memory
メモリ(Memory)とは、データを一時的に記憶しておく装置のことです。主記憶装置、一次記憶装置とも呼ばれます。
ここでは、メモリの基本的な知識と選び方について、お話ししています。
メモリにおいて最も重要なのは容量です。実はCPUが処理できるデータは、メモリ上にあるデータだけなのです。つまり、CPUに処理させたいデータは、一度メモリに読み込まなければならないということです。
大量のデータを使用するソフトや多数のソフトを起動している場合、メモリに収めきれないことが多々あります。こういった場合、OSはスワップと呼ばれる方法で不足を回避するのですが、これはPCの挙動を遅くさせる一番の要因といっても過言ではありません。
さらに、一度スワップが起こると、以降の動作も全て同様に処理されるため、PCはずっと重いままです。 メモリ不足に陥らないように充分な容量を確保しておくことが、快適な環境の絶対条件の一つになる訳です。
メモリ容量というのは、多すぎてもあまり意味はありませんが、少ないと使用感に非常に大きな影響を及ぼすものだということを覚えて帰って下さい。
さて、容量などで良く見かけるGBという言葉についてお話ししておきましょう。まずGですが、これは10億を表す接頭辞であるGiga(ギガ)の頭文字です。
ギガのように10の乗数を表す接頭辞(SI接頭辞と呼ばれます)をいくつかご紹介します。
1,000倍ごとに接頭辞が変わります。1,000k = 1Mということです。上記4つはPC関連でよく使われるものですので、これを機に覚えて帰って下さい。ちなみに、kだけ小文字が使われているのは、他の接頭辞が定められる前にすでに小文字で使われていたからです。
続いて、GBのBについてですが、これはデータの大きさ、サイズを表す単位であるByte(バイト)の頭文字です。
データサイズを表す単位は、他にもbit(ビット)があります。どちらも頭文字がBですが、大文字のBがバイトを、小文字のbがビットを表すように決められています。つまり、4GBと4Gbは別物だということです。
また、1バイト = 8ビットですので、相互に変換が可能です。4Gb = 4,000Mb = 500MBとなります。
CPUにはメーカーやブランドがありましたが、メモリにも当然それらは存在します。
かつては、メモリとシステムとの間には相性というものがありました。それぞれに問題がある訳ではないのですが、組み合わせにより上手く動作しないということが良くあったのです。
その後、規格が厳密化されたことなどもあり、現在では相性問題に悩まされることはほぼなくなりました。ですので、メーカー名などは気にせずとも良いと思います。
メモリにおける最重要項目は容量とお話ししましたが、速度も軽んじることはできません。
とはいえ、規格による体感できるほどの速度差は、必ずしもあるとは限らないのです。この辺りは用途次第ということにもなるでしょうが、覚えて帰って下さればと思います。
メモリには、重要な規格が3つあります。1つはメモリそのものの規格、それから最大周波数を表すチップ規格、最後は最大転送速度を表すモジュール規格です。以下の表にまとめます。
メモリ規格 | チップ規格 | モジュール規格 | データ転送速度 |
---|---|---|---|
DDR4 SDRAM | DDR4-1600 | PC4-12800 | 12.8 GB/sec |
DDR4-1866 | PC4-14900 | 14.9 GB/sec | |
DDR4-2133 | PC4-17000 | 17 GB/sec | |
DDR4-2400 | PC4-19200 | 19.2 GB/sec | |
DDR4-2666 | PC4-21333 | 21.3 GB/sec | |
DDR4-2933 | PC4-23466 | 23.4 GB/sec | |
DDR4-3200 | PC4-25600 | 25.6 GB/sec | |
DDR5 SDRAM | DDR5-4000 | PC5-32000 | 32.0 GB/sec |
DDR5-4400 | PC5-35200 | 35.2 GB/sec | |
DDR5-4800 | PC5-38300 | 38.4 GB/sec | |
DDR5-5200 | PC5-41600 | 41.6 GB/sec | |
DDR5-5600 | PC5-44800 | 44.8 GB/sec | |
DDR5-6000 | PC5-48000 | 48.0 GB/sec | |
DDR5-6400 | PC5-51200 | 51.2 GB/sec |
※一部を抜粋したもので、この他にも規格はあります。
メモリ規格というのは、メモリの種類の違いといっても良いでしょう。DDRの後の数字が世代を表します。また、表にはありませんが、低電圧バージョンであるDDR4L SDRAMなどもあります。
メモリ規格にはそれぞれ固有の形状があるため、異なる規格同士には互換性はありません。DDR4対応のマザーボード(全てのハードが接続される基板)にDDR5メモリは取り付けることさえできないということです。
そして、各メモリ規格ごとに複数の別の規格が存在します。それが前述のチップ規格とモジュール規格ですが、前者はDDRの文字と世代を表す数字の後ろに動作周波数を、後者はPCと世代を表す数字の後ろにデータ転送速度を表記します。
どちらの表記が使われるかは場合によりますが、一般にチップ規格の数字を約8倍したものがモジュール規格の数字になりますので、覚えて帰って下さい。
注意点としては、メモリ規格が合えばマザーボードに取り付けることは可能ですが、実際に使えるかどうかはチップセットなどが対応しているかどうかも影響するということです。増設などを行わないのであれば、気にしなくても良いのですが、増設を考えている人はそのPCのメモリ規格を覚えておく必要があります。
また、これとは別にJEDEC規格と呼ばれるものが存在します。JEDECは半導体に関する技術の標準化を行う組織で、メモリの動作速度や形状などの規格の策定も行っていますが、この規格に従うことをJEDEC準拠といい、高い安定性、信頼性の証となっています。ちなみに、先ほどご紹介した一覧表にある規格は全てJEDECに準拠しています。
