AMD CPU

最終更新日 : 2023/07/01
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PC向けCPUの二大巨頭といえばIntelAMDですが、AMDは近年、ライバルに大きく差を付けられていました。

AMDは、CPUとGPU(グラフィックチップ)の両方を手掛けるメーカーで、iGPU(CPU内蔵GPU)の評価は元から高かったのですが、CPUの方はあまり芳しくなかったのが実状でした。

しかし、満を持して投入した新ブランドは、Intelとの差を一気に縮めるほど強力なもので、CPU業界はかつての華やかな開発競争の時代の再来に盛り上がりを見せています。

ここでは、そんなAMDのCPUについて、お話ししようと思います。

AMDプロセッサーの用語解説

ここではAMDのプロセッサーに関係する様々な名称や用語についてお話しします。

ただし、世代アーキテクチャコードネームなどに関しては、以下のページで解説していますので、是非ご一読ください。

CPUとAPU

プログラムを処理する装置のことをCPU(Central Processing Unit)といいますが、AMDではiGPU(内蔵グラフィックス)の有無によって呼び方を変えています。iGPUを含まないものをCPU、含むものをAPU(Accelerated Processing Unit)と呼んで区別しているのです。

さらに、CPUには通常デスクトップ向けノート向けがありますので、デスクトップ向けCPU / APUノート向けCPU / APUの4種類に分類できることになりますが、AMDのプロセッサーにはノート向けCPUは存在しません

ノートPCはスペースの関係上dGPU(グラフィックボード)の設置が難しくなります。よって、ノート向けはdGPUが不要なAPUに全て任せるというのがAMDの考えなのでしょう。

ただ、近年はiGPUを持つCPUが登場するなど、CPUとAPUの壁は徐々に崩れてきています。とはいえ、CPUに搭載されているiGPUは非常に低性能ですので、パワーにより区別する方針なのかもしれません。

モデルナンバーが持つ意味

AMDはプロセッサーの型番のことをモデルナンバーと呼んでいます。モデルナンバーは意味のあるアルファベットと数字で構成されています。実在のCPURyzen 9 7950Xを例にモデルナンバーの意味についてお話しします。

ブランド名世代相対性能サフィックス
Ryzen 97950X

Ryzen(ライゼン)AMDの現在のPC向けCPUの主力ブランドの名前です。これは後ろに続く数字によってさらに細かく分類され、現在はRyzen 9Ryzen 7Ryzen 5Ryzen 3の4つのブランドが存在します。数字が大きいほど上位ブランドとなります。

また、Intelも同様の命名規則を持っていますが、AMDが後から合わせに行った形となっています。


続く4桁の数字の最上位桁世代を表します。基本的には、新世代のCPUが登場するごとにこの数字が1つずつ上がっていきます。


4桁の数字の下3桁相対的な性能を表しています。数字が大きいほど高性能ですが、どちらかというと格を表すといった方が的確かもしれません。

また、百の位の数字はブランドにより使われる数字が決まっています。

ブランド名数字
Ryzen 99
Ryzen 78, 7
Ryzen 56, 5
Ryzen 34, 3, 2, 1

Ryzen 7ならばRyzen 7 x8xxRyzen x7xxといった形になるということです。


最後のサフィックス(接尾辞)についてですが、これはモデルナンバーの最後に付くアルファベットで、製品のコンセプトを表すものです。

サフィックスコンセプト
デスクトップ向けCPU
X高性能
3D大容量キャッシュメモリ
デスクトップ向けAPU
G全モデル共通
E低消費電力
ノート向けAPU
Xオーバークロック対応
Hハイパフォーマンス
(ゲーミングPC向け)
HS
U低消費電力 (薄型ノート向け)

CPU / APU、デスクトップ向け / ノート向けで、それぞれ使われるサフィックスは異なります。

まず、デスクトップ向けCPUについてですが、基本は何も付かない無印で、Xが付くものは消費電力の高い高性能モデルになります。

3Dは厳密にいうとサフィックスとは呼べないかもしれません。これはキャッシュメモリというCPUの内部にあるメモリが大容量化されたモデルで、ゲームなど一部の用途で非常に高い効果を発揮します。


次にデスクトップ向けAPUについてですが、G全てのモデルに付くサフィックスです。つまり、モデルナンバーにGがあるかないかでデスクトップ向けAPUであるかどうかが判別できるという訳です。

