CPU内蔵GPU

最終更新日 : 2019/04/01

igpu

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GPU(Graphics Processing Unit: グラフィックスプロセッシングユニット)とは、グラフィック(画像)を専門に扱う演算装置で、画像データを処理してディスプレイに送るためのハードウェアです。

GPUは、設置される場所により、呼び名や性能が変わりますが、基本的な役割は全て同じです。

ここでは、CPU内に置かれるGPUについて、お話しします。

iGPUとdGPU

PCには、ディスプレイに映像データを出力するためのハードウェアが必ず備わっています。このハードが「GPU」ですが、GPUには大きく分けて2種類が存在します。

1つは、CPUの内部に置かれるGPUで「iGPU(integrated GPU)」といいます。「integrated(インテグレイテッド)」とは、「統合した」という意味ですので、「統合GPU」とも呼ばれます。

それに対し、専用の画像処理ハードウェアである「グラフィックボード」に載るGPUのことを「dGPU(discrete GPU)」と呼びます。「discrete(ディスクリート)」とは、「分離した、個別の」といった意味です。

ですので、グラフィックボードとGPUは別物なのですが、グラボの性能はGPUの性能でほぼ決まるということもあってか、両者を同じものとして扱うことが良くあります。当サイトでも、きっちりと分類する必要がない場合は、グラボのことをGPUと呼んでいます。


iGPUは、かつてはCPU内ではなく、マザーボード上やチップセット内にあったため「オンボードグラフィックス」などと呼ばれていました。そのため、ほぼ全てCPUに内蔵されるようになった現在でも、この名で呼ばれることがあります。

そんなiGPUですが、以前はディスプレイへの静止画像の表示が精一杯で、ゲームなどの高度で複雑な画像処理には全く歯が立ちませんでした。

しかし、近年のiGPU性能は、日進月歩の性能向上を続けていて、軽い3Dゲームなら難なくこなせてしまうほどの能力を有するまでになりました。とはいえ、まだまだ上位dGPUには性能面で遠く及びません(→ GPU(グラボ)比較&ランキング)。

それでも、上位iGPUは、ミドルクラスdGPUの手前まで進歩しているのです。ただ、上位iGPUは、高価なCPUにしか搭載されていないため、使用者をかなり選ぶ状況なのが残念なところです。


また、CPU内蔵GPUですので、開発はCPUメーカーである「Intel」と「AMD」が行っていて、それぞれの製品に搭載しています。IntelのiGPUブランド名は「Intel HD Graphics」、AMDのiGPUブランド名は「Radeon」です。

それぞれのブランドを詳しく見る前に「iGPUのメリットとデメリット」についてお話ししようと思います。

iGPUのメリットとデメリット

iGPUのメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • CPUの内部にあるため、(一部のハイスペックのものを除いて)導入コストが掛からない
  • 専用の拡張カード(グラボ)が必要ないため、消費電力と発熱が少なくて済む
  • 発熱が少ないがために、高性能な冷却装置が必要ない
  • 大掛かりな装置が不要なため、小型ケースでも運用が可能

一方、デメリットは2点が挙げられます。それは「性能が低いこと」と「メインメモリが奪われること」です。

前者の「性能が低いこと」こそが、iGPUの一番の問題点です。ゲームにおいては、画像処理が追いつかないことを避けたいがために、ハイスペックなGPUを追求するからです。

しかし、逆にいうと、iGPUで全く問題のないレベルのゲームをプレイするのであれば、dGPUを無理に導入する必要はありません。dGPUは、iGPUのメリットの逆の性質を持つ訳ですから、どうしてもPC全体が大型化しがちですが、これは多くの人にとってあまり歓迎すべきことではありません。

