ゲーミングPCにおいて、CPUはGPUに次いで重要なパーツです。ゆえに、その選び方は慎重かつ大胆でなければなりません。
とはいえ、目的や目標がある程度はっきりしていれば、選び方自体はそれほど難しくはありませんので、過度に恐れる必要もありません。
ここではゲーミングPC向けCPU選びのセオリーと最新おすすめCPUについて、お話しします。
早速ゲーミングPC向けのおすすめCPUをランキング形式で挙げていきますが、その前に選び方のポイントをいくつか列挙してみようと思います。詳しい解説や根拠などは後述のゲーミングPC向けCPUの選び方でお話ししていますので、興味のある人はご一読下さい。
以上を踏まえた上で、現在のおすすめゲーミングCPUのランキングをスペックごとに挙げると、以下のようになります。
順位 | ハイエンド (RTX 4070 Ti以上) | ハイクラス (RTX 3070以上) | ミドルクラス |
---|---|---|---|
1位 | Ryzen 7 7800X3D | Ryzen 7 7800X3D | Core i5-14600K |
2位 | Core i9-14900K | Core i7-14700K | Ryzen 5 7600X |
3位 | Core i7-14700K | Core i5-14600K | Core i5-14500 |
ハイエンドにおけるおすすめCPUの1位は、Ryzen 7 7800X3Dです。圧倒的な性能もさることながら、異常なまでのワットパフォーマンス(電力効率)の高さに良好なコスパと主要な要素はどれもぶっちぎりですので、文句なしに現在のナンバー1ゲーミングCPUです。
2位は性能を優先してCore i9-14900Kとしましたが、ワッパもコスパもRyzen 7 7800X3Dには完敗していますので、小さくはない差があるといわざるを得ません。
ただ、Ryzen 7 7800X3DにはないCore i9-14900Kの強みもあります。それはコア数の多さです。Ryzen 7 7800X3Dの8コアに対してCore i9-14900KはPコア8 + Eコア16の計24コアですから、ゲーム以外の用途も含めるならばCore i9-14900Kの方がおすすめになります。
また、コア数でいうならばRyzen 9 7950X3D / 7900X3Dもアリですが、価格が高くコスパ面で見劣りするため、ここではランク外としています。とはいえ、性能的にはトップクラスですので低発熱の多コアを求めるのであれば、悪くはない選択肢といえるでしょう。
逆にCore i7-14700Kはハイエンド級に合わせるには性能面で少し不安がありますが、コスパに優れますので3位としました。Core i7-Kはいつの時代もゲーミングCPUの王道です。
ハイクラスにおけるおすすめCPUの1位もRyzen 7 7800X3Dです。性能もワットパフォーマンス(電力効率)もずば抜けていますので、それなりに高いCPU性能が欲しいこのクラスでもRyzen 7 7800X3Dは鉄板といっても良いでしょう。
ただ、このレベル帯ではやや価格が高い点がマイナスポイントといえるかもしれません。
Core i7-14700Kはハイクラスであれば性能に不安はありませんので2位という評価です。このクラスでのCore i9やRyzen 9は余裕という意味では良いのですが、ややオーバースペック気味ですので、コスパを重視したCore i7やRyzen 7の方がバランス的には良いと思います。
ハイクラスの3位は、ミドルクラスのCPUながらゲーミングパフォーマンスの高さとコスパの良さからCore i5-14600Kを選びました。Pコア数は6とやや不安のある数字ですが、Eコアが8個ありますので、大抵の用途では不足はないでしょう。
とはいえ、あくまでもコスパを重視しての話ですので、予算に問題がなければCore i7やRyzen 7の方が安心ではあります。
ミドルクラスにおけるおすすめCPUの1位は、Core i5-14600Kです。必要十分以上の性能はもちろんのこと、このクラスにしては充分なコア数(Pコア6 + Eコア8の計14コア)もありますので、少し抜けた存在といっても良いでしょう。
ただ、その分価格が高めである点とK付きCPUという点が気になるところではあります。後者に関しては問題があるという訳ではありません。ただ、オーバークロックを行うにはK付きCPU + Z系列チップセットが条件になりますが、Z系列チップセットは本来ハイクラス向けでやや価格も高いので、ミドルクラスCPUとは少しバランスが悪いのです。
もちろん、無理にOCに対応する必要もありませんから、非対応のH系列チップセットやB系列チップセットでも構わないのですが、これだとせっかくのK付きがもったいないところに悩ましさがあります。もう少し頑張ってCore i7-K + Z系列チップセットにしておいた方が満足度は高いかもしれません。
ミドルクラスの2位はRyzen 5 7600Xです。絶対性能でもコア数でもライバルのCore i5-14600Kとは少し差がありますが、価格の安さからこの順位にしました。
Core i5-14600Kと比べると分が悪いとはいえ、このレベル帯では充分なスペックですので、良い選択肢となるはずです。
ミドルクラスの3位は、Core i5-14500です。ミドルクラスの定番といえばCore i5-Non K(無印)ですが、第13世代、第14世代のCore i5は少し癖のある構成となっていますので注意が必要です。
