radeon
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「AMD社」の「Radeon」のGPUの特徴といえば、発色の鮮明さが挙げられるでしょう。その点で、「映像の綺麗さ」を追求するならRadeonが良いというのが一般的な評価となっています。
ただし、「ドライバ(ハードを動かすためのソフトウェア)」がやや不安定な点と、独自技術の完成度があまり高くない点などが欠点といえるでしょう。
とはいえ、 GeForce のページでもお話しした通り、世代ごとGPUごとに出来は変わってくるので、メーカーだけで全てが判断できる訳ではありません。
ここでは、そんなRadeonブランドのGPUについて、お話ししようと思います。
それでは、実際の製品を例にスペックの見方についてお話ししましょう。
「Radeon RX 5700シリーズ」の最上位クラス、「Radeon RX 5700 XT」のスペックの一部を以下に挙げます。
GPU名 | Radeon RX 5700 XT |
---|---|
開発コードネーム (アーキテクチャ) | Navi (RDNA) |
コア | |
コア(SP)数 | 2560 |
RTコア数 | - |
Tensorコア数 | - |
ベースクロック | 1605 MHz |
ターボクロック | 1905 MHz |
ゲームクロック | 1755 MHz |
メモリ | |
VRAM | 8 GB |
タイプ | GDDR6 |
速度 | 14 Gbps |
バス幅 | 256 bit |
帯域 | 448 GB/s |
その他 | |
TDP | 225 W (8pin x 1, 6pin x 1) |
DirectX | 12 |
CrossFire | ○ (4-Way) |
データの基本的な見方については、 GPU(グラフィックボード) でお話ししていますので、参照してみて下さい。
また、Radeon / GeForceのGPU性能については、 GPU比較&ランキング で詳しく知ることができますので、是非チェックしてみて下さい!
「GPU名」は、ある規則に従って付けられています。名前を構成する文字列、数字の意味について、お話しします。
「Radeon(ラデオン、レイディオン)」は「AMD」社の「PC向け/個人向け」のGPUのブランド名です。
NVIDIAには「Quadro」というプロ向け、企業向けのGPUブランドがありましたが、AMDにも「FirePro(ファイアプロ)」という同じような方向性のブランドがあります。QuadroもFireProもDirectX向けには作られていませんので、ゲーム用途には不向きであることは覚えて帰って下さい。
「格」や「等級」を表す文字列です。
以前は「R + 数字」という表記がされていました。最高位が「R9」で、以下「R7」や「R5」、「R4」などというようにです。つまり、CPUやAPUのような「性能も表すブランド名」だった訳です。
それが、現在は「RX」で統一されるようになりました。
ちなみに、真偽のほどは分かりませんが、この「X」は「ローマ数字の"10"」を意味していて「R10」を表しているなどという説もあるようです。
GeForceでもそうでしたが、GPU名が持つ数字には、2つの意味が含まれています。 1つは「シリーズ」や「世代」で、もう1つは「相対的な性能」です。
数字 | シリーズ名 |
---|---|
300番台 | Radeon Rx 300シリーズ |
400番台 | Radeon RX 400シリーズ |
500番台 | Radeon RX 500シリーズ |
- | Radeon RX Vegaシリーズ |
- | Radeon VII |
5700番台 | Radeon RX 5700シリーズ |
5500番台 | Radeon RX 5500シリーズ |
最上位桁が同じGPUは、同じシリーズ、世代でくくられます。例えば、百の位が「5」ならば、「Radeon RX 500シリーズ」などと呼ばれる訳です。
現在はもうあまり見掛けなくなりましたが、「300番台」の数字を持つ「Radeon Rx 300シリーズ」は前項でお話しした「R + 数字」でブランドを表していた最後の世代になります。「x」が小文字なのは、数字が入ることを表しています。
その後の「400番台」と「500番台」は「最上位桁の数字」で世代を表し、「下2桁の数字」で「相対的な性能」を表していました。数字が大きいものほど、そのシリーズにおける性能も高いということです。以下に、おおざっぱな分類を挙げます。
数字 | スペック |
---|---|
x80以上 | ハイクラス |
x70、x60 | ミドルクラス |
x50以下 | ロークラス |
分類上は上記のようになりますが、率直にいって、GeForceのGPUに比べて性能的にやや劣るため、「ハイクラスRadeon」でも「ミドルクラスGeForce」程度の性能に留まることも多い点に注意が必要です。
さて、分かりやすい命名規則を持っていたRadeonでしたが、RX 500シリーズの次世代に当たる「Radeon RX Vegaシリーズ」からは、名前の付け方が目まぐるしく変わるようになってきました。
