CPUにおける世代とは?その意味から世代間の性能差まで徹底解説

最終更新日 : 2023/10/18
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新しいCPUが登場するたびに第~世代CPUなどの言葉を目にすることが多いと思いますが、実はCPUにおける世代の概念はなかなかに複雑です

ここでは、世代の本当の意味と近年のCPUの世代間の性能差について解説しています。

CPUにおける世代とは?

まずはIntelAMDの最新世代CPUに関するデータをご覧ください。

IntelメーカーAMD
Raptor Cove
+ Gracemont
アーキテクチャZen 4
Raptor Lake
Refresh
コードネームRaphael
14000数字7000
Intel Core
プロセッサー
・ファミリー
(第14世代)
名称AMD Ryzen
7000シリーズ
プロセッサー

見慣れない言葉だらけで戸惑う人もいるかと思いますが、これらの意味が分かると世代に関してはもちろんのこと、プロセッサーに対する理解も深まります。決して難しくはありませんので、是非覚えて帰って下さい。

もし、すでにご存じなのであれば、ページ下部の世代間の性能差へどうぞ。IntelAMD直近3世代のCPUの比較を行っていますので、参考にして頂けるかと思います。


それでは次項より解説していきます。

アーキテクチャ

アーキテクチャ(Architecture)とは、建築術、建物、構造などの意味を持つ英単語です。幅広く使われる言葉ですが、プロセッサーにおいては一般的に設計という意味で使われます。つまり、CPUアーキテクチャといえばCPUの設計を表すことになる訳です。

ただ、より詳細にいうと、CPUアーキテクチャは通常コアの設計を指します。

コア(Core: 核)とは演算を行う装置のことで、文字通りCPUの中核を担う部分になります。現代のCPUはコアを複数備えていますが、これはCPUが複数あるのと似たような意味になります。


さて、CPUにおける世代とは何かに対する答えですが、それは、アーキテクチャの違いということになります。

新しいコアアーキテクチャが完成すると、コアの数やクロック周波数などスペック(仕様)に差を付けた複数のCPUを製造します。これが世代を構成するそれぞれのCPUになる訳ですが、コアが同じである以上、基本的な性能は全て同じです。コア以外の部分に差を付けることでバリエーションを生み出しているということです。

ただし、注意すべき点があります。

基本的には1つのアーキテクチャで1つの世代を形成しますが、1つのアーキテクチャが複数の世代で使われたり、1つの世代に複数のアーキテクチャが混ざったりすることがあるのです。

これらはCPUの名前で判断できるとは限りませんので、しっかりと調べる必要があります。


では、IntelAMDのアーキテクチャをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

Intelアーキテクチャ

世代デスク
アーキテクチャ
ノート
アーキテクチャ
第6世代Skylake (スカイレイク)
第7世代
第8世代
第9世代
第10世代SkylakeSkylake
Sunny Cove
(サニーコーヴ)
第11世代Cypress Cove
(サイプレスコーヴ)
Willow Cove
(ウィローコーヴ)
第12世代Golden Cove (ゴールデンコーヴ)
+ Gracemont (グレイスモント)
第13世代
第14世代
Raptor Cove (ラプターコーヴ)
+ Gracemont (グレイスモント)

Skylakeアーキテクチャは第6世代のコアですが、ご覧の通り何世代にも渡って使われてきました。それゆえ、この間は設計上の進化があまりなく、シングルスレッド性能(1コア当たりの性能)はほとんど伸びませんでした。ただ、コア数は増加されたため、マルチスレッド性能(CPU全体の性能)はそれなりに大きな向上を見せています。


Intelにとって第10世代第11世代は迷走の時代です。待ちに待った新アーキテクチャが登場したにもかかわらず、上手く移行ができなかったため、デスクトップ向けとノート向けでアーキテクチャが異なるなど苦しい時期となってしまいました。

しかし、第12世代で華麗なる復活を遂げます。新しい概念の導入によりマルチスレッド性能が飛躍的に伸びたのです。これは最新の第13世代でも引き継がれ、今後も拡大、発展していくことが予定されています。

