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PCは熱に弱い電子機器ですから、排熱に難のある小型PCやノートPCはあまりおすすめできません。まして、CPUもGPUもフル稼働になりがちなゲーミングPCとなると、なおさらです。
よって、ゲーミングPCの第一候補は、大型ケースのデスクトップPCということになるのですが、様々な事情によりノートPCでなければならないという人もいることでしょう。
そんな人のために、ここではゲーミングノートPCに関して知っておいて欲しいことについて、お話ししようと思います。
また、各GPUを搭載したBTOゲーミングノートPCを構成をそろえながら徹底比較し、お得でコスパの高いモデルを調査しておすすめPCとしてご紹介しています。参考にして下さい。
基本的な選び方はゲーミングデスクトップPCと同じです。以下のページでお話ししていますので、ご一読下さい。
ここでは、ノートPC特有のポイントに焦点を当てた選び方について、お話しします。
デスクトップPCと比べてのノートPCのメリットといえば、コンパクトで持ち運びが可能という点に尽きるでしょう。性能やコスパで劣り、耐久性にも不安があるノートPCですが、そのメリットだけで充分考慮するに値します。
ただし、ゲーミングノートPCとなると、このメリットが薄れてしまうのです。
その理由は熱対策です。ゲーミングノートは、それなりに高性能なグラフィックボードやCPUを積んでいるものですが、これらの熱源を冷却するためには、どうしても大掛かりな装置が必要になってしまうのです。その結果、筐体は大型化して重くなってしまうため、持ち運びにはあまり向かないのです。
また、これと関連して、冷却ファンの音などもうるさくなってしまいます。
ですので、ゲーミングノートPCをモバイル機のようにいつでもどこでもサッと取り出せて、すぐに作業に入れるマシンと考えると痛い目を見ることになるでしょう。どちらかというとデスクトップPCとノートPCの悪いところ取りくらいの認識でいる方が健全です。
かつては、デスクトップ向けGPUの半分にも満たない程度でしかなかったノート向けGPUの性能ですが、現在は10~20%ほどの性能ダウンに留まるなど、劇的なパワーアップを果たしました。
ただし、何度もお話ししている通り、熱に関するリスクに変わりはありませんから、しっかりと理解しておいて下さい。
まずは、近年のデスクトップ向けGPUの4K解像度(4096 x 2160)とFHD解像度(1920 x 1080)における平均フレームレートの一覧を見て頂きたいと思います。
また、フレームレートにより各GPUをハイエンド、ハイスペック、ミドルスペックの3つの性能帯に分類していますが、これはあくまでも当サイト独自の基準になりますので、ご了承下さい。
スペック | GPU | fps(4K / FHD) |
---|---|---|
[ハイエンド] 4K: 60fps~ FHD: 120fps~ |
RTX3090 | 108.2 / 198.3 |
RX6900XT | 100.7 / 191.9 | |
RTX3080 | 97.4 / 188.4 | |
RX6800XT | 93.2 / 182.1 | |
RX6800 | 81.4 / 165.2 | |
RTX3070 | 74.2 / 159.6 | |
RTX2080Ti | 73.8 / 160 | |
RTX3060Ti | 65.2 / 145 | |
RTX2080SUPER | 62.2 / 141.5 | |
(RTX2080) | 58.2 / 135.8 | |
[ハイスペック] 4K: 30~60fps FHD: 60~120fps |
RTX2070SUPER | 53.8 / 126.4 | RTX3060 | 48.4 / 115.6 |
(RTX2070) | 47.2 / 113.3 | |
RTX2060SUPER | 45.1 / 109.4 | |
RTX2060 | 39 / 96.7 | |
[ミドルスペック] FHD: 30~60fps |
GTX1660Ti | 32.2 / 82.3 |
(GTX1660SUPER) | 31.8 / 81.2 | |
GTX1660 | 27.5 / 71.7 | |
