CPUの種類(世代、ブランド、TDP)の解説

最終更新日 : 2022/10/03

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CPUの種類は非常に多いため、コンピュータに詳しくない人がそれぞれの違いを理解することは、簡単なことではありません。

しかし、CPUの名前の多くは分かりやすい規則に従って付けられていますので、一度体系的に理解しておくと、おおよその特徴や性能は直感的に把握できるようになるのです。

ここではそのために必要な知識についてお話していますので、是非覚えて帰って下さい。

CPUの分類

一口に種類とはいっても、切り口によって分類の方法は変わってきますが、まずはCPUが搭載される機器CPUメーカーについてお話ししたいと思います。

CPUが搭載される機器

CPUはコンピュータと呼ばれる機器には必ず搭載されるパーツで、ソフトウェア(プログラム)を実行する役割を担っています。PC(パーソナルコンピュータ)はもちろん、業務に用いられるサーバワークステーション、あるいはスマートフォンゲーム機など、どれもCPUによってコントロールされています。また、CPUはコンピュータのみならず、家電にも搭載されていて、様々な機能を提供しています。

ただ、PC以外のCPUやソフトウェアは、その機器に特化した機能や性能に制限されていたり、使用者が直接操作することができないようになっていたりすることがほとんどです。

想像以上に多くの機器が、CPUを備えているのです。

CPUメーカー

CPUにおいて最も有名な企業はIntelかと思いますが、そのライバルであるAMDApple、またスマホ系のQualcommなども良く知られているといえるでしょう。小規模なものを含めると、非常に多くの企業がCPUの開発や製造を行っています。

ただ、スマホ向けCPUは単体で選んだり、自分で交換したりができないこともあってか、その性能の話題で盛り上がるということはあまりありません。その点、PC向けCPUは新製品が登場するたびに、メディアやユーザーが性能や特徴を徹底的に調べ上げ、活発に議論もされますので、CPUの花形はこちらということになるでしょう。

中でも圧倒的なシェアを誇るWindowsに対応するIntelAMDCPUメーカーの中心にいるといっても過言ではありません。




以上、2つの観点からCPUを極々簡単に分類してみましたが、当サイトはPCに関する情報がメインですので、基本的にIntelとAMDのPC向けCPUのみを扱います。

ただ、CPUの果たす役割自体はどんな機器、メーカーであっても同じですから、ここでしっかりと基礎を押さえて頂ければ、長きに渡って役立つかと思いますので、是非覚えて帰って下さい。


では、本題であるPC向けCPUの種類について解説していきますが、一般的にはアーキテクチャ開発コードネームブランドTDPなどで分類できます。

まずはIntel(左)AMD(右)の直近数世代のアーキテクチャ開発コードネームを示します。詳細に関しては後ほどお話ししますので、さらっと眺めてみて頂ければと思います。

[発売年月]
世代
開発コードネーム
アーキテクチャ

[2021/11]
第12世代Intel Core (12,000番台)
Alder Lake (アルダーレイク)
Golden Coveコア + Gracemontコア
[2021/03]
第11世代Intel Core (11,000番台)
Rocket Lake (ロケットレイク)
Cypress Coveコア
[2020/11]
第4世代AMD Ryzen (5,000番台)
Vermeer (フェルメール)
Zen 3コア
[2020/09]
第11世代Intel Core (11,000番台, ノート)
Tiger Lake (タイガーレイク)
Willow Coveコア
[2020/05]
第10世代Intel Core (10,000番台)
Comet Lake (コメットレイク)
Skylakeコア
[2019/07]
第3世代AMD Ryzen (3,000番台)
Matisse (マティス)
Zen 2コア
[2019/05]
第10世代Intel Core (10,000番台, ノート)
Ice Lake (アイスレイク)
Sunny Coveコア
[2018/04]
第2世代AMD Ryzen (2,000番台)
Pinnacle Ridge (ピナクルリッジ)
Zen+コア
[2017/10]
第9世代Intel Core (9,000番台)
Coffee Lake Refresh
(コーヒーレイクリフレッシュ)

Skylakeコア
[2017/10]
第8世代Intel Core (8,000番台)
Coffee Lake (コーヒーレイク)
Skylakeコア
[2017/03]
第1世代AMD Ryzen (1,000番台)
Summit Ridge (サミットリッジ)
Zenコア

アーキテクチャと開発コードネーム

アーキテクチャ(Architecture)とは、プロセッサ(CPUやGPU)においては設計というような意味で使われます。設計によって性能や機能がおおよそ固まりますので、非常に重要なことはいうまでもありません。

開発コードネームとは、世代やシリーズ全体などに付けられる名前を指すことが一般的です。第X世代CPU [コードネーム]というように世代と併記されることも多いようです。

どちらも良く使われるだけでなく、意味がある場合が多いですから、一通りの理解は得ておきたいものです。


ブランド

CPUにおけるブランドとは、コンセプトが同じ製品のグループといったところです。

アーキテクチャが同じであれば基本的な性能や機能は同じなのですが、そこにあえて差を付けて違いを作り出します。その結果、同じような性能を持つグループをまとめて1つのブランドとするのです。