ただし、第14世代第13世代の小改良版の世代となりましたので、変化はほぼありません。

AMDアーキテクチャ

世代アーキテクチャ
第1世代Zen (ゼン)
第2世代Zen+ (ゼンプラス)
第3世代Zen 2 (ゼンツー)
第4世代Zen 3 (ゼンスリー)
第5世代Zen 3+ (ゼンスリープラス)
第6世代Zen 4 (ゼンフォー)

AMDのCPUは、かつて性能もシェアもIntelのCPUに遠く及ばないという、長い長い低迷期にありました。

これを打ち破ったのが2017年に登場したZenアーキテクチャです。シングルスレッド性能(1コア当たりの性能)では及ばなかったもののマルチスレッド性能(CPU全体の性能)ではIntel CPUを上回ったのです。

その後もZen系アーキテクチャは順当に進化を遂げ、シングルのIntel、マルチのAMDという居場所を確保したため、AMDはシェアを順調に伸ばしました。苦手としていたシングルスレッド性能もZen 3アーキテクチャではIntelにほぼ並ぶなど、CPUの第一選択肢はAMDといえるほどに力を付けてきたのです。

Intel第12世代CPUで再度抜かれてしまいましたが、最新のZen 4アーキテクチャではマルチで突き放しシングルで追いつくなど、両社は熾烈な競争を続けています。


AMDのアーキテクチャは世代を経るごとに名前の数字を上げていくというシンプルな命名規則ですが、大きな変更がない場合には前世代の名前に"+"を付けるという形式を取っています。つまり、Zen 3+アーキテクチャは小さな変更に留まり、その次のZen 4アーキテクチャでは比較的大きな変化があるということです。

とすると、+系のアーキテクチャはあまり期待できないのかと思われるかもしれませんが、新アーキテクチャが必ず大きく進歩するとは限りませんので、小さくとも確実なパワーアップが見込めるという意味では、+系のアーキテクチャにもメリットはあるといえるでしょう。

開発コードネーム

アーキテクチャと良く似たものにコードネーム(Code Name)と呼ばれるものがあります。

開発コードネームとも呼ばれますが、その名の通り、製品の開発時に付けられる名前のことです。第~世代CPU [コードネーム]というように併記される形で見かけることが多いでしょう。

言葉の響きからすると、メーカーの内部でのみ使われる名前のようですが、外部向けの資料やアナウンスにも使われていますので、正式な名称と考えても良さそうです。

ただし、コードネームとアーキテクチャ名は境目が曖昧なことが多く、また厳密な定義もありません。IntelAMDではニュアンスが異なることがありますので、注意が必要です。


では、IntelAMDのコードネームをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

Intelコードネーム

世代コードネームアーキテクチャ
第8世代Coffee Lake
(コーヒーレイク)
Skylake
第9世代Coffee Lake Refresh
(コーヒーレイク
リフレッシュ)
第10世代Comet Lake
(コメットレイク)
Skylake
[ノート] Ice Lake
(アイスレイク)
Sunny Cove
第11世代[デスク] Rocket Lake
(ロケットレイク)
Cypress Cove
[ノート] Tiger Lake
(タイガーレイク)
Willow Cove
第12世代Alder Lake
(アルダーレイク)
Golden Cove
+ Gracemont
第13世代Raptor Lake
(ラプターレイク)
Raptor Cove
+ Gracemont
第14世代Raptor Lake Refresh
(ラプターレイク
リフレッシュ)

先ほどのIntelアーキテクチャの表にコードネームを追加したものです。第6世代Skylake以降、コードネームには全てLakeが付くようになっています。

実は、コードネームはもう少し細かく分けて付けられています。ハイエンド向けデスクトップ向け高性能ノート向けなどのグループごとにそれぞれコードネームが付けられるのです。