結局は「必要な性能を見極めること」が肝心な訳です。

さて、後者の「メインメモリが奪われること」に関しては、以下の「メモリ」の項目をご覧下さい。

メモリ

GPU徹底解説 のページでもお話ししていますが、iGPUは「VRAM(グラフィック用のメモリ)」をメインメモリから拝借します。

ということは、グラフィックボード用の高速な規格である「GDDR6」や「HBM2」が使えず、メインメモリに使われている規格になってしまうのです。

また、VRAMに容量を取られてしまったメインメモリは、その分目減りします。メインメモリの容量が少ない場合、これはかなりの痛手となってしまいます。

iGPUのメモリは、速度的にも容量的にもなかなか厳しいものがあるのです。

しかし、これらの制限を幾分和らげる方法がいくつか存在するのです。



デュアルチャネル

デュアルチャネルは、通常用途ではさほど有効とは限らないとお話ししましたが、iGPUを活用する場合は積極的に取り入れるべきです。

iGPUの性能にもよりますが、メインメモリを使うiGPUの場合は、「メモリ帯域(データ転送速度)」が「ボトルネック(制約)」になることが多いのです。それを解消するためには、デュアルチャネルはほぼ必須といっても良いかもしれません。

現在ハード的にデュアルチャネルに対応していないものは、ほぼありません。ですので、搭載メモリが1枚なのか2枚なのかをチェックして、多少のコスト増となるかもしれませんが、1枚であれば(8GBx1)、2枚構成(4GBx2)にした方が良いでしょう。



メモリ規格

メモリの速度に関しては、高速なタイプを使用することでアップさせることができます。

現在の主流は「DDR4 SDRAM」で、規格としては「DDR4-2666(PC4-21300またはPC4-21333)」や「DDR4-2400(PC4-19200)」などが主に使われていますが、ハイフン(-)以下の数字が大きいものほど一般的には高速です。ただし、高速なメモリほどその分値は張ります。

デュアルチャネル同様、マザーボードやチップセット、CPUなどにより使用可能なメモリの種類は制限を受けますが、しっかりと調べてできる限り高速なタイプを選択することがiGPUの性能を発揮させるのには重要です。



容量

容量に関しては、「メモリをたくさん積む」という非常にシンプルな結論になります。

特に、ゲームプレイを考えている場合は、近年はメモリの要求量が上がってきていますので、最低でも「8GB」は欲しいところですが、iGPUに取られることを考慮に入れると、「16GB」あっても良いかもしれません。




仮に上記の条件を上手くクリアしても、iGPUの能力自体が低いため、望み通りの性能が得られるとは限りません。特にゲーム以外の用途では、数字上は違いを見ることができたとしても、体感では全く分からない場合もあるでしょう。

また、高い負荷が掛かるゲームなどの用途では、違いを感じられるかもしれませんが、掛けたコストに見合うかどうかは分かりません。

あまり大きな期待を持つと失望感が大きくなりそうですが、数字上はほぼ確実にスペックアップしますので、無理のない範囲であれば、一考の価値ありと思います。

Intel HD Graphics

Intel製CPUのiGPU、「Intel HD Graphics(エイチディーグラフィックス)」ブランドについてです。

どのCPUにどのiGPUが搭載されているかはCPU比較&ランキングで、各GPUがどれくらいの性能なのかはGPU(グラボ)比較&ランキングでお話ししています。是非、ご覧下さい。

製品名

製品名の命名規則は、おおよそ以下のようになっています。「xxx」には「3桁」の数字が入りますが、「最上位桁」が「世代」を、「下2桁」が「相対的な性能」を表します。

性能名称
8000番台~7000番台~6000番台
最上位クラスIris Plus Graphics xxxIris Pro Graphics xxx
上位クラスIris Graphics xxx
通常クラスUHD Graphics xxxHD Graphics xxx

まず、「~番台」というのは、CPUの「名前に含まれる数字」を表しています。ご覧の通り、ここ数世代でブランド名が変わっています。

基本的には、「xxx」に入る数字が大きいほど性能も高いと見て良いのですが、「相対的な性能」の方が影響が大きいため、新世代の格下(HD 620)が旧世代の格上(HD 530)に及ばないことも少なくありません。


HDG(HD Graphics)は、代々上位クラスに「Iris(アイリス)」のブランドを用いてきました。以前は、Irisブランドもさらに細かく分かれていましたが、現在は「Iris Plus(アイリスプラス)」に統一されましたので、分かりやすくなったかと思います。