第14世代Core i5-Non Kは現在Core i5-14600、Core i5-14500、Core i5-14400、Core i5-14400Fなどがラインアップされていますが、Core i5-14400(F)はEコア数が4個で他は8個なのです。そのため、小さくはない差が付いてしまっています。
よって、どの世代でも人気の高いCore i5-xx400(F)も第13世代と第14世代だけはCore i5-xx500以上をおすすめします。
まずはCore i9-14900KSの性能を100とした場合の各CPUの相対的な性能を数値化(%)したデータをご覧下さい。12個のゲームで計測した平均フレームレートの平均値から算出したもので、4K(2160p)、WQHD(1440p)、FHD(1080p)の3種類の解像度で測定されています。また、GPUにはGeForce RTX 4090を使用しています。
CPU | 4K | WQHD | FHD |
---|---|---|---|
第14世代Core (2023/10, 2024/01, 03) | |||
Core i9-14900KS | 100 | 100 | 100 |
Core i9-14900K | 99.7 | 99.4 | 98.8 |
Core i7-14700K | 98.7 | 96.6 | 95.8 |
Core i5-14600K | 97.0 | 92.1 | 90.4 |
第13世代Core (2022/10, 2023/01) | |||
Core i9-13900K | 99.3 | 98.3 | 97.5 |
Core i7-13700K | 98.4 | 95.4 | 94.6 |
Core i5-13600K | 96.4 | 91.1 | 89.0 |
Core i5-13400F | 89.8 | 78.4 | 73.9 |
第6世代Ryzen (2022/09, 2023/01, 02, 04) | |||
Ryzen 9 7950X3D | 98.4 | 96.2 | 98.0 |
Ryzen 9 7950X | 94.2 | 88.1 | 87.3 |
Ryzen 9 7900X | 94.1 | 88.3 | 86.9 |
Ryzen 9 7900 | 93.0 | 85.3 | 83.9 |
Ryzen 7 7800X3D | 99.3 | 101.4 | 104.2 |
Ryzen 7 7700X | 94.6 | 88.9 | 87.8 |
Ryzen 7 7700 | 94.0 | 88.0 | 86.7 |
Ryzen 5 7600X | 93.9 | 87.7 | 86.2 |
Ryzen 5 7600 | 92.7 | 86.1 | 84.4 |
第12世代Core (2021/11, 2022/01, 04) | |||
Core i9-12900K | 96.0 | 89.0 | 86.5 |
Core i7-12700K | 94.2 | 86.3 | 83.0 |
Core i5-12600K | 92.2 | 82.1 | 78.5 |
Core i5-12600 | 91.1 | 79.7 | 75.8 |
Core i5-12400F | 88.5 | 76.5 | 72.3 |
Core i3-12300 | 84.8 | 71.4 | 66.1 |
Core i3-12100F | 83.6 | 69.8 | 64.1 |
第11世代Core (2021/03) | |||
Core i9-11900K | 83.9 | 72.2 | 67.1 |
Core i7-11700K | 82.8 | 70.8 | 65.6 |
Core i5-11600K | 81.0 | 68.0 | 62.9 |
Core i5-11400F | 74.4 | 59.4 | 54.8 |
第4世代Ryzen (2020/11, 2022/04) | |||
Ryzen 9 5950X | 88.3 | 77.2 | 73.6 |
Ryzen 9 5900X | 88.0 | 76.8 | 73.1 |
Ryzen 7 5800X3D | 94.4 | 87.5 | 85.3 |
Ryzen 7 5800X | 87.0 | 75.8 | 72.1 |
Ryzen 7 5700X | 86.3 | 74.9 | 71.4 |
Ryzen 5 5600X | 85.9 | 74.3 | 70.6 |
Ryzen 5 5600 | 85.3 | 73.3 | 69.5 |
Ryzen 7 5700G | 78.2 | 65.3 | 60.5 |
第3世代Ryzen (2019/07, 09, 2020/02, 05, 07) | |||
Ryzen 9 3900X | 77.4 | 63.3 | 58.2 |
Ryzen 7 3700X | 77.5 | 63.1 | 58.1 |
Ryzen 5 3600 | 75.6 | 61.2 | 56.1 |
Ryzen 3 3300X | 74.4 | 59.7 | 54.9 |
続いて、上記と同種ながら少し古いバージョンのデータをご覧頂きます。こちらはCore i9-13900Kの性能を100とした場合のデータで、GPUにGeForce RTX 3080を使用しています。