GTX1650SUPER | 23.8 / 64.9 | |
GTX1650 | - / - |
さて、ノート向けGPUのフレームレートに関する直接的なデータはないのですが、GPU(グラボ)比較&ランキングのデータからの相対値で、各ノート向けGPUのおおよその能力が分かります。これらのデータから導き出される現在BTOで採用されているノート向けGPUの4K、FHDにおける平均フレームレートは、おおよそ以下の表のようになります。
スペック | GPU | fps(4K / FHD) |
---|---|---|
[ハイエンド] 4K: 60fps FHD: 120fps~ |
- | - |
[ハイスペック] 4K: 30~60fps FHD: 60~120fps |
RTX3080ノート (RTX2070S相当) | 53.8 / 126.4 | RTX2080ノート (RTX3060相当) | 48.4 / 115.6 | RTX3070ノート (RTX2060S相当) | 45.1 / 109.4 | RTX3060ノート (RTX2060相当) | 39 / 96.7 | RTX2070ノート (RXVega56相当) | 37.4 / 90.1 |
[ミドルスペック] FHD: 30~60fps |
RTX2060ノート (GTX1660相当) | 27.5 / 71.7 |
GTX1660Tiノート (GTX1660相当) | ||
GTX1650ノート (GTX1650相当) | ※15.1 / 47.3 |
RTX 2060ノートとGTX 1660 TiノートはともにGTX 1660相当となっていますが、前者はGTX 1660よりも5%ほど上、後者はGTX 1660よりも5%ほど下の性能です。その他のGPUも対抗GPUとは多少の差がありますので、ご注意下さい。
また、GTX 1650は最新データがないため、以前のものを使用していますが、最新データの方がやや高い数値が出ています。よって、GTX1650の数値ももう少し高いと思われますので、こちらもご注意下さい。
各スペック、GPUごとの鉄板構成やできることなどは、おすすめBTOゲーミングPCでお話ししていますので、参照して頂ければと思います。
CPUについては、以下のページも参考にして下さい。
まずは、デスクトップ向けCPUとノート向けCPUにどれくらいの差があるのか見ていきましょう。
CPU | C/T | CLK | スコア (総合 / シングル) |
---|---|---|---|
Ryzen 9 5950X | 16/32 | 3.4/4.9 | 46113 / 3495 |
Ryzen 9 5900X | 12/24 | 3.7/4.8 | 39400 / 3493 |
Ryzen 7 5800X | 8/16 | 3.8/4.7 | 28641 / 3505 |
Core i9-10900K | 10/20 | 3.7/5.3 | 24012 / 3168 |
Core i9-10900 | 10/20 | 2.8/5.2 | 21045 / 3077 |
Core i7-10700K | 8/16 | 3.8/5.1 | 19502 / 3086 |
Core i7-10700 | 8/16 | 2.9/4.8 | 17394 / 2939 |
Core i9-10980HK | 8/16 | 2.4/5.3 | 16593 / 2925 |
Core i9-10885H | 8/16 | 2.4/5.3 | 16049 / 2880 |
Core i7-10875H | 8/16 | 2.3/5.1 | 15966 / 2833 |
Core i5-10600K | 6/12 | 4.1/4.8 | 14593 / 2935 |
Core i5-10600 | 6/12 | 3.3/4.8 | 13905 / 2868 |
Core i7-10750H | 6/12 | 2.6/5.0 | 12590 / 2741 |
Core i7-10850H | 6/12 | 2.7/5.1 | 12542 / 2829 |
Core i5-10400H | 4/8 | 2.6/4.6 | 8932 / 2759 |