E低消費電力を意味するサフィックスですが、全モデルにGが付いていますので、実際にはGEという表記になります。


最後にノート向けAPUについてです。

Xオーバークロックに対応しているモデルに付きます。

HHSゲーミングPCに使われるようなハイパワーなモデルであることを表しています。

U低消費電力を意味しますが、ノートPCにはバッテリーの持ちが良く発熱も少ない低消費電力モデルは非常に有益です。




以上がモデルナンバーを構成するアルファベットや数字のおおよその意味になりますが、世代によって使われる文字や意味が異なる場合もありますので、注意が必要です。

世代別の解説とCPU / APU一覧

Ryzen 7000シリーズ・デスクトップCPU

Ryzen 6000シリーズ・ノートAPU

発売年月2022/01
シリーズ名AMD Ryzen 6000 シリーズ
・モバイル・プロセッサー
コアアーキテクチャZen 3+
GPUコアアーキテクチャRDNA 2
開発コードネームRembrandt
プロセスルール6nm
対応メモリDDR5-4800
LPDDR5-6400
PCIe4.0

コアアーキテクチャの名前がZen 3+(ゼンスリープラス)であることからも分かる通り、Ryzen 6000シリーズ・ノートAPU世代は比較的小規模な変更に留まる世代といえます。ただ、iGPU(内蔵GPU)のコアアーキテクチャがGCNからRDNA 2に更新されましたので、グラフィック面は大きく進化しました。

また、消費電力の改善に力を入れた世代でもあり、特に消費電力当たりのパフォーマンスの高さAMDはアピールしています。



CPU名C/TクロックTDPiGPU
Ryzen 9 6980HX8/163.3/5.045WRadeon
680M
Ryzen 9 6980HS35W
Ryzen 9 6900HX3.3/4.945W
Ryzen 9 6900HS35W
Ryzen 7 6800H3.2/4.745W
Ryzen 7 6800HS35W
Ryzen 7 6800U2.7/4.715-28W
Ryzen 5 6600H6/123.3/4.545WRadeon
660M
Ryzen 5 6600HS35W
Ryzen 5 6600U2.9/4.515-28W

サフィックス (末尾のアルファベット)
H45Wハイパフォーマンス
(ゲーミングPC向け)
HS35W
U15 - 28W低消費電力 (薄型ノート向け)
X-オーバークロック対応
  • C/Tは、コア数 / スレッド数を表しています。
  • クロックは、定格クロック / ブーストクロックを表しています。


TDPとサフィックスについては、非常に分かりやすくなっています。この世代ではHゲーミング向けなどのハイパフォーマンスを、U薄型ノート向けなどの低消費電力をコンセプトにしています。

ただ、HにはTDP45WHと、35WHSの2種類があって、これら以外の数字やスペックが同じ兄弟のようなモデルが存在しています。つまり、45Wモデルとその低消費電力版の35Wモデルがペアとして存在するということです。また、45WのHも上位モデルはオーバークロックに対応したHXになっていますので、OCを考えている人はこちらを選ぶ必要があります。

Ryzen 5000シリーズ・デスクトップAPU

発売年月2021/08
シリーズ名AMD Ryzen 5000 G シリーズ
・デスクトップ・プロセッサー
コアアーキテクチャZen 3
GPUコアアーキテクチャGCN (Vega)
開発コードネームCezanne
プロセスルール7nm
ソケットSocket AM4
対応チップセットAMD 500シリーズ
AMD 400シリーズ
AMD 300シリーズ
対応メモリDDR4-3200
PCIe3.0

躍進を遂げたZen 3アーキテクチャのコアを採用していますので、Ryzen 5000シリーズ世代のAPUも前世代から性能を大きく伸ばしてきました。

デスクトップAPUは伝統的にデスクトップCPUの下位クラスを担う役割を与えられてきましたが、この世代でもそれは変わっていません。

しかし、後にRyzen 5000シリーズ・デスクトップCPU自身に下位クラスが追加されたり、この世代にRyzen 5 5500というiGPU(内蔵GPU)を持たないAPUが追加されたりとデスクトップAPUの位置付けが少しずつ変わってきているような印象です。



CPU名C/TクロックTDPiGPU
Ryzen 7 5700G8/163.8/4.665WRadeon
Graphics 8
Ryzen 7 5700GE3.2/4.635W
Ryzen 5 5600G6/123.9/4.465WRadeon
Graphics 7
Ryzen 5 5600GE3.4/4.435W
Ryzen 5 55003.6/4.265W-