CPU | 4K | WQHD | FHD |
---|---|---|---|
第13世代Core (2022/10) | |||
Core i9-13900K | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
Core i7-13700K | 99.7 | 99.4 | 98.9 |
Core i5-13600K | 99.5 | 98.8 | 97.5 |
第6世代Ryzen (2022/09) | |||
Ryzen 9 7950X | 98.9 | 94.8 | 92.1 |
Ryzen 9 7900X | 98.5 | 94.5 | 91.5 |
Ryzen 7 7700X | 98.7 | 95.2 | 92.1 |
Ryzen 7 7700 | 98.6 | 95.0 | 91.3 |
Ryzen 5 7600X | 98.6 | 94.1 | 89.9 |
Ryzen 5 7600 | 98.2 | 93.2 | 88.3 |
第12世代Core (2021/11) | |||
Core i9-12900K | 100.0 | 98.1 | 96.0 |
Core i7-12700K | 99.7 | 97.0 | 94.1 |
Core i5-12600K | 99.3 | 94.7 | 90.6 |
Core i5-12600 | 99.1 | 93.3 | 87.3 |
Core i5-12400F | 98.7 | 90.1 | 84.1 |
Core i3-12300 | 98.2 | 87.8 | 79.9 |
Core i3-12100 | 97.9 | 87.1 | 78.5 |
第11世代Core (2021/03) | |||
Core i9-11900K | 96.4 | 88.0 | 82.4 |
Core i5-11600K | 95.1 | 84.4 | 78.1 |
Core i5-11400F | 93.6 | 80.8 | 71.7 |
第4世代Ryzen (2020/11) | |||
Ryzen 9 5950X | 98.2 | 91.0 | 85.1 |
Ryzen 9 5900X | 98.0 | 90.6 | 84.4 |
Ryzen 7 5800X3D | 99.0 | 94.2 | 88.6 |
Ryzen 7 5800X | 97.7 | 89.6 | 83.0 |
Ryzen 7 5700X | 97.4 | 88.3 | 81.3 |
Ryzen 5 5600X | 97.0 | 86.1 | 79.2 |
Ryzen 5 5600 | 96.5 | 85.1 | 78.0 |
Ryzen 7 5700G | 93.9 | 82.1 | 74.8 |
第3世代Ryzen (2019/07) | |||
Ryzen 9 3900X | 96.3 | 82.1 | 74.3 |
Ryzen 7 3700X | 96.5 | 82.4 | 74.1 |
Ryzen 5 3600X | 94.9 | 79.9 | 71.7 |
これらのデータを中心にゲーミングPCのCPU選びにおいて重要なポイントをお話ししていきます。
最高値と最低値の差を解像度ごとに見ると、1つ目のデータが4K: 25.6、WQHD: 42、FHD: 49.4、2つ目のデータが4K: 6.4、WQHD: 20.1、FHD: 28.3となっていますが、どちらも解像度が低いほどその差が大きくなっていることが分かります。
これは解像度が低いほどフレームレートが高くなることが原因です。
1つのフレームを生成するのにかかる時間は、単純にいうとCPUの処理時間 + GPUの処理時間です。グラフィック品質が上がると、どちらの仕事量も増えるためフレームレートは下がりますが、一般的にGPUの仕事量の増加分の方がより大きくなります。
つまり、解像度が高くなるほどGPUにかかる負荷がより大きくなって、相対的にCPUの影響力は小さくなるということです。
これはいい換えると、フレームレートが高い(グラフィック負荷が軽い)ほどCPUパワーが必要になるということでもあります。よって、FPSのようなフレームレートの重要度が高いゲームでは、CPUにもこだわる必要があるのです。
最高値と最低値の差は、1つ目のデータが4K: 25.6、WQHD: 42、FHD: 49.4、2つ目のデータが4K: 6.4、WQHD: 20.1、FHD: 28.3でしたが、前者の方がどの解像度でも数値が高くなっています。前者の方が性能の低いCPUのフレームレートの落ち込みが大きいということです。
これにはGPUの性能が関係しています。
使用されたGPUは、1つ目のデータがGeForce RTX 4090で2つ目のデータがGeForce RTX 3080ですが、前者は後者の1.5倍以上高い性能を持っています。
解像度が高いほどCPUの影響力は小さくなるでお話しした通り、フレームレートが高い(グラフィック負荷が軽い)ほどCPUパワーが必要となりますが、フレームレートはGPU性能に比例します。
つまり、GPUの性能が高くなればなるほどフレームレートが上がるため、CPUがボトルネックになりやすいということです。
ここでもう1つデータをご覧頂こうと思います。25のゲームで計測したフレームレートの平均値(FHD)のデータですが、こちらは先の2つのデータとは異なりGPUごとのテストになります。