RX Vegaシリーズについては、この後の コア の項目で、お話しします。
「Radeon VII(セブン)」は、独特なGPUです。前世代RX Vegaシリーズの改良版といったGPUなのですが、1モデルしかないため、シリーズを構成していないのです。
名前に含まれる「VII」は プロセスルール が「7nm」であることが由来のようですが、「第2世代Vega」=「V(ega) II」という説もあるようです。真偽のほどは分かりませんが、後者はなかなか面白い話ではあると思います。
そして、最新世代は「5000番台」の数字を持つ「Radeon RX 5000シリーズ」ですが、現在のところ「5700」と「5500」の2系統が存在し、それぞれ「Radeon RX 5700シリーズ」、「Radeon RX 5500シリーズ」として個別に扱われることも多いようです。
「最上位桁」で「世代」、「上位2桁目」で「相対的な性能」を表していますので、「RX Vegaシリーズ」と「Radeon VII」を経て原点回帰を行ったようにも見えます。
しかし、「下2桁」は全てのモデルが「00」と活用されず、「RX 5700」の上位モデルに「RX 5700 XT」とサフィックス(接尾辞)を付ける形式にしている辺りに少し変化があります。
とはいえ、まだRX 5000シリーズ全体で5種類のGPUしかありませんので、これから数字も変わっていくのかもしれません。
NVIDIAのGPUコアは「CUDA(クーダ)コア」と呼ばれていますが、一般的には「シェイダープロセッサ(Shader Processor)」、あるいは「ストリームプロセッサ(Stream Processor)」などと呼ばれています(以下SP)。
AMDではSPのまま呼んでいましたが、近年は「64基」のSPを1つにまとめたものを「Compute Unit(コンピュートユニット)」、さらにそのCUを含めたいくつかの装置をまとめたものを「Shader Engine(シェイダーエンジン)」と呼び始めました。
各CUやSEごとに様々なハードウェアを割り当てて共有させることで「小さなGPU」のように扱い、GPU全体が「小さなGPUの複合体」となるような構造にしているのです。
さて、前項で「Radeon RX Vegaシリーズ」の数字について触れましたが、同シリーズの2つのモデル「Radeon RX Vega 64」と「Radeon RX Vega 56」の数字は、まさにこのCUの数を表しているのです。
RX Vega 64のSP数は「64 x 64 = 4096」で、RX Vega 56のSP数は「56 x 64 = 3584」ということです。
この方式は、Vega世代の「ノート向けGPU」でも使われていますので、覚えて帰って頂ければと思います。
「コアクロック」には、通常時の「ベース(定格)クロック」と負荷が掛かった時に自動で引き上げられた時の「ブーストクロック」の2種類があります。
GeForceのブーストクロックは引き上げが起きた際に「平均的に到達するクロック」を表しましたが、Radeonの場合は「最大クロック」を表しますので、ご注意下さい。
また、最新の「Radeon RX 5000シリーズ」からは「ゲームクロック」という概念が追加されましたが、これは「ゲームプレイ時の平均動作クロック」を意味します。
基本的なことは GPU(グラフィックボード) や GeForce の「VRAM」の項目でお話ししていますので、参照してみて下さい。
「Radeon RX 5700 XT」のVRAMには、「GDDR6」という規格のメモリが使われています。GDDR6は、現在のグラボのVRAMとしては、標準的な規格です。
しかし、前世代の「Radeon VII」や「Radeon RX Vega 64 / 56」などのVRAMには「HBM2(High Bandwidth Memory 2)」という規格が使われていました。
これは、その名の通り、速度は遅いのですが「メモリバス幅」が広いタイプで、全体として高速に動作するタイプのメモリです。
立体構造を取るため、面積を小さくできたり、また消費電力面でもメリットがありますので、できれば採用したいところなのですが、価格が高いため、一部のハイスペックGPUにしか使えないのが現状なのです。
「Radeon RX 5700 XT / 5700」は、基本的に「ミドルクラス」ですので、GDDR6で充分ということなのでしょう。
さて、RX 5700 XTの「メモリ帯域(データ転送速度)」は
14 x 256 [Gbit/sec]
= 3,584 [Gbit/sec]
= 448 [GByte/sec]
(1Byte = 8bit)
となります。
また、GPU用のメモリである「VRAM」には、GPUによって「通常容量」と「半減容量」の2つのタイプが混在するものもありますので、注意が必要です。
「RX 500 / 400シリーズ」は大半がこのタイプで、当然一般的には容量が大きい方が高価となります。購入する際には、しっかりと確認した方が良いでしょう。