上記の表は、BTOゲーミングPCで良く採用されているCPUのベンチマークスコア(PassMark)をまとめたものです(2021/04/19のデータですので、最新のデータは前述のCPU比較&ランキングで確認して下さい)。総合はCPU全体の、シングルはシングルスレッド(1コア)の性能を数値化したものです。
濃い赤色はAMDのデスクトップ向けCPU、濃い青色はIntelのデスクトップ向けCPU、薄い青色はIntelのノート向けCPU、C/Tはコア数 / スレッド数、CLKはベースクロック / ブーストクロックを表しています。
また、第11世代Intel Coreプロセッサーが登場しましたが、現時点ではこの世代のノート向けハイスペックCPUは発売されていません。ゲーミングノートPCに採用されるのはハイスペックCPUが基本ですので、BTOにおいてはもうしばらく第10世代Intel Coreプロセッサーが中心となりそうです。
よって、上記の表には第10世代Coreのモデルを載せていますが、最新のデータは先程ご紹介したCPU比較&ランキングにありますので、気になる人はチェックしてみて下さい。
では、本題です。
現在のゲーミングノートPCで最も多く採用されているCPUはCore i7-10750Hですが、一部の上位モデルではCore i7-10875Hを見かけることもあります。また、Core i9-10980HKは純粋なノート向けCPUのハイエンドモデルです。
スコアをご覧の通り、やはりデスクトップ向けとノート向けでは、それなりに性能差がついてしまっています。現行のノート向け主流CPUであるCore i7-10750Hも、デスクトップ向けのCore i5以下の性能しかありません。
とはいえ、ゲーミング性能においてはCore i5はそれなりに優れたパワーを示していますので、ハイスペックGPUの相方としても露骨な性能不足を見せるようなことはまずないと思います。
また、ノート向けCore i5はあまり見ることがありませんが、コア数もパワーも明確に劣るもののミドルスペックでならば、能力不足に陥る心配はさほどないと思います。
ただ、CPUは特定のソフトだけでなく、PCというシステムそのものをも動かすパーツですから、常に余裕が欲しいのです。そして、ノートPCはCPUの換装が非常に難しいため、必然的に最初に選んだCPUを最後まで使うことになります。
よって、できればミドルクラスでもCore i7クラスの方が望ましいですから、ハイスペックGPUにCore i5というような組み合わせの場合は、それなりに不安があることを覚えて帰って下さい。
ストレージについては、以下のページも参考にして下さい。
ノートPCのストレージには、SSDが断然おすすめです。その理由は、読み書き速度の他に2点あります。
まず1つ目は、SSDが衝撃に強い点です。
ノートPCは持ち歩く機会が多いため、本体に衝撃が加わる機会もまた多いのですが、HDDは構造上、衝撃に非常に弱いのです。特に物理的な読み書きを行っている最中に衝撃が加わると故障しやすいので、細心の注意が必要です。
その点、SSDは物理的に稼働する部分が少ないため、衝撃耐性が非常に高いのです。
そして、もう1点は熱に強い点です。
何度もお話ししていますが、ノートPCの天敵は熱です。CPUやGPUなどのプロセッサは強烈な熱源ですが、筐体の小さなノートPCはこれを外部に排出する能力に劣るため、熱が内部にこもりやすいのです。
HDDは熱にあまり強くないため、PC内部の温度が高くなるのはまずいのですが、SSDは強く、また消費電力の少なさから自身が発する熱もほとんどないため、HDDよりもノートPC向きなのです。
ただし、近年一般化しつつある高速タイプのSSDは性能は素晴らしいですが、なかなかの発熱量となるため、注意が必要です。
とはいえ、最近のBTOノートPCではミドルクラスにも高速タイプがデフォルトで搭載されていたり、さらに通常タイプにカスタマイズすることができないモデルも増えてきていますので、もはやあまり気にしても仕方のない時代になりつつあるのかもしれません。
これら2点は、どちらも耐久性に関わることです。高価な買い物ですから、できる限り長く安全に使いたいと多くの人が思うことでしょう。であれば、読み書き速度という使用感も含めて、ノートPCこそSSDを採用すべきなのです。
