一般的にNVIDIA社のGeForceのGPUは、AMD社のRadeonよりもゲーム向きといわれています。GeForceは3Dグラフィックの処理能力を重視しているからです。
また、多くのPCゲームがRadeonよりもGeForce向けに開発を行っています。NVIDIAのシェアの高さと、ゲーム製作者への協力体制などが理由でしょう。
よって、ゲーム目的であれば、GeForceに分があるといえるのですが、実際は世代により善し悪しがあるので、一概にはいえないところがあります。
ここでは、そんなGeForceブランドのGPUについて、お話ししようと思います。
まずは、GeForceのGPUのスペックの見方について、お話しします。
GeForce RTX 40シリーズのハイエンドGPU、GeForce RTX 4090のスペックの一部を以下に挙げます。
GPU名 | GeForce RTX 4090 |
---|---|
開発コードネーム | AD102-300 |
コア | |
CUDAコア数 | 16384 |
RTコア数 | 128 |
Tensorコア数 | 512 |
ベースクロック | 2235 MHz |
ブーストクロック | 2520 MHz |
メモリ | |
VRAM | 24 GB |
タイプ | GDDR6X |
速度 | 21 Gbps |
バス幅 | 384 bit |
帯域 | 1008 GB/s |
その他 | |
TDP | 450 W |
補助電源 | 8pin x 3 or 12VHPWR (450W) |
DirectX | 12 |
データの基本的な見方については、GPU(グラフィックボード)でお話ししていますので、参照してみて下さい。
また、GeForce / RadeonのGPU性能については、GPU(グラボ)比較&ランキングで詳しく知ることができますので、是非チェックしてみて下さい!
GPU名は、ある規則に従って付けられています。名前を構成する文字列、数字の意味について、お話しします。
GeForce(ジーフォース)は、NVIDIA(エヌヴィディア)社のPC向け / 個人向けのGPUのブランド名です。通称としてゲフォと呼ばれたりもします。
社名もブランド名もあまりなじみがない発音ですから読みにくいかもしれませんが、しっかりと覚えて帰って頂きたいと思います。
また、NVIDIAには他にもQuadro(クアドロ)というプロ向け / 企業向けのGPUブランドがありますが、ゲーム用途には不向きですので、注意が必要です。
RTXは、前世代まではGTXと呼ばれていましたが、これはその世代におけるクラスを表す文字列でした。
上位クラスにはGTXが付いて、下位クラスにはGTが付くか、または無印(何も付かない)となります。
しかし、近年はGTや無印などの下位クラスはほとんど販売されていません。おそらくは、CPU内蔵GPUの性能が向上したため、ロースペックグラフィックボードの需要がなくなりつつあるからかと思われます。
さて、GTXからRTXへ名称が変わったのは、レイトレーシング(Ray Tracing)と呼ばれる技術にハードウェア的に対応したことが理由です。つまり、RはRayの頭文字ということです。
レイトレについては、RTコアを参考にしてみて下さい。
GPU名が持つ数字には、2つの意味が含まれています。
1つは、シリーズや世代といった意味です。以下に、ここ数世代で使われた数字とシリーズ名を示します。
数字 | シリーズ名 |
---|---|
900番台 | GeForce GTX 900シリーズ |
1000番台 | GeForce GTX 10シリーズ |
2000番台 | GeForce RTX 20シリーズ |
1600番台 | GeForce GTX 16シリーズ |
3000番台 | GeForce RTX 30シリーズ |
4000番台 | GeForce RTX 40シリーズ |
ご覧の通り、GTX 900シリーズとGTX 10シリーズの間で変化が起こっています。1000番台は1000シリーズではなく、10シリーズになったからです。
GTX 10シリーズの次は1100番台のGTX 11シリーズかと予想されていましたが、上記のように2000番台のRTX 20シリーズとなりました。さらに、2000番台と同じ世代で1600番台の数字を持つGTX 16シリーズも登場しましたので、少しややこしくなってしまいました。
そして、現在の最新世代は4000番台の数字を持つGeForce RTX 40シリーズです。
2つ目の意味は、そのシリーズにおける相対的な性能です。シリーズを表す数字を取り除いた下2桁の部分が該当しますが、おおよそのクラス分けをすると、以下のようになります。
スペック | 文字列 | 数字 |
---|---|---|
ハイクラス | RTX, GTX | xx70以上 |
ミドルクラス | xx60、xx50 | |
ロークラス | GT, 無印 | xx40以下 |