数が多いですから、直近4世代のコードネームのみを以下に示します。

世代開発コードネームターゲット
第11世代Rocket Lake-Sデスクトップ向け
Tiger Lake-H超高性能ノート向け
Tiger Lake-H35高性能ノート向け
Tiger Lake UP3低消費電力ノート向け
Tiger Lake UP4超低消費電力ノート向け
第12世代Alder Lake-Sデスクトップ向け
Alder Lake-HX高性能ノート向け
Alder Lake-H
Alder Lake-Pノート向け
Alder Lake-U低消費電力ノート向け
第13世代Raptor Lake-Sデスクトップ向け
Raptor Lake-HX高性能ノート向け
Raptor Lake-H
Raptor Lake-Pノート向け
Raptor Lake-U低消費電力ノート向け
第14世代Raptor Lake-S
Refresh
デスクトップ向け

かつてはグループ(ターゲット)ごとに独立した名前を付けていた開発コードネームですが、近年の命名規則はアーキテクチャ名と"-(ハイフン)"の後ろにアルファベットや数字が付くという非常に合理的な形になっています。デスクトップ向けノート向けに分けて見ていきましょう。

デスクトップ向けは、現在のところ、末尾にSが付く通常版と、表にはありませんがが付くハイエンド向け2種類のみです。ただし、近年ハイエンド向けは全くリリースされていませんので、考慮から外しても良いでしょう。

ノート向けはざっくりいうと、消費電力 = 性能によって分類されています。とはいえ、コードネームの末尾はプロセッサナンバーのサフィックス(末尾のアルファベット)に一致していますので、その点は非常に分かりやすくなっています。

ただ、使われているハイフン以下の文字列が世代ごとに変わっているため、注意が必要です。


また、第14世代は登場したばかりで、現時点ではデスクトップ向けのみのラインアップとなっています。

AMDコードネーム

世代
(アーキ
テクチャ)
コードネーム
第1世代
(Zen)
Summit Ridge (サミットリッジ)
第2世代
(Zen+)
Pinnacle Ridge (ピナクルリッジ)
第3世代
(Zen 2)
Matisse (マティス)
第4世代
(Zen 3)
Vermeer (フェルメール)
第5世代
(Zen 3+)
-
第6世代
(Zen 4)
Raphael (ラファエル)

先ほどのAMDアーキテクチャの表にコードネームを追加したものです。第1、2世代は地名から、第3世代以降は画家の名前から取られています。

ここでAPUについてお話ししておきます。現代のCPUは、軽いゲームなら余裕で動かせるレベルのグラフィックチップを内部に備えています。これを内蔵GPU(iGPU)と呼びます。

しかし、AMDのCPUは、iGPUを備えていません。ただ、iGPUを持つプロセッサーもあって、それをAPUと呼んで区別しているのです。また、IntelにもiGPUのないCPUがあって、こちらは名前にFが付きます

つまり、AMDのCPU全般とIntelのF付きCPUは、グラフィック処理専用のハードであるグラフィックボードがなければ、ディスプレイに映像を送ることさえできないということです。

ところが、第6世代Ryzen CPUにはiGPUが搭載されていますので、これによりCPUとAPUの分かりやすい境目はなくなってしまいました。ただ、第6世代Ryzen CPUのiGPUは非常に小規模で性能が低いですから、後々高性能な第6世代Ryzen APUが登場するのかもしれません。

また、Zen 3+アーキテクチャを採用したRyzen CPUはありませんので、第5世代Ryzen CPUはパスされたということになります。


さて、APUの話に戻ります。AMDのプロセッサは、その性質上ノートPCに採用されるのはほとんどがAPUで、CPUが載ることは非常に稀です。よって、APUにはデスクトップ向けとノート向けの両方がありますが、CPUにはデスクトップ向けだけしかありません

そして、開発コードネームはCPUとAPUで分けられています。実は先ほどご紹介したのはCPUのコードネームでした。以下に、APUのコードネームを示します。

世代
(アーキ
テクチャ)
コードネーム
第1世代
(Zen)
Raven Ridge (レイヴンリッジ)
第2世代
(Zen+)
Picasso (ピカソ)
第3世代
(Zen 2)
Renoir (ルノワール)
Lucienne (ルシエンヌ)
Mendocino (メンドシーノ)
第4世代
(Zen 3)
Cezanne (セザンヌ)
Barcelo (バルセロ)
Barcelo-R (バルセロリフレッシュ)
第5世代
(Zen 3+)
Rembrandt (レンブラント)
Rembrandt-R (レンブラントリフレッシュ)
第6世代
(Zen 4)
Dragon Range (ドラゴンレンジ)
Phoenix (フェニックス)