サフィックス (末尾のアルファベット)
G65WデスクトップAPU
E35W低消費電力
  • C/Tは、コア数 / スレッド数を表しています。
  • クロックは、定格クロック / ブーストクロックを表しています。


デスクトップAPUの命名規則は非常にシンプルです。まず、全てのデスクトップAPUにGが付きます。そして、低消費電力モデルにはさらにEが付きます

また、先ほどもお話ししましたが、2022年4月にiGPUを持たないRyzen 5 5500が新たに仲間に加わりましたので、APUとCPUの決定的な違いがこれにより崩れたことになります。

Ryzen 5000 シリーズ・ノートAPU

発売年月2021/01
シリーズ名AMD Ryzen 5000 シリーズ
・モバイル・プロセッサー
コアアーキテクチャZen 3
GPUコアアーキテクチャGCN (Vega)
開発コードネームCezanne
Lucienne (Zen 2)
プロセスルール7nm
対応メモリDDR4-3200
LPDDR4X-4266
PCIe3.0

シングルスレッド性能が大きく向上したZen 3アーキテクチャを初めて採用したのが、ノートAPUのRyzen 5000 シリーズ・ノートAPUです。他にも様々な改善がなされているため、トータルの性能も前世代であるRyzen 4000 シリーズ・ノートAPUから大きくパワーアップしました。

ただ、GPUコアアーキテクチャは前世代と同じGCNベースのVega(ヴェガ)ですので、それほど大きな差はありません。


また、この世代は少し複雑な構成となっています。実はRyzen 5000 シリーズ・ノートAPUと同日にRyzen 4000 シリーズ・ノートAPU世代と同じZen 2アーキテクチャで作られた、コードネームでLucienne(リュシエンヌ)と呼ばれる3つのAPUも発売になっているのです。

つまり、LucienneRyzen 5000 シリーズ・ノートAPUの仲間ながらベースは1世代前で、さらに多少の改良も施されていますので、いわば第3.5世代といった立ち位置になるということです。ご注意下さい。



Cezanne
CPU名C/TクロックTDPiGPU
Ryzen 9 5980HX8/163.3/4.845+WRadeon
Graphics 8
Ryzen 9 5980HS3.0/4.835W
Ryzen 9 5900HX3.3/4.645+W
Ryzen 9 5900HS3.0/4.635W
Ryzen 7 5800H3.2/4.445W
Ryzen 7 5800HS2.8/4.435W
Ryzen 7 5800U1.9/4.415W
Ryzen 5 5600H6/123.3/4.245WRadeon
Graphics 7
Ryzen 5 5600HS3.0/4.235W
Ryzen 5 5600U2.3/4.215W
Ryzen 3 5400U4/82.6/4.0Radeon
Graphics 6

Lucienne
CPU名C/TクロックTDPiGPU
Ryzen 7 5700U8/161.8/4.315WRadeon
Graphics 8
Ryzen 5 5500U6/122.1/4.0Radeon
Graphics 7
Ryzen 3 5300U4/82.6/3.8Radeon
Graphics 6

サフィックス (末尾のアルファベット)
HX45+Wハイパフォーマンス
+オーバークロック対応
H45Wハイパフォーマンス
HS35W
U15W低消費電力
  • C/Tは、コア数 / スレッド数を表しています。
  • クロックは、定格クロック / ブーストクロックを表しています。


TDPとサフィックスについては、比較的分かりやすい関係といえるでしょう。基本的にはH高性能なハイパフォーマンスを、U低消費電力を意味しています。

ただ、Hには上位クラスで使われているTDP45W以上HXと、ミドルクラス以下で使われる45WHがあって、これらとモデルナンバーの数字が同じで低消費電力版のようなポジションにある35WHS計3種類が存在します。

つまり、45W+モデル、あるいは45Wモデルとその低消費電力版の35Wモデルがペアとして存在するということですが、35WはノートAPUとしては高めのTDPですので、性能差はそれほどありません。


また、先ほどお話ししたコアアーキテクチャの異なるLucienne世代のCPUとは、Ryzen 7 5700URyzen 5 5500URyzen 3 5300U3つのCPUのことです。

