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CPUのスペック(仕様)表に記載されている言葉には専門用語が多いため、馴染みのない人にとっては良く分からないものだらけではないでしょうか。
CPU内部の高度で複雑な構造を理解するのは難しいですが、スペックからおおよその性能を読み解くくらいであれば、それほど専門的な知識は必要ありませんので、誰でも習得することが可能です。
ここでは、CPU関連で良く使われる言葉や概念について、具体的な例を挙げながら分かりやすく解説しています。基礎知識として、是非とも身に付けて帰って下さい。
それでは、実際に存在するCPUのデータを基に、使われている用語の解説とデータの見方のポイントについてお話ししていこうと思います。
以下に、IntelとAMDのメインストリーム(主流)向け、現行世代最高性能CPUのスペックとそのCPUが属する世代に関するデータを挙げます。
Intel | メーカー | AMD |
---|---|---|
Core i9-12900KS | CPU名 | Ryzen 9 7950X |
16 (8+8) | コア数 | 16 |
24 (16+8) | スレッド数 | 32 |
3.4GHz | 定格 クロック周波数 | 4.5GHz |
5.2GHz | ブースト クロック周波数 | 5.7GHz |
30MB | L3キャッシュ | 64MB |
150W | TDP | 170W |
UHD 770 | iGPU | Radeon Graphics 2 |
LGA1700 | ソケット | Socket AM5 |
Intel 7 (10nm) | プロセスルール | 5nm |
Alder Lake | CPU アーキテクチャ | Zen 4 |
Alder Lake-S / Alder Lake-H など | 開発 コードネーム | Raphael |
Core i9 Core i7 Core i5 Core i3 Pentium Celeron |
ブランド | Ryzen 9 Ryzen 7 Ryzen 5 |
Core i9-12900KS Core i7-12700K Core i5-12600K Core i3-12300 など |
数字 | Ryzen 9 7950X Ryzen 7 7700X Ryzen 5 7600X など |
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PC向けのCPU製造メーカーといえばIntel(インテル)とAMD(エイエムディー)を覚えておけば良いでしょう。他にもメーカーは存在しますが、PC向けではIntelとAMDの2強状態です。
販売シェアでは、以前はIntelが圧倒していましたが、Ryzenブランドの大躍進によりAMDが逆転しました。ただ、その後Intelが新モデル投入で再逆転するなど、激しい競争が起こっているのが現在のCPU業界です。
CPUには、名前(製品名)が付けられますが、Intelではこれをプロセッサナンバー(Processor Number)、AMDではこれをモデルナンバー(Model Number)と呼んでいます。
プロセッサ/モデルナンバーに含まれる数字には、意味や規則性がありますので、後ほど詳しくお話ししたいと思います。
CPUやGPUのようなプロセッサにおいて、実際にデータ処理を行う装置のことをコア(Core)といいます。
処理を行う装置ですので、数が多いほど高性能といえるのですが、プログラム側が各コアに処理を上手く振り分けるようになっていないと、最高の性能は発揮されません。
つまり、16コアCPUでも、プログラム次第では1つのコアにだけ強い負荷が掛かって、他のコアが遊んでいるという状態が起こり得るということです。
とはいえ、最近のOSは処理の振り分けが上手くなっていますので、特に複数のプログラムを同時に実行するのであれば、コアが多い方が断然有利です。
システムはユーザーが見えないところで様々なプログラムを稼働していますので、ある程度の余力があった方が、不意の高負荷にも対応しやすいからです。
コア数は、CPUの性能を決める重要な要素であることを覚えて帰って下さい。
スレッド(Thread)とは、プログラムの最小単位となるもののことで、CPUはこのスレッド単位でプログラムを処理します。
コアが一度に処理できるプログラム = スレッドは1つだけなのですが、余っている装置を使ったり、処理の手順を組み替えるなどして効率化を図ることによって、複数のスレッドを同時に処理しているように見せる技術があります。