これまで長い間、xx80(下2桁が"80")がGeForceの最高クラスGPUに付けられる数字でしたが、RTX 30シリーズでは久々にxx90を付けたモデルが登場しました。この場合、ハイクラスにはxx90 / xx80 / xx70がラインアップされることになります。
xx60とxx50は共にミドルクラスですが、世代によっては小さくはない性能差が付くことがあります。よって、xx60は同じミドルクラスでも、やや上のレンジとなるアッパーミドルクラスに分類されることも少なくありません。
そして、クラスを表す文字列に関してですが、以前の命名規則ではxx50以上の数字が付く製品にはGTXが付いていました。
しかし、前述の通り、近年はロークラスGPUが減っていますので、GTX 10シリーズではGeForce GT 1030だけがGTXの付かないモデルとなっています(1040は存在しません)。
ただ、GT 1030はiGPUレベルの性能しかありませんので、軽いゲームなどであっても、少しでも処理能力が欲しい場合は、ミドルクラス以上のGPUを選んでおくことをおすすめしたいと思います。
xx60辺りはやや高めですから、xx50クラスがエントリークラスとして良いでしょう。
また、数字の後ろにTiのサフィックス(接尾辞)が付くものがあります(RTX 3090 Ti / RTX 3080 Ti / RTX 3070 Ti / RTX 3060 Ti / RTX 2080 Ti / GTX 1660 Ti / GTX 1080 Ti / GTX 1070 Tiなど)。
これはTitanium(チタニウム)の略で、同じ番号のモデルと1つ上のクラスのモデルとの間に収まるようにスペックアップしたものとなっています。強化版といった解釈で良いでしょう。
さらに、サフィックスと呼んで良いのかは分かりませんが、数字の後にSUPERが付くモデルもあります(RTX 2080 SUPER / RTX 2070 SUPER / RTX 2060 SUPER / GTX 1660 SUPER / GTX 1650 SUPER)。
これも同じ番号のモデルのパワーアップ版という位置付けなのですが、こちらは同じ番号のモデルを置き換えていくコンセプトですので、SUPERの付かないモデルは徐々に消えていくことになります。ただし、販売が継続されるモデルもありますから注意が必要です。
ここまでは全てデスクトップ向けGPUに関するものでしたが、最後にノート向けGPUについてお話ししておきます。
GeForce GTX 900シリーズまでのノート向けGPUには、末尾にMが付いていました。GeForce GTX 980Mというようにです。
ノート向けですので、性能はデスク向けには劣るのですが、上位クラスのノート向けGPUは重いゲームでもそれなりに楽しめるだけの性能を持っていました。
しかし、その次の世代のGeForce GTX 10シリーズから末尾のMが消えました。
これは、それまでノート向けGPUの性能は、同じ数字のデスクトップ向けGPUの性能の半分ほどがせいぜいであったのに対して、GTX 10シリーズのノート向けGPUは、ほぼ同等にまで達するようになったからなのです。
つまり、区別する必要がなくなったというアピールでもある訳です(実際はスペックにわずかな違いがあります)。いずれにせよ、凄まじい進化でした。
NVIDIAのGPUコアはCUDA(クーダ)コアと呼ばれます。
GPUとCPUでは仕組みが異なるため、CPUが処理するプログラムをGPUは扱うことができません。
しかし、高性能なGPUの処理能力を何とか活用したいということから、GPUをCPUのように使う技術が開発されました。これをGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)といいます。
CUDAとは、NVIDIAが開発したGPGPUの環境のことで、NVIDIAのGPUコアは全てこれに対応しているため、コアのことをCUDAコアと呼ぶようになったのです。
難しいので、これ以上はお話ししませんが、言葉自体は覚えて帰って頂ければと思います。
コアクロックには、通常時のベース(定格)クロックと負荷が掛かった時に自動で引き上げられる時のブーストクロックの2種類があります。
ただし、NVIDIAのブーストクロックとは、このクロックの引き上げが起きた際に平均的に到達するクロックを表す点には注意が必要です。クロックの上限ではないということです。
メインメモリ用のDDR4 SDRAMやグラフィックボード用のGDDR6 SDRAM(SGRAM)などは代表的なメモリの規格ですが、各規格には複数のスペックが存在します。そして、後発のものほど高性能化するのが通常です。
速度に関していうならば、GDDR6の前世代であるGDDR5の場合は8Gbps(bit/sec)辺りが上限となりましたが、GDDR6ではその倍の16Gbps辺りまで到達しました。
そして、GDDR6Xメモリは19~21Gbps辺りとなりましたが、GeForce RTX 4090に搭載されているメモリは21Gbpsで、これがバス幅 384bitで動作しますから、メモリ帯域(データ転送速度)は
