AMD CPU

最終更新日 : 2023/10/20
レッドストーン
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PC向けCPUの二大巨頭といえばIntelAMDですが、AMDは近年、ライバルに大きく差を付けられていました。

AMDは、CPUとGPU(グラフィックチップ)の両方を手掛けるメーカーで、iGPU(CPU内蔵GPU)の評価は元から高かったのですが、CPUの方はあまり芳しくなかったのが実状でした。

しかし、満を持して投入した新ブランドは、Intelとの差を一気に縮めるほど強力なもので、CPU業界はかつての華やかな開発競争の時代の再来に盛り上がりを見せています。

ここでは、そんなAMDのCPUについて、お話ししようと思います。

AMDプロセッサーの用語解説

ここではAMDのプロセッサーに関係する様々な名称や用語についてお話しします。

CPUとAPU

プログラムを処理する装置のことをCPU(Central Processing Unit)といいますが、AMDではiGPU(内蔵グラフィックス)の有無によって呼び方を変えています。iGPUを含まないものをCPU、含むものをAPU(Accelerated Processing Unit)と呼んで区別しているのです。

さらに、CPUには通常デスクトップ向けノート向けがありますので、デスクトップ向けCPU / APUノート向けCPU / APUの4種類に分類できることになりますが、AMDのプロセッサーにはノート向けCPUは存在しません

ノートPCはスペースの関係上dGPU(グラフィックボード)の設置が難しくなります。よって、ノート向けはdGPUが不要なAPUに全て任せるというのがAMDの考えなのでしょう。

ただ、近年はiGPUを持つCPUが登場するなど、CPUとAPUの壁は徐々に崩れてきています。とはいえ、CPUに搭載されているiGPUは非常に低性能ですので、パワーにより区別する方針なのかもしれません。

世代別解説

AMD CPUのアーキテクチャと開発コードネーム

アーキテクチャ(Architecture)とは設計を意味する言葉ですので、その優劣というのは性能に非常に大きな影響を与えます。

コードネーム(Code Name)とは製品の開発時に付けられる名前のことです。こちらは性能には直結しませんが、製品や世代が語られる時に頻繁に出てきますので、覚えておいて損はしないでしょう。

これらの詳細については以下のページでお話ししていますので、是非ご一読ください。


さて、AMDのアーキテクチャとコードネームに関してですが、まずは直近数世代のアーキテクチャとコードネームの一覧表を以下に示します。

CPUタイプコードネームCPU
コア
GPU
コア
発売年月
Ryzen 7000シリーズ
デスクCPURaphaelZen 4RDNA 22022/09
ノートAPUDragon RangeZen 4RDNA 22023/02
PhoenixRDNA 32023/03
Rembrandt-RZen 3+RDNA 22023/01
Barcelo-RZen 3GCN
Mendocino Zen 2RDNA 22022/09
Ryzen 6000シリーズ
ノートAPURembrandtZen 3+RDNA 22022/01
Ryzen 5000シリーズ
デスクCPUVermeerZen 3-2020/11
デスクAPUCezanneGCN2021/08
ノートAPU2021/01
ノートAPULucienneZen 2
BarceloZen 32022/01
Ryzen 4000シリーズ
デスクAPURenoirZen 2GCN2020/07
ノートAPU2020/01
Ryzen 3000シリーズ
デスクCPUMatisseZen 2-2019/07
デスクAPUPicassoZen+GCN2019/07
ノートAPU2019/01
Ryzen 2000シリーズ
デスクCPUPinnacle RidgeZen+-2018/04
デスクAPURaven RidgeZenGCN2018/02
ノートAPU2017/10
Ryzen 1000シリーズ
デスクCPUSummit RidgeZen-2017/03

個別に見ていきます。

Ryzen 7000シリーズ

発売年月2022/09
2023/01
2023/02
2023/04
コアアーキテクチャZen 4
開発コードネームRaphael (デスク)
Dragon Range (ノート)
Phoenix (ノート)
Rembrant-R (ノート)
Barcelo-R (ノート)
Mendocino (ノート)
対応チップセットAMD 600シリーズ
プロセスルール5nm

現在の最新世代がRyzen 7000シリーズですが、採用されているZen 4Zen系アーキテクチャの第6世代となります。

この世代でもやはりAMDはややこしいことを行っています。それはノートAPUのラインアップが4世代のCPUコア、3世代のGPUコアで構成され、それぞれがシリーズを成すのに加えて、命名規則も大きく変えてきたのです。

それぞれのシリーズにコンセプトがありますので悪いとまではいいませんが、一般の人のみならずそれなりに詳しい人にとっても分かりにくいですから、どうにかして欲しいというのが率直な感想です。

Ryzen 6000シリーズ

発売年月2022/01
コアアーキテクチャZen 3+
GPUコアアーキテクチャRDNA 2
開発コードネームRembrandt
プロセスルール6nm

Ryzen 6000シリーズノートAPUだけの世代です。

コアアーキテクチャの名前がZen 3+(ゼンスリープラス)であることからも分かる通り、Ryzen 6000シリーズは比較的小規模な変更に留まる世代といえます。ただ、iGPU(内蔵GPU)のコアアーキテクチャがGCNからRDNA 2に更新されましたので、グラフィック面は大きく進化しました。