ほとんどの世代が複数のコードネームを含んでいますが、これがまさにAMDプロセッサーのややこしさの元凶です。

詳しくはこの後のAMD: 世代別コードネーム、アーキテクチャ一覧でお話しします。

世代に与えられる数字と正式名

各世代には4~5桁の数字が割り当てられます。そしてこの数字にちなんで、世代を構成する製品群の名称が付けられます。

この名前は必ずしも正式なものとはいえないのですが、ある程度決まった形を取りますので、参考にして頂ければと思います。


では、IntelAMDの数字と名称をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

Intel: 世代別コードネーム、アーキテクチャ一覧

Intelのプロセッサーの各世代には4~5桁の数字が割り当てられます。Core第1世代3桁の数字が与えられましたが、次の世代は2000番台の数字が、以降は世代を経るごとに千の位の数字が1つずつ増えるという形を取っています。

また、世代を構成するCPU群の名称は第~世代Intel Coreプロセッサー・ファミリーというのが一般的でしたが、第14世代からはIntel Coreプロセッサー・ファミリー(第~世代)という表記に変わったようです。

には、第1世代を除いて数字が4桁なら上位1桁が、5桁なら上位2桁が取られます

CPUタイプコードネームCPU
コア
発売年月
第10世代Intel Core
デスクComet Lake-SSkylake2020/05
ノートComet Lake-H
Comet Lake-U
Comet Lake-Y
2019/09
Ice LakeSunny Cove2019/05
第11世代Intel Core
デスクRocket Lake-SCypress Cove2021/03
ノートTiger Lake-H
Tiger Lake-H35
Tiger Lake-UP3
Tiger Lake-UP4
Willow Cove2020/09
第12世代Intel Core
デスクAlder Lake-SGolden Cove
+ Gracemont
2021/11
ノートAlder Lake-HX
Alder Lake-H
Alder Lake-P
Alder Lake-U
Willow Cove
+ Gracemont
2022/01
第13世代Intel Core
デスクRaptor Lake-SRaptor Cove
+ Gracemont
2022/10
ノートRaptor Lake-HX
Raptor Lake-H
Raptor Lake-P
Alder Lake-U
2023/01
第14世代Intel Core
デスクRaptor Lake-S
Refresh
Raptor Cove
+ Gracemont
2023/10

第10世代Intel Core

新アーキテクチャのSunny Coveが登場するという大きな変化がありました。そして、今後はこのCove系アーキテクチャに置き換わる予定でしたが、Sunny Coveの出来があまり良くなかったり製造の遅れがあったりして、これが採用されたのは先行して登場したノート向けだけで、デスクトップ向けと遅れて登場したノート向けには引き続きSkylakeが使われました。これにより、Skylakeは何と5世代に渡り君臨することになり、世代交代は不完全燃焼のまま持ち越しということになってしまいました。

第11世代Intel Core

2系統に分かれてしまったIntel CPUですが、この混乱は次の第11世代でも続きました。Sunny Coveの改良版であるWillow Coveアーキテクチャは前世代同様ノート向けのみで、デスクトップ向けには別のアーキテクチャが用意されたのです。

ただ、このデスクトップ向けCPUが採用するCypress Coveアーキテクチャは、実はSunny CoveSkylakeと同じ古い製法で作っただけのものだったのです。つまり、実質1世代前のノート向けアーキテクチャと同じだった訳です。

第12世代Intel Core

何世代も失態や迷走を繰り返したIntelでしたが、第12世代で汚名を返上します。

この世代では、重要な変化がありました。表を見れば分かるかと思いますが、1つのCPUに2系統のコアを持つようになったのです。1つはPコア(Performance)と呼ばれる高性能コア、もう1つはEコア(Efficient)と呼ばれる低消費電力の高効率コアです。重めの処理を前者に、軽めの処理を後者に振り分けることによって全体における電力効率を上げることができるのです。この技術のことをbig.LITTLEといいます(開発したのはARM)。