21 x 384 [Gbit/sec]
= 8,064 [Gbit/sec]
= 1008 [GByte/sec]
(1Byte = 8bit)
となる訳です。
さて、VRAMの速度についてお話ししてきましたが、メモリは容量の方が重要です。厳密にいうと、多すぎても無意味だが、足りないと露骨に動作を遅くするのがメモリですから、容量不足だけはどうしても防ぎたいのです。
ただ、基本的には、コア性能に見合った容量と帯域(転送速度)が確保されていますし、そもそもVRAMは増やすことはできませんから気にしても仕方がないのですが、同じGPUでも容量の異なるタイプがあったりしますので注意が必要です。
GeForce RTX 30シリーズでは、GeForce RTX 3080に12GBと10GBの2モデルが存在します。
GeForce RTX 4090のTDPは450Wで、補助電源は8pin x 3となっています。
PCI-Expressスロット(グラボの取付け口)からは75W、6pin補助電源からも75W、8pin補助電源からは150Wの電力供給が可能ですので、8pin x 2の場合の電力供給能力は、最大375W(75W + 150W x 2)ということになります。
また、新たに12VHPWER(12V High Power)と呼ばれる規格も登場しました。ハイエンドGPUなどの消費電力の大きなGPU向けで、最大600Wの電力供給が行えます。
同じGPUでも必要な補助電源の数や種類が異なることがあります。クロックを引き上げたOC(オーバークロック)モデルなどがそれに該当しますが、余力を持つということも含めて、電源はそれなりに余裕のある容量にしておく必要があります。
それから、もし補助電源プラグがない電源ユニットを使っているならば、余っている別の種類のプラグを6pinや8pinのプラグに変換できるケーブルも販売されていますので、調べてみると良いでしょう。
さて、ここからはNVIDIAのGPUアーキテクチャについて、お話しします。概要は、アーキテクチャでお話ししていますので、参照してみて下さい。
以下に、近年のアーキテクチャを記載しますが、プロセスルールについても理解しておいて頂ければと思います。
アーキテクチャ (読み方) | プロセス ルール | 採用シリーズ |
---|---|---|
Kepler (ケプラー) | 28nm | GeForce GTX / GT 600シリーズ GeForce GTX / GT 700シリーズ GeForce GTX TITANシリーズ |
Maxwell (マクスウェル) | 28nm | GeForce GTX 700シリーズ GeForce GTX 900シリーズ |
Pascal (パスカル) | 16nm /14nm | GeForce GTX 10シリーズ |
Turing (チューリング) | 12nm | GeForce RTX 20シリーズ GeForce GTX 16シリーズ |
Ampere (アンペア) | 8nm | GeForce RTX 30シリーズ |
Ada Lovelace (エイダラブレス) | 5nm | GeForce RTX 40シリーズ |
Keplerアーキテクチャは、GeForce 600シリーズ / 700シリーズと2世代に渡って使用されました。GeForce GTX TITANシリーズを合わせれば3世代となりますが、GTX TITANシリーズはGTX700シリーズのハイエンドシリーズ的な位置付けですので、少し特殊です。
また、次のMaxwellアーキテクチャもGeForce GTX 700シリーズとGeForce GTX 900シリーズで使用されましたが、実はMaxwellコアは第1世代と第2世代の2種類があって、第1世代MaxwellはGTX700シリーズの一部に、第2世代MaxwellはGTX900シリーズに使われていますので、同じアーキテクチャとはいいきれない部分があります。
次のPascalアーキテクチャは1シリーズ1アーキテクチャと分かりやすくなりましたが、その次のTuringアーキテクチャはGeForce RTX 20シリーズとGeForce GTX 16シリーズに再び分かれてしまったため、また少しややこしくなってしまいました。
そして、現在の最新アーキテクチャは2022年10月に登場したAda Lovelaceアーキテクチャで、GeForce RTX 40シリーズに使われています。
基本的なことは、開発コードネームでお話ししていますので、分からないことなどは、そちらを参照してみて下さい。
早速、直近3世代のデスクトップ向けGPUの開発コードネームとGPU名をまとめた表をご覧頂きたいと思います。
アーキテクチャ | 開発コードネーム | GPU名 |
---|---|---|
Ada Lovelace | AD102-300 | GeForce RTX 4090 |
AD103-300 | GeForce RTX 4080 | |