表からも分かるかと思いますが、CezanneにはLucienneとは百の位の数字が1つだけ大きい良く似たモデルがありますので、注意が必要です。

Ryzen 5000シリーズ・デスクトップCPU

発売年月2020/11
2022/04
シリーズ名AMD Ryzen 5000 シリーズ
・デスクトップ・プロセッサー
コアアーキテクチャZen 3
GPUコアアーキテクチャ-
開発コードネームVermeer
プロセスルール7nm
ソケット (デスクトップ)Socket AM4
対応チップセットAMD 500シリーズ
AMD 400シリーズ
AMD 300シリーズ
対応メモリDDR4-3200
PCIe4.0

マルチスレッド性能では定評のあったAMDでしたが、Ryzen 5000シリーズ・デスクトップCPUによって、ついにシングルスレッド性能でもライバルIntel(第10世代Core)に勝利を収めました。

Ryzen 5000シリーズ・デスクトップCPU2020年11月に登場しましたが、当初はRyzen 9 5950XRyzen 9 5900XRyzen 7 5800XRyzen 5 5600X4モデルのみという寂しいラインアップでした。しかし、そのどれもがそれぞれの価格、性能帯でライバルを圧倒した訳ですから、まさに少数精鋭と呼ぶに相応しい布陣だったいえるでしょう。


その後、1年半ほどの時を経て、新たな仲間が加わりました。Ryzen 7 5800X3DRyzen 7 5700XRyzen 5 5600Ryzen 5 55004モデルです。

中でも注目を集めたのはRyzen 7 5800X3Dです。このCPUはRyzen 7 5800Xよりも少しクロック周波数が下げられたため、各種ベンチマークテストで遅れを取るデータを多く見かけます。しかし、AMDはこのCPUを最高のゲーミングCPUとアピールしているのです。

その理由は3D V-Cacheと呼ばれる縦に積まれたL3キャッシュメモリにあります。Ryzen 7 5800X3Dはこの技術を使って、Ryzen 7 5800X3倍に当たる96MBもの大容量L3キャッシュを備えているのです。そのため、キャッシュが良く効くソフトにおけるRyzen 7 5800X3Dは、スペック以上のパフォーマンスを発揮することになるという訳です。しかも、ハイスペックCPUにしては消費電力が比較的低いため、ワットパフォーマンス(電力効率)にも定評があります。

とはいえ、そのポテンシャルを遺憾なく発揮できるソフトはあまり多くはありませんので、過度の期待は禁物です。



CPU名C/TクロックTDPiGPU
Ryzen 9 5950X16/323.4/4.9105W-
Ryzen 9 5900X12/243.7/4.8
Ryzen 7 5800X3D8/163.4/4.5
Ryzen 7 5800X3.8/4.7
Ryzen 7 5700X3.4/4.665W
Ryzen 5 5600X6/123.7/4.6
Ryzen 5 56003.5/4.4
Ryzen 5 55003.6/4.2

サフィックス (末尾のアルファベット)
X高性能
無印通常モデル
  • C/Tは、コア数 / スレッド数を表しています。
  • クロックは、定格クロック / ブーストクロックを表しています。

技術

SenseMIテクノロジー

AMD SenseMIテクノロジー とは、CPUの電圧や温度、クロック周波数などに関する技術の総称です。代表的な機能には、以下のようなものがあります。


Pure Power

負荷があまり掛かっていない時に、消費電力を下げつつもパフォーマンスは下げないという、効率的な働きを行う機能です。

Precision Boost

負荷に応じて、リアルタイムでクロックを上げ下げする機能です。IntelTurbo Boostと似たような機能ですが、TBは100MHz単位で、こちらは25MHz単位で動作するため、より細かい制御が可能になります。

AMDはかつてTBに相当する機能をTurbo CORE(ターボコア)と呼んでいましたが、現在はPrecision Boostに置き換わったようです。

Extended Frequency Range(XFR)

直訳すると拡張周波数帯域となります。しっかりとした冷却システムで充分に冷やされていれば、最大クロックの枠を超えて、さらなるブーストが掛かる機能です。



これらだけではありませんが、以上が主な機能となります。

CPUの性能はクロック周波数に比例し、クロックは電力や熱と比例するため、性能を発揮するにはこれらの管理が非常に重要になりますが、AMD SenseMIテクノロジーとは、まさにその管理の中核を担う技術の集まりなのです。