第12世代のCPUのPコアはGolden Coveアーキテクチャを採用したコアですが、これは第11世代のノート向けに使われたWillow Coveの改良版です。

一方、Eコアの方はGracemontアーキテクチャのコアですが、これはAtom(アトム)という低消費電力なノート向けのブランドで採用されてきたアーキテクチャです。

mont系アーキテクチャは、そのコンセプトから性能が上げにくいという性質がどうしても拭えません。それゆえに人気がなく、Atomはやや下火になりつつありました。しかし、Eコアへの採用という活路を見いだしましたので、これから大きな進化が見られるかもしれません。

第13世代Intel Core

第13世代は大きな変化のない世代です。Pコアに採用されたRaptor Coveアーキテクチャは第12世代Golden Coveの改良版、Eコアに至っては引き続きGracemontが使われています。

第14世代Intel Core

第14世代は前世代以上に変化のない世代です。PコアもEコアもアーキテクチャは同じで、いくつかの機能が追加されたこととクロック周波数がわずかに向上したこと以外に目立つ違いはありません。

AMD: 世代別コードネーム、アーキテクチャ一覧

AMDのプロセッサーの各世代には4桁の数字が割り当てられます。Ryzen第1世代1000番台の数字が与えられたためAMD Ryzen 1000シリーズ・プロセッサーと呼ばれ、以下世代を経るごとに千の位の数字が1つずつ増えるという形を取っています。

しかし、AMDのシリーズ、世代は非常に複雑なため注意が必要です。以下に、シリーズごとのコードネームやアーキテクチャ、発売年月の一覧を示します。

CPUタイプコードネームCPU
コア
GPU
コア
発売年月
Ryzen 1000シリーズ
デスクCPUSummit RidgeZen-2017/03
Ryzen 2000シリーズ
デスクCPUPinnacle RidgeZen+-2018/04
デスクAPURaven RidgeZenGCN2018/02
ノートAPU2017/10
Ryzen 3000シリーズ
デスクCPUMatisseZen 2-2019/07
デスクAPUPicassoZen+GCN2019/07
ノートAPU2019/01
Ryzen 4000シリーズ
デスクAPURenoirZen 2GCN2020/07
ノートAPU2020/01
Ryzen 5000シリーズ
デスクCPUVermeerZen 3-2020/11
デスクAPUCezanneGCN2021/08
ノートAPU2021/01
ノートAPULucienneZen 2
BarceloZen 32022/01
Ryzen 6000シリーズ
ノートAPURembrandtZen 3+RDNA 22022/01
Ryzen 7000シリーズ
デスクCPURaphaelZen 4RDNA 22022/09
ノートAPUDragon RangeZen 4RDNA 22023/02
PhoenixRDNA 32023/03
Rembrandt-RZen 3+RDNA 22023/01
Barcelo-RZen 3GCN
Mendocino Zen 2RDNA 22022/09

Ryzen 1000シリーズ、2000シリーズ

Ryzen 1000シリーズ・デスクトップCPU2017年3月に登場しました。アーキテクチャはZenで、以降これを改良しながら発展を遂げていくことになります。

同年10月Ryzen初のAPUとなるRyzen 2000シリーズ・ノートAPUが登場しますが、これがややこしさを生み出してしまいます。どういう意図かは分かりませんが、第1世代となるZenアーキテクチャであるにもかかわらず、第2世代を意味する2000番台の数字を与えてしまったのです。

また、これに合わせるような形で翌2018年2月発売のRyzen 2000シリーズ・デスクトップAPUZenアーキテクチャのままとなりましたが、ここでは別の厄介な事態が生じます。

Ryzen 2000シリーズ・デスクトップAPUをこの2か月後に発売となるRyzen 2000シリーズ・デスクトップCPUの下位クラスという位置付けにしたのです。これによりCPUには下位クラス(Ryzen 3)がなく、APUには上位クラス(Ryzen 7)がないという形になりました。

こうしてRyzen 2000シリーズZenの改良型アーキテクチャとなるZen+を採用したデスクトップCPUと旧世代アーキテクチャのデスクトップ / ノートAPUが混在することとなったのです。