デュアルチャネル(Dual Channel)とは、同じ規格、容量のメモリを2枚1組で用いることにより、データの転送速度を倍にする技術のことです。
手軽に高速化できますので、おすすめなのですが、注意点もあります。
まず、マザーボードにメモリスロット(メモリの取り付け口)の数が1つしかなければ、当然2枚取り付けることは不可能ですので、デュアルチャネルもまた不可能となります。
また、メモリスロットが4つある場合などは、取り付ける場所が決まっていたりします。通常は、1つ目と3つ目のスロット、または2つ目と4つ目のスロットというように1つ飛ばしで取り付けます。
ペアにするメモリは、動作周波数などが異なっても普通に動作することもあるのですが、どういう問題が生じるか分かりませんので、大人しく全く同じメモリにしておくのが基本です。
そして、一番の問題は、体感できるほど高速化するとは限らない点です。
ベンチマークテストなどでチェックすれば、数字上はまず間違いなく速度アップするはずです。しかし、理屈の上ではシングルチャネルの2倍の速度ですが、それがそのままスコアに出ることはまずありません。あまり期待を抱きすぎるのは、やめておきましょう。
他にも3枚1組のトリプルチャネル(Triple Channel)や4枚1組のクアッドチャネル(Quad Channel)などがあり、それぞれシングルの3倍、4倍の速度を理論値として持ちますが、マザーボードやチップセット側が対応している必要があります。同じメモリを3枚、4枚差せば良い訳ではないことを覚えて帰って下さい。
ゲーミングPC向けを中心に、メモリの選び方について、お話ししたいと思います。
一般論としては、通常用途なら8GBが目安となるでしょう。これは、ウェブサイトの閲覧などがメインの場合です。
ミドルクラスゲーミングPCであれば16GBは欲しいところです。8GBでも無理ではないかもしれませんが、複数のソフトを起動するとカツカツになる可能性が高いと思われます。
そして、ハイスペックゲーミングPCでは32GBは積んでおきたいところです。もちろん、ハイスペックPCだからといって重いゲームをしなければならない訳ではありませんから、プレイするゲームによっては8GBでも充分な場合もあるとは思います。
しかし、ハイスペックを生かせるゲームとなると、ある程度重くなるのは必然ですから、やはり最低でも16GB、余裕を見ると32GBがセオリーです。
いずれにせよ、動作を遅くするスワップが起きないようにすることが重要ですから、容量的な余裕はあればあるほど安心です。無理のない範囲で積んでおきましょう。
メモリ速度は、メモリ規格に表されています。以下に、最新のメモリ規格DDR5 SDRAMの内、現在主流のタイプをいくつか記載します。
チップ規格 | モジュール規格 | データ転送速度 |
---|---|---|
DDR5-4800 | PC5-38300 | 38.4 GB/sec |
DDR5-5200 | PC5-41600 | 41.6 GB/sec |
DDR5-5600 | PC5-44800 | 44.8 GB/sec |
さて、データ転送速度についてですが、スペック上は1つ上の規格でも10%弱ほどの速度上昇に留まっています。これは、ベンチマークテストを行えば、数字として違いが表れるでしょうが、体感上は違いを感じることはほとんどないといって良いくらいの差です。
ただし、さらに上位の規格になると違いも見えてきますので、ハイスペックPCであれば、それなりに速いメモリを合わせたいところです。
また、CPU内蔵GPU(iGPU)を使う場合は、メモリ速度がボトルネックになることが多いため、高速なメモリを採用することをおすすめします。
これら以外の場合は、割高になる高速メモリを無理して用意する必要はないでしょう。
たった今メモリ速度を気にする必要はないとお話ししたところですが、メモリ速度に関しては1つだけ外せない条件があります。それは、先ほどお話ししたデュアルチャネルです。
もう充分に古い技術ですので、メモリスロットが1つしかないマザーボードを除いて、ほぼ全てデュアルチャネルに対応しているはずですので、積極的に狙っていきましょう。
また、これもつい先程お話ししたことですが、メモリ速度に難のあるiGPU(CPU内蔵GPU)を有効利用するのであれば、高速メモリとデュアルチャネルは、ほぼ必須といって良いでしょう。
とはいえ、iGPUの性能では、ゲーム用途にはまだまだ力不足ですから、ゲーミングPCには大人しくグラフィックボードを載せましょう。
ここでいうメモリ構成とは、何GBのメモリを何枚用いるかを表しています。
例えば8GBのメモリを搭載するとしても、8GB x 1なのか4GB x 2なのかで意味合いは大きく変わってきます。なぜなら後者ではデュアルチャネルが効くからです。
2枚構成にするだけで、メモリ速度が2倍になる訳ですから、是非ともデュアルチャネルを成立させておきたいところです。
また、不足を感じたら、メモリを増設するという考え方もあります。
これはこれで良いのですが、1つ注意点があります。
例えば、8GBで容量不足を感じた場合は、8GBのメモリを買い足して16GBにするのが通常ですが、最初にデュアルチャネル構成であった場合は4GB x 2という構成になっているはずです。
ということは、メモリスロット数やトリプルチャネルへの対応などの問題を抜きにして、8GBのメモリを追加すると4GB x 2 + 8GBといういびつな構成になってしまうのです。
これではデュアルチャネルが成立する部分が4GB x 2か4GB + 8GBの内の4GB分という形になってしまいます(どちらも計8GB分は成立します)。
逆に、最初に8GB x 1の構成であれば、今度は初期状態がシングルチャネルということになってしまうのです。
カスタマイズ不可のBTOパソコンなどでメモリ構成が決まっているのであれば、どうしようもないかもしれませんが、無駄なくデュアルチャネル化したいのであれば、最初から容量をしっかりと決めておいて、2枚構成にしておくべきだと思います。