AD104-400 | GeForce RTX 4070 Ti | |
AD104-350 | GeForce RTX 4070 SUPER | |
AD104-250 | GeForce RTX 4070 | |
AD106-351 | GeForce RTX 4060 Ti 16GB | |
AD106-350 | GeForce RTX 4060 Ti 8GB | |
AD107-400 | GeForce RTX 4060 | |
アーキテクチャ | 開発コードネーム | GPU名 |
Ampare | GA102-300 | GeForce RTX 3090 |
GA102-225 | GeForce RTX 3080 Ti | |
GA102-202 GA102-200 | GeForce RTX 3080 | |
GA104-302 GA104-300 | GeForce RTX 3070 | |
GA104-202 GA104-200 | GeForce RTX 3060 Ti | |
GA106-302 GA106-300 | GeForce RTX 3060 | |
アーキテクチャ | 開発コードネーム | GPU名 |
Turing | TU102-400 | NVIDIA TITAN RTX |
TU102-300 | GeForce RTX 2080 Ti | |
TU104-450 | GeForce RTX 2080 SUPER | |
TU104-400 | GeForce RTX 2080 | |
TU104-410 | GeForce RTX 2070 SUPER | |
TU106-400 | GeForce RTX 2070 | |
TU106-410 | GeForce RTX 2060 SUPER | |
TU106-300 | GeForce RTX 2060 |
GeForce GTX 10シリーズまでの開発コードネームは、頭にG("Game"か"Graphics"か"GeForce"の頭文字?)、その次にアーキテクチャ名の頭文字が付いて、その後に3桁の数字が続くという形でした。
例えば、PascalアーキテクチャであればGPxxxという命名規則になっていたのです。
それがTuring世代ではGが外れてアーキテクチャ名から2文字を取る形式に変わったのですが、Ampere世代では以前のような形式となってGAxxxに、さらに次のAda Lovelace世代ではPascal同様再びADxxxという表記になっています。
次に、アルファベットの後の3桁の数字の意味についてですが、これも最上位桁の数字が世代を表しています。先程Maxwellアーキテクチャは2世代存在するとお話ししましたが、実際MaxwellコアにはGM1xxとGM2xxの2系統があるのです。
つまり、AD1xxやGA1xx、TU1xxはそれぞれAda Lovelaceアーキテクチャ、Ampereアーキテクチャ、Turingアーキテクチャの第1世代という意味になる訳です。
さらに、下2桁の数字でスペックの違いを表していますが、伝統的に数字の小さいものほど高性能になっています。
さて、これでアルファベット2文字 + 数字3文字の意味がお分かり頂けたかと思いますが、基本的にこの5文字が同じGPUは、全て同じチップを使っている双子、三つ子の関係にあることを覚えて帰って下さい。
実は、CPUやGPUなどは同じ半導体チップを使いながら、品質チェックの結果、求める水準を超えられなかったものなどは、特定の機能を削ることでスペックを落とされて異なるCPU / GPUとして販売されるのです。
この時、手が加えられず、スペックを落とされなかったチップをフルスペック版と呼んだりします。
ハイフン(-)以下の数字、文字列がその違いを表していますが(細かくいうとさらにバリエーションが存在します)、これまでは伝統的に400が付くものがフルスペックで、それ以下が制限版になってきました。
しかし、GeForce RTX 20シリーズのコードネームは非常に複雑になりました。いくつかのモデルはチップが2種類あったり、SUPERの付くモデルは1つ格上のチップを使っていたりと分かりにくくなっているのです。
とはいえ、結局はGPU名の数字の大きさがおおよその性能を表しているのは確かですから、コードネーム自体はそれほど気にする必要はないと思います。
また、仮想通貨のマイニング(採掘)にはGPUが使われますが、空前のマイニングブームにより一般向けのGPUが不足し、価格が高騰するという事態が生じました。
これに対しNVIDIAは、GPUのマイニング性能を落とすという策を取ることにしました。コードネームのハイフン以下の数字の末尾が0以外のモデルがそれで、これらはLite Hash Rate(LHR)モデルと呼ばれ、旧モデルを置き換える存在となります。
GeForceはゲーミング用途のブランドですから、少なくとも今後しばらくはマイニング性能に制限を掛けることになると思われます。