AMDはRyzen CPUで有名な企業ですが、Radeon(レイディオン)というGPUブランドも手掛けています。
ライバルのNVIDIA GeForceは非常に優れたGPUメーカーですが、Radeonにも強みがありますので、選ぶ価値は充分にあるといえるでしょう。
ここでは、そんなRadeonのGPUについて、お話ししています。
GPUに関係する用語や概念は難しく、ここでお話ししていることも特に初心者には理解しがたい部分があるかと思います。
そういった人たちのために、基本となる知識や型番の意味などを含むスペックの見方などをGPU(グラフィックボード)で詳しく分かりやすく解説しています。ここでお話ししていることの前提となる知識ばかりですので、是非ご一読ください。
ここでは、Radeonを世代ごとに分けて解説します。
各世代ごとの解説に入る前に、世代を構成する重要なパラメータとなるシリーズ名やアーキテクチャ、コードネームをまとめてみたいと思います。
シリーズ名 | 発売年月 | コードネーム | アーキテクチャ |
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Radeon RX Vegaシリーズ | 2017/08 | Vega (ヴェガ) | 第5世代GCN |
Radeon VII | 2019/02 | ||
Radeon RX 5000シリーズ | 2019/07 | Navi (ナヴィ) | RDNA |
Radeon RX 6000シリーズ | 2020/11 | Navi 2x | RDNA 2 |
Radeon RX 7000シリーズ | 2022/12 | Navi 3x | RDNA 3 |
下のものほど新しい世代となっています。
それでは、これらを個別に詳しく見ていきましょう。
GCN(Graphics Core Next)アーキテクチャ最後の世代がコードネームでVegaと名付けられたRadeon RX VegaシリーズとRadeon VII(レイディオンセブン)です。
前者がVega 10コア、後者がVega 20コアを採用していますので、Radeon VII(レイディオンセブン)は第2世代Vegaになる訳ですが、1モデルしかないため、シリーズを構成していないという非常に珍しい世代になります。
また、名前に含まれる「VII」はプロセスルールが7nmであることが由来のようですが、第2世代Vega = V(ega) IIという説もあるようです。真偽のほどは分かりませんが、後者はなかなか面白い話ではあると思います。
GPU (コードネーム) | コア数 | コアクロック [GHz] | VRAM | TDP (補助電源) |
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定格 | 最大 | 容量 | 規格 | 帯域 | |||
RX Vega 64 (Vega 10 XT) | 4096 | 1247 | 1546 | 8 GB | HBM2 | 484 GB/sec | 295 W (8p x2) |
RX Vega 56 (Vega 10 XL) | 3584 | 1156 | 1471 | 410 GB/sec | 210 W (8p x2) |
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Radeon VII (Vega 20) | 3840 | 1400 | 1800 | 16 GB | HBM2 | 1024 GB/sec | 300 W (8p x2) |
2019年7月に登場したRadeon RX 5000シリーズは新アーキテクチャRDNA(Radeon DNA)を採用した最初の世代です。
Radeon RX 5000シリーズの特徴はゲーム向けのGPUという点にあります。
前アーキテクチャのGCNはGPGPU(GPUをCPUのように汎用的に扱う技術)を意識して作られたコアでした。よって、GPU性能は高いものの、ゲーム性能があまり伸びず、ゲームにも強いライバルNVIDIA GeForceに勝てなかったのです。
そこでAMDは新たにゲーム向けのアーキテクチャを開発しました。それがRDNAなのです。
よって、Radeon RX 5000シリーズはGPGPU向けの性能はGCNに比べてダウンしているのですが、ゲーミング性能は格段に上がりました。一般ユーザーにとって高性能GPUを必要とする用途といえば、ほぼゲームといっても過言ではありませんから、ゲーム向けへの路線変更はメリットといって良いでしょう。
実際、Radeon RX 5000シリーズはコア数から見るとミドルクラスですが、充分過ぎるほどのゲーミングパフォーマンスを見せています。
GPU (コードネーム) | コア数 | コアクロック [GHz] | VRAM | TDP (補助電源) |
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定格 | 最大 | 容量 | 規格 | 帯域 | |||
RX 5700 XT (Navi 10 XT) | 2560 | 1605 | 1905 | 8 GB | GDDR6 | 448 GB/sec | 225 W (8p + 6p) |
RX 5700 (Navi 10 XT) | 2304 | 1465 | 1725 | 180 W (8p + 6p) |
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RX 5600 XT (Navi 10 XLE) | 1130 | 1560 | 6 GB | 288 GB/sec | 150 W (8p) |
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RX 5500 XT (Navi 14 XTX) | 1408 | 1607 | 1845 | 8 GB 4 GB | 224 GB/sec | 130 W (8p) |
2020年11月に登場したのが、開発コード名Navi 2xのRadeon RX 6000シリーズです。Navi 2xの正式な読み方は分かりませんが、おそらくツーエックスで良いと思います。また、ちなみにですが、以前はNavi 2xではなくBig Naviと呼ばれていました。
マイクロアーキテクチャは前世代のRDNAを一歩進めたRDNA 2で、全体的なパフォーマンスも順当に進化したのですが、何よりも大きいのはこの世代はハイクラスを含むという点です。