これをSMT(Simultaneous Multithreading: 同時マルチスレッディング)といいますが、IntelではこれをHTT(Hyper-Threading Technology : ハイパースレッディングテクノロジー)と呼んでいます。
SMTでは、最大で2コア分ほどの処理能力を得ることができるようになるため、SMTが有効なCPUのスペック表には、コア数の倍の数のスレッド数が表記されています。
また、OSからは、SMTは物理コアのように見えるため、スレッド数分のコアがあると認識されます。つまり、8C/16Tであれば、16コアであると認識されるということです。
ただし、SMTはプログラム側がSMTを有効活用できるようになっていなければ、効果は限定的になってしまいます。平均的には25%ほどの性能アップといわれていますが、一部の用途では逆に足を引っ張ることもありますので、過度な期待は禁物です。
クロック周波数は、処理速度を表すもので、Hz(ヘルツ)という単位で表されます。
数字とHzの間のGはGiga(ギガ)の頭文字で、10億を表す接頭辞です。よって、4.0GHzならば、40億Hzを表すことになります。
クロック周波数は、2種類存在します。
1つは定格クロックで、通常動作時のクロック周波数を表します。
そして、もう1つはブーストクロックで、負荷が掛かった時のクロック周波数を表します。この負荷が掛かった時にクロックが上がる機能のことを、IntelはTurbo Boost(ターボブースト)、AMDはPrecision Boost(プレシジョンブースト)と呼んでいますが、ターボ機能を持たないCPUもあります。
また、これとは別にクロック周波数を上げる方法が存在します。CPUの設定を変えることでクロックを上げるというやり方でオーバークロック(OC)と呼ばれます。PCの自作(パーツを単独で購入し、自分で組み立てること)を楽しむ人にとってOCは遊びの醍醐味の1つで、新世代CPUが発売されると、どこまでクロックアップができるかを競うようにして試すのです。
ただし、OCは大きな危険を伴う行為です。特に電圧を上げ過ぎた場合は、CPUだけでなく他のパーツも巻き込んで壊してしまいかねませんし、壊れずとも消費電力が大きくなって発熱も増えるため、PCへのダメージが大きくなるのが常です。
よって、OCは推奨されるものでは決してないのですが、だからこそ、自作する人達はギリギリの設定を見極めることに楽しみを見出せるともいえるのです。ちなみに、OCはCPUとチップセットの両方が対応していなければできませんので、ご注意下さい。
それから、スペック表には載っていませんが、アイドル状態(負荷が全く掛かっていない状態)では、定格クロックを落として省電力モードに入るという機能もあります。
現在のクロック周波数は、このように細かくコントロールされているのです。
同じメーカーの同じ世代のCPUであれば、クロック周波数で大体の性能比較が可能なのですが、メーカーや世代が違うCPU同士では、クロック当たりの性能が異なるため、単純な順位付けはできません。
とはいえ、おおよその目安として高いクロックのものほど高性能といえますので、性能を見る上で重要な要素であることには違いありません。
キャッシュ(Cache)とは、貯蔵庫というような意味の英単語です。そして、キャッシュメモリ(Cache Memory)とは、CPU内にある超高速なメモリのことです。
CPUの処理速度は非常に高速ですので、メインメモリとのデータのやり取りは、プログラムの処理速度においてボトルネック(制約)になりがちです。
そこで、CPUコアとメインメモリの間に高速なメモリを置いて、上記のボトルネックをいくらか解消しようという仕組みが、キャッシュメモリなのです。CPUの内部に置かれます。
キャッシュメモリは多段階構造になっており、CPUに近い位置から順にL1キャッシュ / L2キャッシュ / L3キャッシュというように呼ばれます。LはLevel(レベル)の頭文字です。また、1次キャッシュや2次キャッシュと呼ばれることもあります。
基本的にCPUに近いほど高速ですが、その分高価でもあるため、容量はとても小さくなります。良く使われるデータをキャッシュに置いておくことができれば高速化に繋がりますが、必要なデータが頻繁に変わってしまう場合だと、結局はメモリから取ってくることになり、あまり有効ではなくなります。これらはプログラム次第ということになるでしょう。