Ryzen 3000シリーズ

Ryzen 2000シリーズと似たような構図です。目立つ変化は開発コードネームの方針が地名から画家の名前になったことくらいでしょうか。

Ryzen 4000シリーズ

デスクトップCPUがラインアップに入らなかったため、APUだけの世代となりました。

Ryzen 5000シリーズ

Ryzen 4000シリーズデスクトップCPUがスルーされたため、Ryzen 2000シリーズで生じた数字のずれが解消されることとなりました。ただ、これがねじれ解消のための意図的な措置なのかは分かりません。

いずれにせよ、これでシリーズ名とアーキテクチャの不一致は一応なくなった訳ですが、新たなややこしさが生じてしまいました。

Ryzen 4000シリーズ・ノートAPUCezanne2021年1月に発売になりましたが、これと同じ日にLucienneと呼ばれるノート向けAPUも発売になったのです。

実はこのLucienneCezanneZen 2で作ったものなのです。つまり、コアだけが前世代なCezanneという訳です。

LucienneRyzen 4000シリーズとしなかったり、ラインアップがCezanneと被っていたりと、率直にいってLucienneの存在意義は良く分かりません。


さらに、その1年後2022年1月にはBarceloが発売になりましたが、こちらはCezanneを置き換えるものです。アーキテクチャも同じですので、BarceloほぼCezanneと考えて良いでしょう。

Ryzen 6000シリーズ

Ryzen 6000シリーズノートAPUだけの世代です。

しかし、GPUアーキテクチャGCNから新しいRDNA 2になるという大きな変化がありました。

Ryzen 7000シリーズ

現在の最新世代がRyzen 7000シリーズですが、採用されているZen 4Zen系アーキテクチャの第6世代となります。

この世代でもやはりAMDはややこしいことを行っています。それはノートAPUのラインアップが4世代のCPUコア、3世代のGPUコアで構成され、それぞれがシリーズを成すのに加えて、命名規則も大きく変えてきたのです。

それぞれのシリーズにコンセプトがありますので悪いとまではいいませんが、一般の人のみならずそれなりに詳しい人にとっても分かりにくいですから、どうにかして欲しいというのが率直な感想です。

世代間の性能差

ここからは基礎的な知識を離れて、CPUの世代間でどれくらいの性能差があるのかについて検証していきたいと思います。

CPUの性能は、大きく分けて2種類あります。

1つはシングルスレッド性能です。これは1コア当たりの性能を意味します。コアは世代で共通ですので、同世代CPUの基本的な性能もまた同じなのですが、コアの数クロック周波数キャッシュメモリなどのスペックにあえて差を付けることで違いを生み出し、バリエーションを作っているのです。

もう1つはマルチスレッド性能です。これはCPU全体がフル稼働した時の性能を意味しますが、プログラム側がコアを上手く使うように設計されていなければ全てのコアを動員することはできませんし、また冷却性能が足りなければパワーに制限がかかってしまいますので、実はCPUにフルパワーを出させるのは意外と難しかったりします。

ただ、それらの問題がクリアできていれば、マルチスレッド性能はコアの数に比例します


以上を踏まえた上で、IntelAMD直近3世代のCPUのマルチスレッドとシングルスレッドの性能を比較してみたいと思います(ただし、Intelの最新世代は登場直後でまだデータが出そろっていませんので、前世代から3世代としていますが、何度もお話ししている通り、最新世代はリフレッシュ世代ですので前世代と大きな差はありません)。