「Radeon RX 5700 XT」の消費電力は「225W」で、必要な補助電源は「8pin x 1 + 6pin x 1」となっています。
供給可能な電力は、PCI-Expressスロットからは「75W」、6pin補助電源からは「75W」、8pin補助電源からは「150W」ですので、PCI-Expressスロットと8pin x 1と6pin x 1からの電力供給能力は合計で「300W(75W + 150W + 75W)」になります。
容量に関しては、メーカーがOC(オーバークロック: クロック周波数の上昇)を行っていたり、オリジナルクーラーを使用していたりするなど、独自の改良を行って消費電力が増加している場合や、また消費電力は常に一定ではないため、ある程度の余力も必要となりますので、大きめの容量を考えなければならないのです。
よって、GPU自体に定められた消費電力ではなく、グラフィックボードごとの消費電力を確認することが重要になります。
グラボは、メーカーや製品のコンセプトにより、冷却重視、静音重視、性能重視など様々なモデルが販売されていますので、良く調べて自分の目的に見合った製品を購入しましょう。
「CrossFire(クロスファイア)」とは、複数のグラフィックボードを協調させて、1枚のグラフィックボードとして扱う、AMD社の技術のことです。かつては、最後に「X」を付けた「CrossFireX(クロスファイアエックス)」と呼ばれたこともありますが、現在はCrossFireが正式なようです。
NVIDIA社も同様の技術を持っていて、そちらは「SLI(Scalable Link Interface : エスエルアイ)」や「NVLink SLI」などと呼ばれています。
SLIは構築の条件がなかなか厳しいのですが、現在のCFは比較的楽に組めるようになっています。詳細には触れませんが、最近のグラボであれば、同じGPUのグラボをマザーボードに取り付けて、新しめのドライバにするだけでほぼOKです。NVIDIAのような「グラボ同士を直接繋ぐケーブル」などは、必要ありません。
また、表中には「4-Way」とありますが、これは最大で「4枚」のグラボを協調させられることを意味します。
ただし、ハード面の問題をクリアしたとしても、ソフトが対応していなければ、全く性能が発揮されないこともあるなど、SLI / CFはなかなかに「クセがすごい」技術です。
とはいえ、しっかりと条件を満たしていれば、枚数倍の性能とまではいきませんが、それに近い性能が引き出せることもあるようです。
最初からSLI構成のPCが売られていたりもしますので、最高スペックを目指したい人は、調べてみるのも良いかもしれません。
さて、ここからはAMDのGPUアーキテクチャについて、お話しします。概要は、 アーキテクチャ でお話ししていますので、参照してみて下さい。
以下に、近年のアーキテクチャを記載します。
マクロ アーキテクチャ (読み方) | コア アーキテクチャ | プロセス ルール | 採用世代 |
---|---|---|---|
Polaris (ポラリス) |
第4世代GCN | 14nm | Radeon RX 400シリーズ Radeon RX 500シリーズ |
Vega (ヴェガ) |
第5世代GCN | Radeon RX Vegaシリーズ | |
7nm | Radeon VII | ||
Navi (ナヴィ) |
第1世代RDNA | Radeon RX 5700シリーズ Radeon RX 5500シリーズ |
現在は「Radeon RX 5700シリーズ」が採用している「Naviアーキテクチャ」の時代です。また、 プロセスルール についても理解しておいて頂ければと思います。
AMD GPUのアーキテクチャは少しややこしいため、まずはこの点について、お話ししたいと思います。
いわゆるアーキテクチャとは、表中でいう「コアアーキテクチャ」が該当しますが、CPUでもGPUでもコアのアーキテクチャは正式には「マイクロアーキテクチャ」と呼ばれます。
「GCN」とは、「Graphics Core Next(グラフィックスコアネクスト)」の頭文字を取った言葉です。改良が重ねられ、最新のGCNは「第5世代」です。
また、GCNは初代を「GCN 1.0」としていましたので、第5世代であれば「GCN 1.4」というような表記をすることもあります。ただ、近年は「第X世代GCN」という呼び方の方がメインのようです。
それに対し、「マクロアーキテクチャ」とは、マイクロアーキテクチャの1つ上のくくりで、コアなどが載る「チップ」に対するアーキテクチャというような意味です。「Radeon RX 400シリーズ」の「Polarisマクロアーキテクチャ」から採用されました。
ただし、一般的には、これらを厳密に区別する必要もありませんので、Polarisを単にアーキテクチャと呼ぶことの方が多いようです。
さて、Polarisマクロアーキテクチャは、RX 400シリーズの次の「Radeon RX 500シリーズ」でも引き続き採用されました。というよりは、RX 500シリーズはRX 400シリーズの「プチ改良世代」ですので、スペックも性能もほぼ同じだったのです。