よって、キャッシュの容量差を体感できることはあまりなかったのですが、最近のCPUはL3キャッシュに数十MB(メガバイト)を積むようになってきましたので、目に見える違いを得られる場面も増えてきました。性能を追求するのであれば、より大きなキャッシュ容量を積む高性能CPUを狙うのも良いかもしれません。
TDPとは、Thermal Disign Powerの頭文字を取った言葉で、日本語にすると熱設計電力となります。もう少し分かりやすい言葉でいうと、TDPは最大消費電力とほぼ同じ意味になります。単位W(Watt : ワット)で表されます。
厳密にいうと、TDPは設計上、どれくらいの発熱量になるかを表すものです。
消費された電力は熱となって放出されますが、CPUなどの半導体においては消費電力と発熱量はほぼ同じものとして扱えるのです。
CPUやGPUは、稼働時に非常に高温になるハードです。高温状態が続くと、PC内のハード類がやられてしまいかねませんので、熱源は常に冷却され続けなければなりません。
冷却装置にどれくらいの性能が必要かを知るためには、CPUやGPUがどれくらい発熱するのかを知る必要がある訳です。TDPとは、その目安となるものなのです。
さて、クロック周波数の項目で、CPUは負荷が掛かるとコアの周波数を上げるとお話ししましたが、実はターボ機能が働く条件の1つにTDPの枠内でというのがあります。
TDPは全てのコアがフルに働いた状態を元に定められているのですが、1つのコアに処理が集中し、残りのコアが遊んでいるような状態では、TDPには余裕がある訳です。
そこで、この余裕分を稼働中の1つのコアに振り分ける = 余剰TDP分に相当するクロックだけ上昇させるというのが、ターボ機能の仕組みなのです。
また、働いているコアが多いほどTDPの余裕も少なくなる訳ですから、2コアに負荷が掛かっている場合は、1コアに負荷が掛かっている場合よりもクロックの上限は低くなります。
TDPの重要性にあまりピンとこない人もいるとは思いますが、CPU能力の上限を決める要素の1つともいえますので、是非とも覚えて帰って下さい。
CPUの内部に設置されたグラフィック処理用のプロセッサのことです。通称、iGPU(integrated GPU)とも呼ばれます。詳細は、CPU内蔵GPUでどうぞ。
IntelのPC向けCPUには、プロセッサナンバーにFが付くものを除いて全てiGPUが搭載されていますが、AMDは異なります。
AMDは、iGPUを持たないものをCPU、持つものをAPU(Accelerated Processing Unit)と呼んで区別しているのです。
よって、IntelのF付きCPUとAMDのCPUにはGPUがありませんから、グラフィックボードが必ず必要になります。
ただ、AMDのCPUは第6世代(7,000番台)から小規模ながらiGPUを備えるようになりました。これにより画面に何も表示できないという事態は回避することが可能になりましたが、性能は本当に低いので注意が必要です。
ソケット(Socket)とは、マザーボード上にあるCPUを取り付ける場所のことです。
ソケットは物理的な形を持つので、ソケットが異なるもの同士では取り付けることができません。
CPUメーカーが異なれば、ソケットもまた全く異なるので互換性はありませんし、同じメーカー同士でも世代を経るに連れ、変わることがあります。
基本的にはソケットが同じ場合のみ、CPUを交換することが可能となります。
プロセスルール(Process Rule)とは、CPUやGPU、メモリなどの半導体を構成する回路の配線の幅を指す言葉です。製造プロセス(Manufacturing Process)とも呼ばれます。
この配線の幅が細ければ細いほど、同じ面積にたくさんの回路を詰め込むことができますし、逆に同じ大きさの回路であれば、全体のサイズを小さくすることができますので、プロセスルールの縮小化は性能アップを意味することになるのです。
現在のCPUのプロセスルールは、5nm(ナノメートル)前後ですが、微細化は徐々に厳しくなってきています。また、微細化自体に限界が近いともいわれていますので、今後の展望はやや不透明といわざるを得ないのが現状です。
また、14nm+や14nm++、あるいは14nm FinFETなど、長さの後に+やFinFETが付く場合もありますが、前者は改良型を後者は方式を表しています。前者はベースとなる14nmからパワーアップしたものという解釈で良いでしょう。
さらに、Intelの最新プロセスルールはIntel 7といい、nmで表記する方法を止めました。ただ、これは7nmではなく10nmで、次世代のIntel 4も7nmですので、数字と長さが一致しない、直感的に分かりにくい表記になっている点に注意が必要です。