対象となるCPUは両社の各ブランドにおける最高クラスモデルですが、イレギュラーな存在は除外しています。

また、AMDのデスクトップ向けCPUはRyzen 5000シリーズRyzen 7000シリーズでは2世代の開きがありますので、ご注意下さい。

Intel Core
CPU
(コア数)
スコア(マルチ / シングル)
第13世代Core
Core i9-13900KS
(P8+E16)
 62088 (+40.1%) 4789 (+9.8%)
Core i9-13900K
(P8+E16)
 59947 (+44.1%) 4679 (+11.3%)
Core i7-13700K
(P8+E8)
 47011 (+35.2%) 4397 (+8.4%)
Core i5-13600K
(P6+E8)
 38461 (+38.3%) 4203 (+5.8%)
第12世代Core
Core i9-12900KS
(P8+E8)
 44302 (-) 4360 (-)
Core i9-12900K
(P8+E8)
 41614 (+63.3%) 4203 (+19.0%)
Core i7-12700K
(P8+E4)
 34784 (+41.0%) 4055 (+18.5%)
Core i5-12600K
(P6+E4)
 27817 (+41.0%) 3974 (+18.0%)
第11世代Core
- - -
Core i9-11900K
(8)
 25488 3532
Core i7-11700K
(8)
 24667 3422
Core i5-11600K
(6)
 19730 3367


AMD Ryzen
CPUスコア
Ryzen 7000シリーズ
Ryzen 9 7950X
(16)
 63576 (+38.4%) 4327 (+24.7%)
Ryzen 9 7900X
(12)
 52462 (+33.5%) 4327 (+24.7%)
Ryzen 7 7700X
(8)
 36539 (+30.2%) 4276 (+24.0%)
Ryzen 7 7600X
(6)
 28911 (+31.6%) 4221 (+25.7%)
Ryzen 5000シリーズ
Ryzen 9 5950X
(16)
 45921 (+17.8%) 3470 (+28.0%)
Ryzen 9 5900X
(12)
 39309 (+20.1%) 3471 (+28.2%)
Ryzen 7 5800X
(8)
 28060 (+20.7%) 3447 (+26.7%)
Ryzen 7 5600X
(6)
 21961 (+20.3%) 3359 (+26.4%)
Ryzen 3000シリーズ
Ryzen 9 3950X
(16)
 38973 2711
Ryzen 9 3900X
(12)
 32718 2707
Ryzen 7 3800X
(8)
 23247 2721
Ryzen 7 3600X
(6)
 18252 2658

スコアは、上側がマルチスレッド性能で下側がシングルスレッド性能です。

グラフは最高スコアに対する自身のスコアを百分率で表したもので、IntelAMDで共通です。

また、カッコ内の数字は前世代同クラスからのスコアの伸び率を表しています


では、IntelのCPUから見ていきます。

まずシングルスレッド性能ですが、第11世代Coreから第12世代Coreでおおよそ18~19%ほどの性能アップを果たしたようですが、これはなかなか高い数字といって良いでしょう。

第12世代Coreから最新の第13世代Coreはというと、6~11%ほどと少し幅が大きいですが、前世代と比べてかなり控えめで物足りない数字です。

次にマルチスレッド性能ですが、第11世代Core第12世代Coreでは40~60%と尋常ではない伸び方をしています。

その理由は第12世代Coreから取り入れられたbig.LITTLEという概念にあります。これは簡単にいうと、従来通りのハイパフォーマンスなコアPコア)に加えて、低性能ながらも低消費電力な高効率コアEコア)を組み合わせることで電力効率を上げるというものです。

第12世代CoreではEコアが増えた分、マルチスレッド性能が大きく伸びたということです。

第13世代CoreではEコアの数が2倍になりましたので、こちらも40%ほどの性能アップを見せています。


続いてAMDですが、前述の通り、Ryzen 5000シリーズRyzen 7000シリーズ2世代離れていますので、1世代に換算すると半分くらいを見積もった方が良いかもしれません。

シングルスレッド性能Ryzen 3000シリーズからRyzen 5000シリーズ26~28%Ryzen 5000シリーズからRyzen 7000シリーズ24~26%ほどの伸びを見せています。

後者は1世代当たりに換算すると12~13%くらいになりそうですが、これは少し寂しい数字です。また、AMDのシングルスレッド性能は、世代が同じならクラスに関係なくスコアが横並びな点が特徴的です。

マルチスレッド性能に関しては、Ryzen 3000シリーズからRyzen 5000シリーズでは20%ほどのアップですが、Ryzen 5000シリーズからRyzen 7000シリーズでは30~38%となかなかの伸びを見せています。

ただ、何度もお話ししていますが、後者は1世代に換算すると半減しますので、Ryzen 7000シリーズでの伸びが少し物足りないという評価が正しいのかもしれません。