ブランドの違いが理解できると、性能の差も理解しやすくなります。


TDPとサフィックス

TDP(Thermal Disign Power: 熱設計電力)とは、設計上どれくらいの発熱量になるかの目安のことです。ただ、半導体においては、消費電力と発熱量は比例関係にありますので、TDPは最大消費電力と似たような意味も併せ持ちます。単位W(Watt : ワット)で表されます。

また、消費電力 ≒ 発熱量は、性能とも比例関係にあります。よって、消費電力を上げればCPU性能を高くすることができますが、発熱もまた膨れ上がってしまうため、CPUクーラーによって冷却する必要があるのです。その際、どれくらいの冷却性能が必要かを知るために、TDPという指標があるという訳です。

TDPはCPUごとに設定されていますが、バラバラに決められている訳ではありません。デスクトップ向けノート向けそれぞれに高性能、高消費電力タイプ低性能、低消費電力タイプバランスタイプなど3~4種類ほどタイプがあって、グループを構成しています。

性能の高い上位ブランドほど高TDPになりそうと思われるかもしれませんし、実際そういった傾向はあるにはありますが、実は各ブランドごとにTDPの違うモデルが存在します。よって、下位ブランドの高TDPモデルが上位ブランドの低TDPモデルを性能で上回ることも珍しくはありません

また、TDPはCPUの開発コードネームサフィックス(末尾のアルファベット)とも深い関係があります。そのあたりのことを、IntelAMDに分けてお話ししたいと思います。

Intelサフィックス

早速、最新世代であるAlder Lake(第12世代)開発コードネーム、サフィックス、TDPの一覧を示します。

開発コードネームサフィックスTDP
Alder Lake-SKS / K150W / 125W
無印65W
T35W
Alder Lake-HH45W
Alder Lake-PP28W
Alder Lake-UU9W or 15W

まずはデスクトップ向けについてです。開発コードネーム自体は1種類のみ(ハイエンド向けを含むと2種類)ですが、OC(オーバークロック)可能な末尾K125W(特別モデルの末尾KSだけ150W)、通常モデルの末尾なし(無印)65W、低消費電力の末尾T35Wと基本はこの3種類に分けられています。ただ、コアの数が少ないからか、Core i3以下のブランドでは無印のTDPが少し引き下げられています

上記の例はAlder Lake世代ですが、開発コードネームは1つにまとめられながら、サフィックスによるTDPの違いがあるのがIntelの歴代デスクトップ向けCPUの特徴です。


続いて、ノート向けについてです。基本的にはデスクトップ向けと同じく数種類に分けられていますが、Alder Lake世代では高性能な末尾H(最上位モデルのみHK)45W、通常モデルの末尾P28W、低消費電力の末尾U9W または 15Wとなっています。

デスクトップ向けとの違いは、TDPごとに個別の開発コードネームがあるという点にあります。そして、コードネームのハイフン以下の文字をサフィックスに使うという命名規則を採用している点も違いの一つです。

廃熱処理に余裕のあるデスクトップPCに対して、ノートPCにはその余裕がほとんどありません。だからこそ、TDPで細かく分類して充分な冷却性能を確保できるよう設計されている訳です。よって、廃熱が追い付かずパワーが発揮できない、あるいは常にファンが轟音を発しているなど、快適な利用が難しくなることを避けるためにも、安易に小型ケース + 高性能CPUという組み合わせを選ばないように注意して頂きたいと思います。

AMDサフィックス

AMDの開発コードネームはIntelとは異なり、CPUAPUで分けて付けられます。さらに、APUの方はデスクトップ向けノート向けがありますが、コードネームは共通です。

また、何度もお話ししていますが、AMDのプロセッサは世代、数字にズレがありますので、横並びにしても仕方がない側面もあるのですが、それぞれの最新世代の開発コードネーム、サフィックス、TDPの一覧を以下に示します。

開発コードネームサフィックスTDP
Vermeer
(第4世代CPU)
-105W, 65W
Rembrandt
(第4世代デスクAPU)
無印65W
E35W
Rembrandt
(第5世代ノートAPU)
HX, H45W
HS35W
U15-28W

第4世代RyzenデスクトップCPUに関しては、Intel同様、サフィックスとTDPはあまり関係ありません。現在のところ、Ryzen 7 5800X以上の上位モデルが105W、それ未満のCPUが65Wとなっていますので、単純にパワーによって分けていると考えて良さそうです。

ただし、旧世代までは上位モデルにも低TDPモデルはありましたので、基本的にはIntelと同じく、TDPにより各ブランドにバリエーションを生み出す方針なのかもしれません。


第4世代RyzenデスクトップAPUのサフィックスとTDPの関係性は、非常にシンプルです。

まずデスクトップAPUにはGのサフィックスが必ず付きますが、これがいわゆる無印のポジションとなります。TDPは65Wです。

そして、低消費電力モデルにはさらにEが付いてGEとなります。TDPは35Wですので、この2種類のTDPはIntelデスクトップCPUと同じ設定ということになり、かつこれまでの全世代でこの規則は変わっていません。この分かりやすさがデスクトップAPUの特徴です。


最後に第5世代RyzenノートAPUに関してですが、これもIntelに近い仕様となっています。高性能な末尾H(OC可能モデルはHX)45W、通常モデルの末尾HS35W、低消費電力の末尾U15-28Wとなっています。