Radeon RX 5000シリーズの最高スペックGPUがRadeon RX 5700 XTだったのに対して、Radeon RX 6000シリーズの内、最初に発表された3つのGPUは、Radeon RX 6900 XT、Radeon RX 6800 XT、Radeon RX 6800で、特にRadeon RX 6900 XTに関してはRadeon RX 590以来の9の数字を持つハイエンドモデルとなったのです。
また、その性能もライバルNVIDIA GeForceの対抗ブランドに迫るなど、もはやゲームはGeForceという常識は崩れ去ろうとしているといっても過言ではないでしょう。
GPU (コードネーム) | コア数 | コアクロック [GHz] | VRAM | TDP (補助電源) |
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定格 | 最大 | 容量 | 規格 | 帯域 | |||
RX 6950 XT (Navi 21 KXTX) | 5120 | 1860 | 2310 | 16 GB | GDDR6 | 576 GB/sec | 335 W (8p x2) |
RX 6900 XT (Navi 21 XTX) | 1825 | 2250 | 512 GB/sec | 300 W (8p x2) |
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RX 6800 XT (Navi 21 XT) | 4608 | ||||||
RX 6800 (Navi 21 XL) | 3840 | 1700 | 2105 | 250 W (8p x2) |
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RX 6750 XT (Navi 22 KXT) | 2560 | 2150 | 2600 | 12 GB | 432 GB/sec | 250 W (8p + 6p) |
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RX 6700 XT (Navi 22 XT) | 2321 | 2581 | 384 GB/sec | 230 W (8p + 6p) |
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RX 6700 (Navi 22 XTL) | 2304 | 1941 | 2450 | 10 GB | 320 GB/sec | 175 W (8p) |
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RX 6650 XT (Navi 23 KXT) | 2048 | 2055 | 2635 | 8 GB | 280.3 GB/sec | 176 W (8p) |
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RX 6600 XT (Navi 23 XT) | 1968 | 2589 | 256 GB/sec | 160 W (8p) |
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RX 6600 (Navi 23 XL) | 1792 | 1626 | 2491 | 224 GB/sec | 132 W (8p) |
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RX 6500 XT (Navi 24 XT) | 1024 | 2310 | 2815 | 4 GB | 143.9 GB/sec | 107 W (6p) |
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RX 6400 (Navi 24 XL) | 768 | 1923 | 2321 | 128 GB/sec | 53 W |
2022年12月、コードネームでNavi 3xと名付けられたRadeon RX 7000シリーズが登場しました。名称に関しては、前世代から数字が1つずつ増えただけですので、分かりやすいかと思います。
これまでとの大きな違いは、チップ構造にあります。AMDのGPUは、1つのダイ(チップ)にコアやメモリなどを全て詰め込んでいましたが、この世代からはコアとメモリを別のダイに分離してそれらを1つにパッケージ化するという構造を取るようになったのです。この構造のことをチップレットと呼びますが、これにより、製造コストを大幅に減らすことが可能になったとのことです。
GPU (コードネーム) | コア数 | コアクロック [GHz] | VRAM | TDP (補助電源) |
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定格 | 最大 | 容量 | 規格 | 帯域 | |||
RX 7900 XTX (Navi 31 XTX) | 6144 | 1855 | 2499 | 24 GB | GDDR6 | 960 GB/sec | 355 W (8p x2) |
RX 7900 XT (Navi 31 XT) | 5376 | 1500 | 2394 | 20 GB | 800 GB/sec | 300 W (8p x2) |
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RX 7800 XT (Navi 32 XT) | 3840 | 1295 | 2430 | 16 GB | 620.8 GB/sec | 263 W (8p x2) |
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RX 7700 XT (Navi 32 XL) | 3456 | 1700 | 2544 | 12 GB | 432 GB/sec | 245 W (8p x2) |
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RX 7600 (Navi 33 XL) | 2048 | 1720 | 2655 | 8 GB | 288 GB/sec | 165 W (8p) |