また、もっと以前のブランドでは、数字が4桁であったり、PentiumやCeleronなどの下位クラスCPUのiGPUは、数字が付かない単なる「HD Graphics」であったり、Irisの付くモデルは通常クラスよりも数字の最上位桁が1つ大きかったりと、今よりも種類や規則が豊富にありました。

ただ、数字の大きさでおおよその序列が把握できたのは今と同じでしたから、複雑というほどでもありませんでした。


ということで、まずは「名前が示す序列」について、覚えて帰って下さい。

EU

「EU(Execution Unit : 実行ユニット)」とは、簡単にいうと、HDG(HD Graphics)の「GPUコア」のことです。当然、数が多い方が高性能ということになります。

ただし、NVIDIAやAMDとは構造が異なるため、コア数の単純な比較には意味がありません。

また、HDGのGPUはクラス分けがされていて、下位のものから順に「GT1」、「GT2」、「GT3」というように名付けられ、分類されています(この分類は「Tier(段、層の意)」と呼ばれます)。このクラスが上位のものほど、コア数なども多いため、高性能となる訳です。


そして、「eDRAM」と呼ばれる「キャッシュメモリ」を備えたタイプも存在しますが、専用のメモリがある訳ですから、当然性能も高くなります。

eDRAM付きのタイプは、「GT3e」というように末尾に「e」が付いて区別されますが、これが前述の「Irisブランド」となるのです。


参考までに、「UHD Graphics 600番台」のラインアップとスペックを以下に挙げてみます。また、PC向け以外のタイプは除外していますので、ご了承下さい。

ブランドEU数Tier
Iris Plus Graphics 65548
(eDRAM:
128MB)
GT3e
Iris Graphics 63024GT2
Iris Graphics 620
HD Graphics 617
HD Graphics 615
HD Graphics 61012GT1

さて、コア数とともに性能に影響を与える「クロック周波数」についてですが、同じブランドでもCPUにより様々な数値に設定されているので、一概にはいえません。

できればクロック周波数の高いものが良いでしょうが、EU数の影響力に比べれば微々たるもので、おまけにiGPUの性能自体がそもそも低い訳ですから、クロックを気にする必要はないと思います。

Radeon

AMD製APUのiGPU、「Radeon」ブランドについてです。 基本的なことは、Radeonでお話ししていますので、分からない部分は適宜参照して頂ければと思います。

どのCPUにどのiGPUが搭載されているかはCPU比較&ランキングで、各GPUがどれくらいの性能なのかはGPU(グラボ)比較&ランキングでお話ししています。是非、ご覧下さい。

製品名

CPU/APUに「Ryzenブランド」が登場して以降、AMDのiGPUは「Raven Ridge世代」のAPUのみのラインアップですので、数自体は非常に少なくなっています。

また、その名称に関してですが、dGPU(グラフィックボード用のGPU)と同じく「Radeon RX Vega (x)グラフィックス」、または「Radeon Vega (x)グラフィックス」が使われています。

ただし、「RX」が付くのは「デスクトップ向けAPUの上位モデル」のみです。

そして、「(x)」には「1桁または2桁の数字」が入りますが、これは「コア」に関係しますので、次項でお話ししたいと思います。


それから、Ryzen登場前までのGPU(A-シリーズ)は、「Radeon Rx グラフィックス(xには数字が入る)」でしたが、もうほとんど見掛けることはないでしょう。

GPUコア

現在のRadeonのGPUコアの考え方は、少し特殊です。

Rxブランド登場の前まではSP数で表していたのですが、現在は「64基」のSPを1つにまとめて、1基の「コンピュートユニット(Compute Unit)」と呼び、これを1つのコアとして扱うようになったのです。

例えば、「デスクトップ向けAPU」の「Ryzen 5 2400G」のiGPU「Radeon RX Vega 11」は、「11基」のCUを持ち、そのSP数は、64 x 11 = 「704基」ということになります。