ただ、小容量高価格だったSSDも現在は大容量化、低価格化が進んだため、OSを入れるメインストレージにHDDを採用するモデルを見かけることはほとんどなくなりました。また、サブストレージとしてHDDを備えるモデルも減ってきたように感じます。
よって、サブストレージにもSSDを採用したり、HDDは外付けタイプを使うなど、HDDレスな構成にするのも良いと思います。
ディスプレイについては、以下のページも参考にして下さい。
ノートPCにはディスプレイが付いていますが、CPU同様交換ができない、あるいは難しいパーツですから、最初にしっかりと考えておく必要があります。
画面が大きい方が迫力も増しますし、何より細かい部分が大きく見えますので、見やすくなる点は確実にメリットとなります。
しかし、ディスプレイの大きさは、イコール筐体の大きさでもありますので、大きいほど持ち運びが難しくなってしまいます。これはデメリットといえるでしょう。
小型ノートPCの場合は、持ち運ぶのには便利ですが、視認性と熱問題で悩まされるかもしれません。画面が小さいため見にくいのと、筐体が小さいため熱がこもりやすいからです。
画面のサイズの基本は、やはり15インチでしょう。そして、もう少し大きな画面が欲しい人は17インチになると思います。
画像のキメの細やかさは、解像度で決まります。
ノートPCの多くがHD(1366x768)ですが、ゲーミングPCではフルHD(1920x1080)のものを良く見かけると思います。多くのゲームでフルHDでのモードが用意されていますので、ゲーミングPCの画面の解像度もフルHDにしておきたいものです。
ただ、15インチにフルHDでは少し見づらさを感じる人もいるかもしれません。この辺りは個人差が激しいため、何ともいい難い部分があります。
解像度は設定で変更することも可能ですが、拡大縮小処理により画質が落ちることもありますので、設定を変えなくても綺麗に見えるバランスを知っておきましょう。
パネルの種類とは駆動方式の違いをいうのですが、TN方式、VA方式、IPS方式などがあります。
一般的にはTN方式は安いけれど視野角が狭い、VA/IPS方式は高いけれど視野角が広いという評価が良く知られているかもしれません。確かに普段使いも含めて、できれば後者の方がおすすめではあるのですが、ゲーミング用途の場合は少し異なる部分もあるのです。
それは応答速度です。応答速度とは、ドット(画面の最小単位となる点)がある色から別の色に変わるまでに掛かる時間をいいますが、応答速度が遅いものほど、ブレや残像が目立つようになるのです。これは、特に動きの激しい映像で顕著になります。
応答速度は、TN方式が最も高速です。そのため、わずかな反応の遅れも許されない本気のFPSゲーマーなどは、TN方式一択なのです。
また、コントラスト(白と黒の明るさの比率)はVA方式が最も得意としますが、ノートPCにVA方式が採用されることはあまりありませんので、実質TNかIPSのどちらかになるかと思います。
よって、IPSを基本として、動きの大きなゲームをプレイする場合にTNも考慮に入れる、という選び方がセオリーでしょう。
表面処理には、グレアとノングレアの2種類が存在します。
グレアはツルツルな表面で綺麗で鮮やかなのですが、光の反射が激しいため、映り込みも起こりやすく、それが故に目の疲労度も大きいといわれています。
ノングレアはザラザラな表面で発色は地味ですが、映り込みも少なく、目が疲れにくいので、特に長時間プレイする人やテキストを扱う作業を行う人などにはおすすめです。
結局は個人の好みの問題ではあるのですが、1日1,2時間、映画を観るようにゲームを楽しみたい人以外は、ノングレアを選んでおけば間違いはないでしょう。グレアで失敗したと思うことはあっても、ノングレアで失敗したと思うことは、まずないからです。
最初にお話しした通り、ディスプレイはノートPCと一体となっていますので、交換が非常に難しいハードウェアです。
にもかかわらず、使用感に直結する重要なハードでもありますので、しっかりと理解して選んで頂きたいと思います。
ただ、ほとんどのノートPCには外部出力がありますので、大きなディスプレイを用意して、そちらに表示させることも可能ですし、むしろマルチディスプレイは利便性も格段に向上しますので、おすすめしたいくらいです。
とはいえ、これでは携帯性が落ちますし、移動先ではシングルディスプレイになってしまいますから、ノートPC内のディスプレイにもこだわりたいところです。