CPU性能に大きな差はありません。ただし、表にはありませんが、iGPUのコア数には差があります

また、AMDコードネームでもお話ししましたが、第3世代第4世代にはコードネームの異なる2つの世代が混在しています。特に第3世代の方は与えられた数字も異なりますので、注意が必要です。