また、消費電力の改善にも力を入れていて、特に消費電力当たりのパフォーマンスの高さAMDはアピールしています。

Ryzen 5000シリーズ

発売年月2021/08
コアアーキテクチャZen 3
GPUコアアーキテクチャGCN (Vega)
開発コードネームCezanne
プロセスルール7nm

躍進を遂げたZen 3アーキテクチャのコアを採用していますので、Ryzen 5000シリーズのAPUも前世代から性能を大きく伸ばしてきました。

デスクトップAPUは伝統的にデスクトップCPUの下位クラスを担う役割を与えられてきましたが、Ryzen 5000シリーズでもそれは変わっていません。

しかし、後にRyzen 5000シリーズ・デスクトップCPU自身に下位クラスが追加されたり、この世代にRyzen 5 5500というiGPU(内蔵GPU)を持たないAPUが追加されたりとデスクトップAPUの位置付けが少しずつ変わってきているような印象です。

Ryzen 4000シリーズデスクトップCPUがスルーされたため、Ryzen 2000シリーズで生じた数字のずれが解消されることとなりました。ただ、これがねじれ解消のための意図的な措置なのかは分かりません。

いずれにせよ、これでシリーズ名とアーキテクチャの不一致は一応なくなった訳ですが、新たなややこしさが生じてしまいました。

Ryzen 4000シリーズ・ノートAPUCezanne2021年1月に発売になりましたが、これと同じ日にLucienneと呼ばれるノート向けAPUも発売になったのです。

実はこのLucienneCezanneZen 2で作ったものなのです。つまり、コアだけが前世代なCezanneという訳です。

LucienneRyzen 4000シリーズとしなかったり、ラインアップがCezanneと被っていたりと、率直にいってLucienneの存在意義は良く分かりません。


さらに、その1年後2022年1月にはBarceloが発売になりましたが、こちらはCezanneを置き換えるものです。アーキテクチャも同じですので、BarceloほぼCezanneと考えて良いでしょう。

Ryzen 4000シリーズ

デスクトップCPUがラインアップに入らなかったため、APUだけの世代となりました。

Ryzen 3000シリーズ

Ryzen 2000シリーズと似たような構図です。目立つ変化は開発コードネームの方針が地名から画家の名前になったことくらいでしょうか。

Ryzen 1000シリーズ、2000シリーズ

Ryzen 1000シリーズ・デスクトップCPU2017年3月に登場しました。アーキテクチャはZenで、以降これを改良しながら発展を遂げていくことになります。

同年10月Ryzen初のAPUとなるRyzen 2000シリーズ・ノートAPUが登場しますが、これがややこしさを生み出してしまいます。どういう意図かは分かりませんが、第1世代となるZenアーキテクチャであるにもかかわらず、第2世代を意味する2000番台の数字を与えてしまったのです。

また、これに合わせるような形で翌2018年2月発売のRyzen 2000シリーズ・デスクトップAPUZenアーキテクチャのままとなりましたが、ここでは別の厄介な事態が生じます。

Ryzen 2000シリーズ・デスクトップAPUをこの2か月後に発売となるRyzen 2000シリーズ・デスクトップCPUの下位クラスという位置付けにしたのです。これによりCPUには下位クラス(Ryzen 3)がなく、APUには上位クラス(Ryzen 7)がないという形になりました。

こうしてRyzen 2000シリーズZenの改良型アーキテクチャとなるZen+を採用したデスクトップCPUと旧世代アーキテクチャのデスクトップ / ノートAPUが混在することとなったのです。

技術

SenseMIテクノロジー

AMD SenseMIテクノロジー とは、CPUの電圧や温度、クロック周波数などに関する技術の総称です。代表的な機能には、以下のようなものがあります。


Pure Power

負荷があまり掛かっていない時に、消費電力を下げつつもパフォーマンスは下げないという、効率的な働きを行う機能です。

Precision Boost

負荷に応じて、リアルタイムでクロックを上げ下げする機能です。IntelTurbo Boostと似たような機能ですが、TBは100MHz単位で、こちらは25MHz単位で動作するため、より細かい制御が可能になります。

AMDはかつてTBに相当する機能をTurbo CORE(ターボコア)と呼んでいましたが、現在はPrecision Boostに置き換わったようです。

Extended Frequency Range(XFR)

直訳すると拡張周波数帯域となります。しっかりとした冷却システムで充分に冷やされていれば、最大クロックの枠を超えて、さらなるブーストが掛かる機能です。



これらだけではありませんが、以上が主な機能となります。

CPUの性能はクロック周波数に比例し、クロックは電力や熱と比例するため、性能を発揮するにはこれらの管理が非常に重要になりますが、AMD SenseMIテクノロジーとは、まさにその管理の中核を担う技術の集まりなのです。