アーキテクチャ(Architecture)とは、設計を意味する言葉です。
現在のCPUコアの最新アーキテクチャは、IntelがGolden Cove(ゴールデンコーヴ)、AMDがZen 4(ゼンフォー)です。
プロセッサ(CPUやGPU)の基本的な能力は、コアのアーキテクチャで決まります。よって、新アーキテクチャの登場時、前アーキテクチャからどれくらい進化を遂げたのかは、多くの人の興味を引くことになるのです。
アーキテクチャが完成したら、次はプロセッサの開発に入りますが、プロセッサは1種類だけではありません。とにかく性能を追い求めたハイエンドモデルや低消費電力を極めたモデルなど、様々なコンセプトを持ったプロセッサが、世代ごとに何種類も作られるのです。
これらの開発過程において、各コア、各プロセッサや世代、シリーズ全体などに名前が付けられることがあります。これを開発コードネームといいます。
Intelの開発コードネームは、製品のコンセプトを同じくする集団ごとにアーキテクチャ名 + アルファベット、数字という命名規則で名付けられています。
また、そのコンセプトは、基本的にデスクトップ向けとノート向けで分けられて、さらにTDPや搭載iGPUの違いなどによっても分けられて、それぞれがグループを構成しています。
AMDの開発コードネームは、Intelのようにコンセプトごとに付けられている訳ではなく、別の分け方がなされています。
まず、先ほどお話しした通り、AMDはCPU内蔵GPU(iGPU)の有無により、プロセッサ自体の名前を変えていました。iGPUを持たないものをCPU、持つものをAPU(Accelerated Processing Unit)と呼んでいた訳ですが、表中のRaphael(ラファエル)世代CPUからiGPUを持つようになりましたので、注意が必要です。
ちなみに、iGPUを持つAPUの最新コードネームはRembrandt(レンブラント)といいます。
開発が終わったプロセッサには、それぞれにプロセッサナンバー / モデルナンバーが付けられますが、それらはまずブランド化されて分類されます。
IntelのCPUには、性能の高い順にCore i9(コアアイナイン)、Core i7、Core i5、Core i3、Pentium(ペンティアム)、Celeron(セレロン)のブランド名が与えられます。
また、ハイエンドシリーズとして、新たにCore Xシリーズという名称が与えられ、これまでのハイエンドCPUを含めて、1つのシリーズにまとめられるようになりました。
AMDのCPUの主力ブランドは、Ryzen(ライゼン)です。分かりやすさを重視してIntelと数字を合わせてきたのだと思いますが、上位からRyzen 9(ライゼンナイン)、Ryzen 7、Ryzen 5、Ryzen 3、Athlon(アスロン)と名付けられています。
そして、Core i9対抗のハイエンドブランドは、Ryzen Threadripper(ライゼンスレッドリッパー)といいます。
CPUはコアのアーキテクチャが同じであれば、基本的な性能もまた同じなのですが、コアなどの装置の数や規模を変えることで性能に差を付けているのです。これらの差の大きな区切りがブランドという訳です。
各ブランドには複数のCPUが含まれますが、それらは数字で区別されます。
IntelもAMDも数字の最上位桁で世代を表します。
また、最上位桁以外の数字でその世代における相対的な性能を表しますが、ブランドにより割り当てられる数字が変化します。上位ブランドほど大きい数字が使われます。
IntelのAlder Lake世代に与えられた数字は12000番台です。これは第12世代Coreブランドを意味しています。ただ、PentiumやCeleronは、この規則には従いませんので、注意が必要です。
AMDのVermeer世代に与えられた数字は5000番台ですが、ややこしいことにZen 2アーキテクチャを採用した前世代CPUは第3世代で3000番台でした。その後、同じくZen 2を採用したRenoir世代APUに4000番台が与えられたのですが、そのせいか最新のAMD CPUは4000番台がスキップされて第4世代Ryzenながら5000番台を名乗ることになったのです。
さらに、数字の後にアルファベット1,2文字で表されるサフィックスが付くものと付かないものがありますが、これもまたコンセプトや性能の違いになります。
詳しくはTDPとサフィックスでお話ししていますので、参照して頂ければと思います。