しかし、その次の「Vegaマクロアーキテクチャ」は、GCNアーキテクチャも世代が1つ進んで進化を見せましたが、何より大きな違いは「ハイエンドモデル」が登場したことにあります。
実は、Polaris時代のGPUは全て「ミドルクラス」で、「ハイスペック」に属するはずの「RX 590」でさえもスペック的にはミドル級だったのです。
逆に、Vega時代はミドル以下のGPUがありませんから、この2世代(3シリーズ)は「合わせて1世代」のようなところがあるかもしれません。
その後、プロセスルールが「7nm」に微細化された「Radeon VII(7)」が登場しましたが、プロセスルール以外の基本的な部分は、「RX Vegaシリーズ」と変わりありません。
そして、「2019年7月」に「Radeon RX 5700シリーズ」が発売されました。
マクロアーキテクチャは「Navi」といいますが、この世代からマクロアーキテクチャという言葉があまり使われなくなって、単にアーキテクチャや開発コードネームといった呼び方になった印象です。
とはいえ、意味合いが変わった訳ではありませんから、特に気にする必要もないと思います。
Naviの特徴は、「ゲーム向け」のGPUという点にあるでしょう。これは、ゲーム向けに開発された新マイクロアーキテクチャ「RDNA(Radeon DNA)」がもたらした特徴です。
前アーキテクチャ「GCN(Graphics Core Next)」は「GPGPU(GPUをCPUのように汎用的に扱う技術)向け」に開発されたコアでした。よって、GPUの性能としては高いものの、ゲーム性能があまり伸びず、同じくゲームをメインターゲットとしているライバル「Nvidia」の「GeForceブランド」に勝てなかったのです。
Naviはゲーム寄りにシフトしたため、GPGPU向けの性能はGCNに比べてダウンしているのですが、一般ユーザーにとって高性能GPUを必要とする用途の大半はゲームですから、Naviの路線変更はメリットといって良いかと思います。
実際、RX 5700シリーズはSP数から見ると「ミドルクラス」ですが、充分過ぎるほどのゲーミングパフォーマンスを見せています。
また、もうじき「Radeon RX 5500シリーズ」がお目見えしますが、これはその名の通り、RX 5700シリーズの下位クラスに相当するシリーズとなります。
基本的なことは、 開発コードネーム でお話ししていますので、分からないことなどは、そちらを参照してみて下さい。
以下に、ここ数世代のGPUの「アーキテクチャ」と「開発コードネーム」と「GPU名」を挙げますが、データが錯綜しているため、正確性はあまりない点にご注意下さい。
アーキテクチャ | 開発コードネーム | GPU名 |
---|---|---|
Polaris (第4世代GCN) | Polaris 10 XT | Radeon RX 480 |
Polaris 10 PRO | Radeon RX 470 | |
Polaris 11 | Radeon RX 460 | |
Polaris 20 XTX | Radeon RX 580 | |
Polaris 20 XL | Radeon RX 570 | |
Polaris 21 | Radeon RX 560 | |
Polaris 12 | Radeon RX 550 | |
Polaris 30 XT | Radeon RX 590 | |
Vega (第5世代GCN) | Vega 10 XT | Radeon RX Vega 64 |
Vega 10 XTX | Radeon RX Vega 56 | |
Vega 20 | Radeon VII | |
Navi (第1世代RDNA) | Navi 10 XT | Radeon RX 5700 XT |
Navi 10 XL (Pro) | Radeon RX 5700 |
現在のAMD製GPUの開発コードネームは、「マクロアーキテクチャ + 数字(+ 文字列)」で構成されます。
詳細は分かりませんが、表を見る限りでは、「数字」の「10の位」が「世代」を表しているようです。また、「1の位の数字」が小さいほどハイスペックですから、これが「相対的な性能」を意味していそうです。
この辺りは、NVIDIAの命名規則と良く似ているといえるでしょう。ということは、「マクロアーキテクチャ + 数字」が同じGPUは、全て同じチップを使っている「双子、三つ子」の関係にあると見て良いと思います。
実は、CPUやGPUなどは、同じ半導体チップを使いながら、品質チェックの結果、求める水準を超えられなかったものは、特定の機能を削ることでスペックを落とされて、異なるCPU / GPUとして販売されているのです。
この時、手が加えられず、スペックを落とされなかったチップを「フルスペック版」と呼んだりします。
それから、最後の文字列は「格」を表しているようです。数字まで同じGPU(同じチップ)の序列をはっきりさせるためのものでしょう。正確なものかは分かりませんが、伝統的に「XTX > XT > XL (またはPRO) > 無印」という序列となっているようです。