データは2つあって、使用されているCPUが異なります。左側がRyzen 7 5800Xで右側がCore i9-13900Kですが、どちらも測定したゲームの種類と数が同じで、基本的な条件も非常に似ているため、CPUの違いをある程度正確に示したデータといって良さそうです。
GPU | Ryzen 7 5800X | Core i9- 13900K |
---|---|---|
RTX 4090 | 215.5 | 279.1 |
RX 7900 XTX | - | 251.7 |
RTX 4080 | 201.7 | 250.9 |
RX 7900 XT | - | 228.6 |
RTX 4070 Ti | - | 219.9 |
RTX 3080 | 158.0 | 178.7 |
RTX 3070 Ti | 140.3 | 153.8 |
RTX 3070 | 134.5 | - |
RX 6700 XT | 130.8 | - |
RTX 3060 Ti | 121.1 | - |
RX 6600 XT | 106.9 | - |
RTX 3060 | 94.8 | - |
RTX 3050 | 69.2 | - |
GTX 1660 SUPER | 66.1 | - |
RX 6500 XT | 47.6 | - |
格上のCore i9-13900Kの方がRyzen 7 5800Xよりも高い数値を示していますが、やはりGPUの性能が高いほどCPUによる差は大きくなっています。
GeForce RTX 3070 TiではCPUの違いにより10%ほどの差が付いていますが、これは1つ上のクラスのGeForce RTX 3080との差に近くなっています。別のいい方をするならば、CPUによりGPUのランクが1つ2つ変わることもあるということです。
右側のデータは下位GPUのデータがありませんので、正確なところは分かりませんが、GeForce RTX 3060 Tiなどのアッパーミドルクラス(上位ミドルクラス)以上のGPUはCPUにもある程度はこだわる必要があるといえそうです。
逆にミドルクラス以下であれば、それほどCPUにこだわる必要はありませんが、CPUは全体の挙動に影響を及ぼすことや多少なりともフレームレートを下げてしまうことを考えると、やはりそれなりのパワーを備えておくことが重要です。
これまでのGPUはパワーが不足していたため、4Kのフレームレートはそれほど高くありませんでした。これが2つ目のGeForce RTX 3080を使用したデータの4Kの数値にあまり差がなかったことの主な要因です。
しかし、最新のハイエンドGPU(GeForce RTX 4090)は、一昔前のFHD並の高フレームレートを出せるようになってきたため、4KならCPU性能はあまり必要ないというセオリーは通用しなくなってきています。
もちろん、同じ4Kでもゲームによって負荷が異なりますので一概にはいえませんが、狙っているフレームレートに応じたCPU選びが重要になってきていることは確かです。
高フレームレートを出すことが難しいミドルクラスGPUまでであれば、それほどCPUにこだわる必要はありませんが、おおよその目安としてGeForce RTX 3070 Ti以上のGPUにはそれなりにパワーのあるCPUを合わせたいところです。
これはゲーミングPC向けCPUに限った話ではありませんが、内蔵グラフィックス(iGPU)の有無も重要なポイントになります。
ディスプレイにグラフィックデータを送ることがGPUのお仕事ですが、これを専用に行うグラフィックボードが故障した場合、替えのグラボがなければPCを使うことさえできなくなってしまいます。
しかし、CPUにiGPUが備わっていれば、PCが使えないという最悪の状況を防ぐことができるのです。特に不具合の原因を特定していく時に、ディスプレイに表示できないという状態は致命的になります。グラボの故障を疑って買い替えたものの実際はケーブルの不具合だった、というような話を良く耳にしますが、こういった事態は絶対に避けなければなりません。
IntelのF付きCPUとAMDの5000番台までのCPUにはiGPUが備わっていませんので、予備のグラボがない場合にはこれらのCPUは避けることを強くおすすめします。
CPU依存度の影響も決して小さくはありません。
CPU依存度とは、その名の通りCPUの性能がパフォーマンスに関与する度合いのことです。例えばシミュレーションゲームのようなプログラム側が多くの思考を必要とするゲームほどCPU依存度は高くなる傾向にあります。ただ、プログラムの設計や効率が悪い場合もCPUへの負荷は高くなりますので、一概にはいえません。
よって、CPU依存度の低いソフトがターゲットだったり、GPUがミドルクラスで高フレームレートが難しい環境だったりするのであれば、そこまでCPUにこだわる必要はないということになります。
しかし、それ以外の場合、特にハイクラスGPUを採用する場合は、依存度が不明な様々なソフトを使用することなども考えて、レベルに見合ったCPUを選んでおくべきです。
PCは稼働している間、ゲームだけでなく数多くのプログラムを動かし続けますので、これを処理するパーツであるCPUの性能は全体の挙動に大きな影響を及ぼします。よって、ゲーム中でも多少はパワーに余裕のあるCPUを選んでおくことが重要です。